円安基調鮮明か

為替相場は円安方向に動いている。4月2日に発表された米3月の雇用統計の好結果がそれに拍車を注いだ形で、ドル高(になると必ず円安)が大きく進んだ。ほぼすべての通貨が、昨年1月20日~2月初頭あたりから上昇トレンド、つまり円安方向を描いていることがチャートを眺めれば判明する。

米ドルは出遅れ(?)ていたが、オバマ大統領の大型景気対策が功を奏してきたことが、直近の雇用統計に表れているのだと思う。ゆえに、ここに来て、米ドルの躍進ぶりが目立つ。個人的に、対円においても素直にドル買いが進み、結果的にはドル円も昨年クロス円が上伸したように、今年はキャッチアップしてくるのではないだろうか。

景況感を表す経済指標の中でも米雇用統計は現在最も注目されるもの。予想以上の好数値が発表されれば米国を中心とする世界経済は安定的な回復に向かっているとマーケットは判断するだろう。

利上げに注目する(低金利政策からの転換)

2008年秋の金融危機勃発を機に、それまで金利差を狙った取引(キャリートレード)で高金利通貨などに投資されていた資金の巻き戻し(円の買い戻し)が起こり、豪ドル円は107円台→55円台まで暴落した。下落幅は実に約52円。しかし、いち早く利上げを開始したほどの、実体経済の好調さから豪ドル円は、2009年2月を底に堅調に円安方向に動き、現在、86円台まで戻している。

2009年半ばごろから、主要先進国の大規模な景気対策効果や中国およびインドなどの新興国の経済成長に支えられて、世界経済の底入れ機運と共に金融引き締め(利上げ)ムードが漂いはじめてきた。

中でも、どこよりも先陣を切って利上げを開始し、すでに4回もの利上げを行っている豪ドルの上伸ぶりは突出している。豪ドルは金利が上がれば買われるし、失業率が下がっても買われる。この2点だけ注目していても、ある程度豪ドルの動きがつかみやすく、わかりやすい。

たとえ、4月6日の金融政策決定会合で利上げが小休止されても、他の先進国に比べてダントツ高金利(3月現在で4%)であることに違いはなく、しかも今後の利上げ期待を常に内包すると思われるため、大きく下落したところでは金利差を狙った押し目の買いが入りやすいだろう。

豪ドルが世界経済のバロメーター?

昨年6月17日付けの当コラムで「通貨も好きになれば上手く行く - 高金利+α、豪ドルにフォーカス!」で豪ドル円を推奨していたが、ここで改めて豪ドル円のトレードをお勧めする理由を記したい:

1.高金利

金融危機以降、オーストラリアの金利も随分下がった(7.25%→3%、現在は4%)が、現在も日本やアメリカがゼロ金利を継続していることと比べれば金利面においても非常に魅力的。利上げ前の3%という政策金利は、豪州にとっては歴史的な低金利であって、景気回復傾向が強まるなかで、インフレ警戒感が強まっているため、今後また金利上昇が予想される。また、市場のリスク先行の動きが強まると、金利差を狙ったキャリートレードがまたぞろ活発になる可能性が高い。そうなると、豪ドル円はもう一段の上昇が期待される。

2.資源国通貨

資源国通貨の代表通貨として有名であり、世界的に景気回復が進めば、それに比例して堅調に推移する傾向がある。また、中国経済が堅調に成長すれば、資源を輸出するオーストラリア経済は恩恵を受ける。

3.時差

オーストラリアの政策金利の発表は 東京時間の午後1時半(冬時間)。米ドルや欧州通貨と比較すると、同じ時間を共有している感覚があり、トレードのタイムラグを感じさせない。

4.世界経済のバロメーター

世界的に景気が悪化し、株価が下落すると豪ドルも急落する。豪ドル円は、金融危機のような大きなショック(ストレス)がマーケットにかかると急落する性質があることを必ず念頭においてトレードすること。豪ドルは世界経済およびマーケットのバロメーターだと考えておくとよいかもしれない。

加えて2つの注意点を挙げたい:

  1. もし世界的に利上げ方向に転換すれば、スワップ狙いでトレードをする方もいるかもしれないが、FXはあくまでも為替変動によるキャピタルゲイン(為替益)を狙うということが重要。スワップポイントはあくまでもおまけと考える。スワップポイント欲しさにレバレッジを高く掛けて高金利通貨を長期で持ち続けるのは、リスクが高い部分があることを2008年のような金融危機が物語ってくれている。
  2. 今後、世界的な景気回復が本格化し、リスクに対する警戒感がより後退してくると、年初来高値を更新する動きも強まってくる可能性があるが、一方で景気回復期待が予想以上に遅れた場合はリスク懸念の再燃につながってくる。

マーケットでは想定外のことが起こりやすい。ゆえに、FXは資金的にもメンタル的にも、自分の許容量を超えるリスクは極力控えるようにし、長期のスタンスであっても、ストップロスは入れておくなど、資金管理をしっかりと行うことが基本となる。『100年に一度の危機』とあれほど世界が揺れたことを忘れることなく、そのときの教訓はトレードでしっかりと活かしたい。

執筆者紹介 : 香澄ケイト氏

主な略歴 : 為替ジャーナリスト
米国カリフォルニア州の大学に留学後、バヌアツ、バーレーン、ロンドンでの仕事を経て、帰国。外資系証券会社で日本株 / アジア株の金融法人向け営業、英国系投資顧問会社でオルタナティブ投資の金融法人向けマーケティングに従事する。退職後、株の世界から一転してFXに関する活動を開始し、為替情報サイト、マネー雑誌などの執筆、ラジオ番組への出演およびセミナー等の講師を努める。著書に『あなたのお金を10倍にする外貨投資術』(フォレスト出版)、『今すぐ始めるFX5人の投資家が明かす勝利のルール』(すばる舎)がある。