目的次第で使い分ける

外貨投資に興味はあっても、FXはなんだか怖い感じがしてやれないという方もいらっしゃるかもしれない。別にいきなりFXに行かなくてもよいと思う。外貨預金や外貨MMFをしながら、為替の勉強をしてもよいのだ。そして機が熟したと思われたときに、FXを始めたらどうだろう。

FXと外貨預金や外貨MMFと大きく異なる点(FXの特長)は、FXはレバレッジを掛けられるということ、そして外貨を「売り」からも始められること。

私の場合、FXをしながら、長めの資金は外貨MMFで運用したりしている。相場をひんぱんに見ることができないとき、短期的なトレードが難しいとき、もしくは相場を気にしたくないとき、そんなとき、レバレッジ1倍の外貨預金や外貨MMFの利用価値はある。大きく円高が進んだときを捉えて外貨MMFを購入する、というのを私はやっている。これからその特長を記していくが、特に外貨MMFは意外(?)に使い勝手がよろしいである。

例えば、長期で、金利(利回り)重視で運用するのであれば、金利は、為替変動リスクでカンタンに吹っ飛んでしまうので、大きなレバレッジを掛けないで行うことが前提となる。

大事なのは、長期と言っても、ただなんとなく持ったままにしてしまっているではなくて、目標の為替レートを決めておき、そこに到達したら、ちゃんと売ること。

つまり、投資で最初に決めなくていけないことは、「目的をはっきりさせる」ということだ。つまり「どれくらいの期間」で、「どれくらい儲けたいか」を明確にする。例えば、長期で、金利狙いでやっているのに、余りにも日々の為替の動きを心配してしまうのでは、期間も目的はっきりしているとは言えない。

逆に短期トレードをしているはずなのにいつの間にやら(というか含み損が発生したら)スワップ派(もう死語かもしれないけれど)になってしまう寝返り派も、目的意識が明確ではない。

外貨商品は為替の動きがメイン

外貨MMFは、外貨建ての短期の高格付け国債などで運用される元本の安全性と金利の安定性が高い投資信託で、証券会社や一部の銀行で販売している。

外貨の種類としてはドル、ユーロ、英ポンド、豪ドル、NZドルなど主要通貨はほぼ取り扱われている他に、南アランドなどもある。金利はあらかじめ決っているのではなく、運用実績に応じて毎日分配が行われ、月末にその月の分配金をまとめて元本に再投資(複利運用)される。金利は、一般的に外貨預金よりも高めの水準を維持している。

気をつけておきたい点は、外貨MMFは、短期金利に連動するので、金利低下局面では利回りが低下する恐れがあるということ。為替変動リスク(どの外貨商品にもあるが)とこの金利の動向に関しては注意を払いたい。

外貨商品を選ぶときは、高金利や利回りに目を奪われがちだが、外貨商品の収益は為替レートの動きに大きく左右されてしまうので、外貨運用で一番大切なのは為替の動きになる。外貨MMFによっても為替差益を得るコツは、「円高のときに外貨を買い、円安のときに外貨を売って円に戻す」こと。

例えば、1ドル=100円のとき、100万円を期間1年、金利1%の米ドル定期預金で運用した場合、1年後に1万100ドルとなる。このとき、満期時の為替レートが同じ1ドル=100円だったら、円換算して101万円で、金利収入は1万円になる。

ところが、為替レートが99円になっていたら、円に戻したときの元本は99万9,900円で、円換算して100万円の元本割れをしてしまい、金利による収益は1円円高方向に為替が動いたら、ゼロになってしまう。外貨投資で、儲けるなら、何よりも為替レートが最も肝心なのである。

使い勝手の良い商品性

外貨MMFの主なメリットは以下の通り:

1.優良な社債や国債に投資される。 2.土・日および投資信託の休日以外は、いつでも購入、解約(売却)ができる。 3.預け入れの翌日に解約できる。(換金性が高い) 4.少額資金から投資を始められる。 5.為替手数料は外貨預金の半額以下。 6.複利運用効果が期待できる。 7.為替差益に対して非課税。

外貨MMFの投資方針は、投資元本を維持して利益分配を継続することを目的にしているので、安全性の高い社債、国債、CP(コマーシャルペーパー:企業が資金調達のために発行する短期の約束手形)などの短期金融商品に投資されるので、元本保証ではないものの、安全性が高いのが特長だ。

前述のように、外貨の時点では元本割れしていなくても、購入した時点よりも円高が進行すれば、円に戻したときに元本割れしてしまうケースもある。外貨MMFの場合、購入・解約が機動的に行えるので、予想に反して、為替レートが円高に動いているようなときも、損失を小さく抑えられることができる。また、取引に期限が設けられていないので、円安になるのを待つことも可能だ。

従って、外貨MMFによる外貨運用は、いくら自由に出し入れが可能とは言え、基本的に、すぐに解約しなくてはならなくなるような生活資金を投入するのではなく、余裕を持った長期投資として行うべきだろう。

執筆者紹介 : 香澄ケイト氏

主な略歴 : 為替ジャーナリスト
米国カリフォルニア州の大学に留学後、バヌアツ、バーレーン、ロンドンでの仕事を経て、帰国。外資系証券会社で日本株 / アジア株の金融法人向け営業、英国系投資顧問会社でオルタナティブ投資の金融法人向けマーケティングに従事する。退職後、株の世界から一転してFXに関する活動を開始し、為替情報サイト、マネー雑誌などの執筆、ラジオ番組への出演およびセミナー等の講師を努める。著書に『あなたのお金を10倍にする外貨投資術』(フォレスト出版)、『今すぐ始めるFX5人の投資家が明かす勝利のルール』(すばる舎)がある。