中国ホットマネー、香港に溢れる

香港の中国依存度は年を追うごとに増してきている。今、香港に大挙して押し寄せているのは、中国からの人間とお金だ。香港不動産は2008年の11月頃が底値で、その頃に較べたら2~3割は上昇している。高級新築マンションも、すぐに売り切れてしまう状況だ。中国人の不動産購入目的は投資が多いようだが、中国本土の人も、不動産を取得すると投資ビザで香港IDが発行されるそうで、そういった目的の買い手も増えている。

香港によく遊びに行くからとか買い物に行くからとかいった理由で不動産を買うお金持ちマダムもいるそうだ。本当に住居にしたい香港人はこの不動産の急騰ぶりに困惑気味だ。不動産市場ほどのフィーバーぶりではないが、株式市場も中国マネーの恩恵を受けて活況を呈している。

深セン羅湖駅から深セン地下鉄に乗り深センを代表する繁華街、東門(老街駅)に行ってみることにしよう。深セン地下鉄は2004年12月末に開通したもの。プラスチック製のコインのような形の切符「単程票」を自動販売機で2元(1元=約13.5円)で購入する。

地下鉄では我先に乗り込もうとする人と降りようとする人とぶつかり合う、13億人の競争社会を目の当たりにしながら、5分程度で老街に到着する。駅名は老街であっても、若い人がたいへん多いのが目に付く。出稼ぎで来ている人が多いため、深センの平均年齢は30歳くらいだという。だから街全体が活気に溢れている。60年前の建国当時、中国の都市の平均寿命が40歳台だったが、今では購買意欲が最も高いのが、18-34歳の若年層だ。

かき氷を食べる可愛い二人の女の子は、まるで原宿でよく見かけるようなタイプの今風な若い子である。「写真を撮っていい?」と中国語で話しかけると「可以(いいわよ)」と訛りのない中国語で返事してきた。彼女たちは工場で働いているという。深センでも広東語だけでなく、近年では普通話(中国の標準語)が一般的になってきている。現在中国は普通話を普及させようと躍起らしいのだが、13億人の内まだ半数程度しか普及しておらずその半数は年齢的に若い世代である。

日本と変らない女の子

富める者と貧する者 - 格差

山盛りの10元スニーカー

工場などでの働き具合は、女性は真面目だが、男性はそうでないらしい。少し前までは、がむしゃらに働いて故郷に送金するという人たちが大半だったようだが、今はTVなどの影響もあり、若い盛りでは、遊ぶことやオシャレをすることにもお金を使うようになって来た。つまり全体的に余裕ができてきたということだ。そういう若者向けに、東門ショッピングエリアでは店が立ち並び、路上では5元なんていう値段の洋服や山盛りになった10元のスニーカーなども売られている。

今までの中国の高度成長は輸出に依存していたが、13億人が一層消費に目覚めれば、内需拡大が経済成長を促進してくれるのではないかと思わせてくれる。そうなれば中国の経済成長を持続性のあるものになる可能性がある。

一方で、疲れ切った黒い顔をして路上に座るまだ10代と見られる若者も多く見られた。彼らは農村部から仕事を求めて出てきた若者らしい。単に出てくるだけでは到底良い仕事など見つからずに、また農村に戻るのが大半のようだ。トウ小平は「改革・開放路線」で先に豊かになれる人からなろう、そこに格差があっても仕方がない、と経済発展を押し進めた。

その結果、富裕層や中間層と農民や労働者との格差は大きくなり、日本の格差社会どころではない。高い経済成長を誇りながらも、失業者が多いこのアンバランスさは中国経済にひとつの影を落とす。米国や日本との差が目ざましく縮小する一方で、国内の格差は拡大する、なんと皮肉な現象だろう。

もっと良い生活をしたい!が原動力

ランチに入った5つ星ホテルのブッフェは日本円にして約3,000円。お客のほとんどは中国人で大変賑わっていた。これだけのお金を払える人はお金持ちだ。中国の富裕層は都市部に集中していて、その数は約6,000万人とも言われているが、ほとんどの人たちは街角の炎の料理人が作る食事を摂ったりしている。ブッフェの種類は中華、洋食、日本食のお刺身やお鮨、果てはおそばやおソーメン、ついでに大きな鉢いっぱいのワサビがドカンとおいてあるバラエティーさだ。

味もなかなかのせいか、皆お皿をてんこ盛りにし、何度もお代わりしに行く人ばかりで、最上階からの眺めを楽しむような人は余りいない。実際この回転レストランの窓側に座っているのは私たちだけで、ビュッフェに近い席に陣取っている人の方が多かった。若いキレイな女性でも、嬉々としてお代わりしている。何度もお代わりに行くのは恥ずかしいと自意識過剰になるのは日本人の自分だけのようだ。

近くのヤングカップルはデザートにバナナを何本も食べていた。日本のブッフェでこのような人たちを見ることはまず稀だと思うが、ここではお皿にバナナやリンゴを載せている人がフツウということが判明する。

お腹いっぱいお代わりして、最後にこういったお腹に溜まりそうな果物を食べることのできる中国人の胃袋に敬意を払いたい。中国4,000年の歴史そして経済発展は「(もっと美味しい物をたくさん)食べること」がベースになっているに違いない。食べることは人間の根本的なエネルギーなのだから、そのエネルギーが強靭な人々を擁する国はまだ力強い伸展が見込めそうだと思ってしまうのである。

執筆者紹介 : 香澄ケイト氏

主な略歴 : 為替ジャーナリスト
米国カリフォルニア州の大学に留学後、バヌアツ、バーレーン、ロンドンでの仕事を経て、帰国。外資系証券会社で日本株 / アジア株の金融法人向け営業、英国系投資顧問会社でオルタナティブ投資の金融法人向けマーケティングに従事する。退職後、株の世界から一転してFXに関する活動を開始し、為替情報サイト、マネー雑誌などの執筆、ラジオ番組への出演およびセミナー等の講師を努める。著書に『あなたのお金を10倍にする外貨投資術』(フォレスト出版)、『今すぐ始めるFX5人の投資家が明かす勝利のルール』(すばる舎)がある。