自己責任の前に自己分析をする
投資は、だれでも参加できるが、だれでも利益を得られるわけではない。たいていの人が、投資で勝つことは簡単なことではないことはわかっているはずなのに、自分だけは儲けられるはずと根拠のない自信をもってしまうのはなぜだろうか。
FXを始める前に、ファンダメンタルズやテクニカルを勉強するため、セミナーに参加し、本を読み、デモ・トレードを行い、準備万端整えてスタート。仮にビギナーズラックに恵まれたとしても、その後は損失ばかり。この原因はなんだろう?
答えは自分の中にあるというか答えは自分自身である。あなた、自分のトレーディングルール守っていますか?
FXは高レバレッジおよび24時間トレード可能な取引だ。だからやろうと思えば、高レバレッジでのべつ幕なしトレーディングをすることができる。しかし、自分の資金力には限界があるので、損失を出さないようするための「ルールを決めること」そして「決められたルールの遂行」を厳守することが必要になってくる。
決められたルールを守るためには、自分の精神力(の強さ)が重要になる。FXで勝つために、私が最も重要と考える資金管理も行うのは自分自身。つまり、トレードは自分で行うわけだから、まずは己を知り自己をコントロールする必要が出てくる。
FXにおいて自分を知るということは、どういうトレードの仕方が自分に合っているのかということも含まれる。例えば、ファンダメンタルズかテクニカルか、短期か長期か。リスクはどれくらいとれるのか、使える資金はどれくらいかなど。よく言われる自己責任とかいう前に、まずは自己分析を行うことをぜひお勧めしたい。儲かりそうだから、適当にやろうなんて思っていたら良い結果は生まれない。
ルール決めて守って、損失とストレス回避
最初からルールを決めて、それを厳守できる人もいるかもしれないが、ほとんどの人がルールは決められても、決められたルールを守ることの意外な難しさを感じるはずだ。私が創った初期の頃のトレードルールをここに記してみる。かなりシンプルで拙いものだが、シンプルでないと守れない、守れないと意味がない、と思って決めている。
- ポジションは1万単位で取引する。(同時に2ポジションまで持ってもよいが、それ以上は×)
- 利食いは1円。損切りは3円。(損失は実金額で3万円までが許容範囲であるため)
- ナンピンはしない。
- 証拠金の上乗せはしない。
それまでは、取引単位は10万、利食いと損切りのレベルも決めてない。ナンピンもしたし、追証も2度入れた。なんとな~くという自分のフィーリングだけでトレードしていたから、ビギナーズラックが大きな評価損に変ったとしても、なんら不思議もないのだが、恐怖心はピークに達し、冷静な判断なんてできなくなった。いわゆるパニックというものだ。
こういった状況を打破するために、自分ルールは誕生している。しかし、守れそうなもので確立したはずのルールだったはずなのに、たびたびルール1.に関しては守ることができなかった。自分の場合、勝っているときは気が大きくなって、とにかくトレードがしたくてたまらなくなり、ついポジションを持ってしまう傾向が顕著だった。逆に、負けが込んでいると、一発逆転の発想よりも、気持ちは縮んで極端に取引を手控えてしまう。これもこれで困る。
失敗体験→成功への道
どうしたら、アヤフヤな自分を抑制できるのか、答えは前述の通り自分自身の中にあった。改めて、自分自身に問うてみたら、大切な自分のお金を減らしたくない=ルールは絶対守ること!!と結論が出た。そして、その結果として、自分のポジポジ病も完治した。考えて最終的に納得したのは、メンタルコントロールうんぬんとかよりも、「自分のお金を減らしたくないなら、ルールを守れ!」であったのである。
お金を減らしたくないなら、冷静に対処せずにはにはいられない。常にこのことが軸になって今でもトレードしている。
パニックになる場合というのは、たいてい大きく評価損が膨らんだときや大きく損切りをしたときになる。だったら、こういうことを2度と引き起こさないようにするだけ。何ども同じような局面で同じようにパニックしていては、トレードの進歩も向上もない。それにだいたい何度ども何度も同じようなストレスを抱えたくないではないか。
かのギリシャの哲学者アリストテレスは、「We are what we repeatedly do. Excellence, then, is not an act, but a habit.」(我々は、繰り返しの行動の総計である。それゆえに優秀さというのは、単発的な行動ではなくて、習慣によって形成される)と言っている。つまり、積み重ねが自分を創るということ。自分の将来のトレードも、自分の失敗体験から何かどう学び取るかによって違ってくることになる。
人間である以上、いつでも落ち着いた状態でトレードすることは難しい。仕事やプライベートで悩み事を抱えているときにFXで損をしてしまうと一層つらいことになる。相場の方向性がはっきりしないときと自分の気持ちが乗らないときは、トレードしない。私たちアマチュアはプロと違って、常にポジションを持たなくてもいいというメリットがあるのだから。
執筆者紹介 : 香澄ケイト氏
主な略歴 : 為替ジャーナリスト
米国カリフォルニア州の大学に留学後、バヌアツ、バーレーン、ロンドンでの仕事を経て、帰国。外資系証券会社で日本株 / アジア株の金融法人向け営業、英国系投資顧問会社でオルタナティブ投資の金融法人向けマーケティングに従事する。退職後、株の世界から一転してFXに関する活動を開始し、為替情報サイト、マネー雑誌などの執筆、ラジオ番組への出演およびセミナー等の講師を努める。著書に『あなたのお金を10倍にする外貨投資術』(フォレスト出版)、『今すぐ始めるFX5人の投資家が明かす勝利のルール』(すばる舎)がある。