生き残らなければ意味がない
今年は円安という意見が多かった為替相場もそう簡単には円安方向には行ってくれない。とかく為替相場は不測の事態に影響されやすいマーケットである。為替の専門家でも、中長期的ならまだしも、短期的に上がるか下がるかを正確に答えられる人はほとんどいない。
FXは将来の為替の動きを予想する。もし1ドル=90円で1万ドル買った人がいたら、同じレートで1万ドル分の円を買った人がいることになる。その後、円高に進むか円安に進むかによって両者の勝ち負けが決る。一方が勝者となれば他方が敗者となる。常に勝者でいられることは有り得ないが、続けていられることが勝者に近いのではないかと思う。
自分の場合、FXを始めてちょうど7年が経過した。大儲けはしないながらここまで続けて来られた最大の理由は、自分のポジションサイズの取り方にあったと思う。ポジションサイズなんて難しそうなことを言うつもりは全くない、10万通貨単位でやっていて損失が重なったので、1万に変えてみただけ。自分にとって10万単位ではロスカット(損切り)ができなかったからである。
どういうことかというと、10万単位で取引して、1円円高もしくは円安に行ってしまうと、10万円の損失になる。自分は10万円という損失をおいそれと受け止めることができなかった。しかし、取引単位を1万にしたら、損切りがしやすくなった。1円円高もしくは円安に行っても損失は1万円。損失を実金額で考えるとピタッと来やすい。
一回分のディナー代くらいだな~だと思ったら、気が楽になったのだ。気が楽になって精神的なゆとりができたこともトレードにプラスに働いたのだと思っている。要するに自分の許容できるリスクの範囲内でトレードを行っていくことがサバイブ力につながるのではないか。
自分なりのポジションサイズが最も大事
以前も書いたが、自分サイズの取引金額(もしくは取引単位)を導き出す方法は、レバレッジをかけられた取引金額(円換算して100万円なのか、1,000万円なのか、1億円なのかなど)をあえて、実際の金額として違和感なく使えるかどうかを目安にしてみる。100万円だったら自然体で使えるぞ、でも1,000万円はハラハラドキドキするな、と思ったら、あなたにとって適切なポジションサイズは100万円や1万通貨単位になる。
FXにとって大事なロスカットは、自分にとって適切なポジションサイズを把握すれば、やりやすくなる。
幸い、最近では1,000通貨、100通貨で取引できるFX会社が出て来ているので、こういった小さな単位でのトレードを活用してもよいだろう。ロスカットしてもそれほど大きな損失にならないように、取引単位を再考してみる。
100通貨から始めても、スキルの上達につれて、次第に1,000通貨、1万通貨と単位を大きくしていくことだって可能だ。私は、デモトレードよりも自己資金を入れて取引した方が、実践的なトレード技術(ストップロスも含め)が見につきやすいと考えている。少ない金額で、実際のFXについて色々と学ぶことができるのだ。最初から大きな金額のトレードをして、あえて大きな損失の可能性に近づける必要などまったくない。
1,000通貨なら1円でロスカットされても1,000円の損失ですむ。これだったら一回分のランチ代が消えてしまったから、明日はお弁当もっていこうなんていう日常的なレベルに落とし込める。
FXにおいて大きな金額をトレードしていると非現実的(バーチャル)な感覚に陥りやすいが、実際の損失はリアルに自分の口座残高に反映するのである。また、100単位や1,000単位だと打診買いや売りができることもメリットだ。
ツラくなっては本末転倒
負けてばかりで、勝てないなと思ったとき、そして精神的にツライなと思ったとき、FXとどのように向き合っていけばいいのかをもう一度考え直したい。自分のことを見つめ、自分に合った投資(前述のポジションサイズの再考など)をすることを考える。
7年間にいく度となくこんなことを繰り返して、たどりついたのはせっかくFXをするのだからツライなあ苦しいなあと思わないようにすること。そのためにはいったんポジションをもったら、もうどうのこうの悩んだりしないことだ。イザとなればストップロスが自分(の資金)を守ってくれるのだと腹を括る。
相場は自分の予想とは裏腹になっても、ストップロスだけは唯一自分の意志で入れられて、いったん設定した以上、忠実にそれを実行してくれるのである。
私は、OCO(利食いと損切りを同時に出す注文方法)を活用していて、常にパソコンに張り付いてのトレードはしていない。いったんOCOで発注したら、後は相場の方向は天に任せ、FX会社から約定メールが入ったらアッできちゃったというような感じである。7年間の月日が、私に教えてくれた、無理ないトレードの仕方である。
多少の相場の上げ下げに一喜一憂せず、ゆとりをもって相場の変動を見守るような心の余裕がなければ、判断力も鈍ってしまい、絶好のチャンスを見逃してしまうことだってあるだろう。自分自身への自戒も込めて、相場が難しくなればなるほど、ゆったりとトレードするように心がけたいものである。
執筆者紹介 : 香澄ケイト氏
主な略歴 : 為替ジャーナリスト
米国カリフォルニア州の大学に留学後、バヌアツ、バーレーン、ロンドンでの仕事を経て、帰国。外資系証券会社で日本株 / アジア株の金融法人向け営業、英国系投資顧問会社でオルタナティブ投資の金融法人向けマーケティングに従事する。退職後、株の世界から一転してFXに関する活動を開始し、為替情報サイト、マネー雑誌などの執筆、ラジオ番組への出演およびセミナー等の講師を努める。著書に『あなたのお金を10倍にする外貨投資術』(フォレスト出版)、『今すぐ始めるFX5人の投資家が明かす勝利のルール』(すばる舎)がある。