FXで他の金融市場にも詳しくなれる
為替相場は、そのもの自体だけでなく、株式、債券、コモディティといった主要金融市場と互いに関係しあっていて動く。従って、為替をトレードする人は為替市場だけウォッチしているわけにはいかない。おかげで世界の金融市場にも詳しくなれるのが、FXをしているメリットのひとつであろう。今、私はこのことを金投資で実感している。
自分が多種多様な金融商品にチャレンジする中で、今まで直接投資したことがなかったのがコモディティ(いわゆる実物資産)だった。一部ファンドを通じてコモディティに投資しているとはいえ、金融資産に比べて実物資産の割合は極端に少ない。
株や金利商品は先行き不透明だし、今まで投資したことがないもの(すなわち金)にちょっと資金を振り向けてみるかと考えたとき、FXを始めたときの気持ちに何か似ているなあと感じた。
そして、昨年10月以降、サブプライムショックで金価格が大きく下落したところで少しだけ買ってみた。ファンド等の換金売りで金が売られているのは一時的で、また資金は金に向かうのではないか予想したのが理由である。
不安な時代が金を動かす
改めて考えてみれば、実物資産の代表「金」は人類にとって最初の正式な通貨であり、金と通貨は本質的な部分で同一だったのである。しかし、FXと比較して、私と金との距離を縮めるには少々時間を要した。
同じ投資商品と考えればよいはずなのに、金への心理的障壁がそこそこ大きかったのは、世界に「有事」や「経済的不安」が発生したときにだけ「ほら、やっぱり実物資産でしょ」とクローズアップされる印象や特別な人(お金持ちや金信望者のような)だけが金に投資しているイメージが強過ぎたからだろう。
株や金利商品のような投資手段が上昇トレンドを描いているときは、それほどリターン(利子や配当など)のない金投資は魅力的ではない。しかし、現在は、金価格が上昇しているので、かつて株や金利商品に投資した人々が得たような好収益を、同じように享受できている。金もまた同様に"相場"なのである。
基本的に金価格はドルベース表示なので、金価格が一定であれば、ドルが下落すれば金価格は上昇するということはあるが、私のように、どの金融商品も駄目だから、金やってみるか!という新たな投資層が増えていることが、最近の金価格上昇の最大の理由ではないかと思う。
米国でも、金価格上昇を受け、これまで金など見向きもしなかった一般投資家も手軽に購入できる金貨などを買っているようだし、金ETFへの投資も増加している。
不透明で不安な時代にはいつでも投資家は感情的に反応してしまい、自分が安全確実と思う領域に自分の資金を移動させる「Flight to Quality(質への回避)」が起こる。金や米ドルなどさまざまな投資手段が状況に応じてその避難先の役割を果たしてきたが、ドルが弱いとなれば、一段と資金の避難先は金となっていく可能性は高い。また、株価の下落や停滞が長期にわたって続いた場合、金はさらに魅力を増していくかもしれない。
ドルとの相関性に注意する
金相場とドル相場は、金価格とドルインデックスの比較で、逆相関性がよく取りざたにされる。非実物資産の代表のようなドルが弱さを増せば、さらに実物資産の代表格の金の強気が広がるのが現在の状況だ。一卵性双生児のようなものだった金とドルは、米国が金とドル交換停止を行った1971年の「ニクソン・ショック」を境にして、時に大きく相反する動きをする関係になってしまったのである。
ただ、気をつけなくていけないのは、人間世界と同様に、金融マーケットにも未来永劫の法則が存在するわけではないということだ。相関性には、そのときどきの傾向はあっても一貫性は保証されていない。今は逆相関であっても、将来的には正相関になる可能性もあることは念頭においておくべきだ。
有利な運用対象を求めて
世界の主要金市場の金取引はドル建てになっているが、日本市場では円建て取引となっているため、ドル円の動きに左右されることになる。ここでも為替と金は切っても切れない関係にある。ドル円相場は国内金相場の大きな変動要因となり、一般的に、円高になると円建て金相場は安くなり、円建て金相場は高くなる。
金の主な投資方法は以下の通り:
金地金・ 金貨・宝飾品などの現物取引、純金積立、先物取引、CFD取引、投資信託、ETF、金鉱山株
金地金を購入する人は昨年以降急速に増加しており、昨年10月に開催された、ある大手貴金属商の「世界のゴールド・バー展」には大勢の入場者が押し寄せていた。
金価格の上昇は金市場だけの問題ではない、と考えれば、もっと世界経済や相場を広く深く見る目が養われることになるだろう。そして、自分にとって有利に運用できる対象をキャッチする機会が、もっと膨らむことになるのではないだろうか。
私の友人は20年間毎月1万円ずつ純金積立をやってきたという。昨今の金価格上昇でかなりの利益になったのだろうと、うらやましい。だからと言うわけではないが、FXとは別に金をもっとリサーチして、記事にしてみようと思っている。ぜひご期待を!
執筆者紹介 : 香澄ケイト氏
主な略歴 : 為替ジャーナリスト
米国カリフォルニア州の大学に留学後、バヌアツ、バーレーン、ロンドンでの仕事を経て、帰国。外資系証券会社で日本株 / アジア株の金融法人向け営業、英国系投資顧問会社でオルタナティブ投資の金融法人向けマーケティングに従事する。退職後、株の世界から一転してFXに関する活動を開始し、為替情報サイト、マネー雑誌などの執筆、ラジオ番組への出演およびセミナー等の講師を努める。著書に『あなたのお金を10倍にする外貨投資術』(フォレスト出版)、『今すぐ始めるFX5人の投資家が明かす勝利のルール』(すばる舎)がある。