賢いナンピンって?
相場で負けるパターン、というよりは泥沼化してしまうパターンには負け始めるとすぐにナンピンを始めてしまう、ということが上げられるのではないだろうか。自分でこう書いていて我が耳が痛いくらい、私だって以前はやっていた、イージーなナンピンを。ナンピン - 漢字では難平と書く。難を平均化してくれるとも平たくするのは難しいとも解釈でき、実際にナンピンをしてみると両方の意味を内包していることが分かる。
自分の場合も一般的なナンピンの方法は、一旦保有したポジションのコストを改善するためにさらに良い値段で、同方向のポジションを取り、保有コストを下げようとするもので、例えば、1ドル=100円で1万ドル買って、しばらくしたら1ドル=90円になったので再度1万ドル買うと、1ドル=95円で2万ドル持っていることになり、最初の1ドル=100円よりも1度ドルあたりの平均保有コストは5円安くなる。
こうすることによって平均取得単価は下がるが、何倍もの資金が必要になるし、さらにはナンピンしたコストよりも一段と相場が下落したり上昇したりすると、リスクも相応に膨らんでより資金を圧迫することになるし、精神的負担も非常に大きくなる。「下手なナンピンスカンピン」- 上手く韻を踏んだ相場の名言だが、まさにこういった状態になることを示している。
ナンピンをただ単にコストの悪いポジションのコスト改善を狙って行う行為だと定義すれば教科書的にはNGだが、実際の相場は教科書的な考えばかりでは乗り切っていけない。渋々ナンピンすることと当初からの計画通りやることとでは、かなり違ってくる。
渋々ナンピンは「後からナンピン」(後ろ向きナンピン)。計画通りは、「最初からナンピン」(前向きナンピン)と呼んだらよいだろうか。それで、やるなら前向きナンピンだ。つまり初めから計画を立てて、買い上がったり、売り下がったりすることをやる。
点でなく線で行う「ゾーンナンピン」
私は、以前、10万通貨を上限にしてトレードしていた時に、ゾーンでナンピン(買い下がり、売り上がり)する方法を取っていた。この頃は円安&スワップ相場で短期トレードをしていなかったせいもあるが、一点で大きく買ったり、売ったりするのではなく、買い場や売り場を線でとらえ、自分が最初に想定していたゾーン(価格帯)でナンピンする方法だ。
買いゾーンを100~90円に想定していたとして、100円で1万ドル、97円で2万ドル、94円で3万ドル、90円で4万ドルというようにポジションを少しずつ増やしていくことで、より良いコストで買うことができる。仮に最初の1万ドルのポジション後に相場が上昇していったら、当初の計画どおり全額ロングには出来なくて、ポジションは1万ドルだけであっても利益にはなる。逆に売りの場合は、通貨単位を減らしていくことになる。また、手仕舞うときにも同様にゾーンでやってみるのも方法だ。
私は、現在トータルのポートフォリオのバランスの点から、FXは想定元本であっても、1ポジション100万円前後が投資金額となり、株の1銘柄あたりの投資金額もほぼ同等に留めている。そのため、FXは1万ドルのポジションしかとらないので、この方法は中止しているが、FXよりも長めの投資をしている株ではこの方法を適用している。打診買いでまず最低単元数買い、その後2回に分けて買うようにしている。
株のナンピンの場合は、値段的にただ下がったら買うのではなく、予想PERやPBRなどのファンダメンタルズ的物差しで割安かどうかもチェックし、割安になったらから買うという考え方も付け加えた方がより自分を納得させることができる。株は上場銘柄が4,000近くもあるから、もっと上昇が期待できそうな銘柄があれば、余り固執せずに、一旦損切りして他の銘柄に乗り換えた方が効率的ということもあるかもしれない。
損切りできないならナンピンしない
また、しこったロングは長期投資、今買うロングは短期のアヤ取りであると、目的が分かれていればどうだろうか。当然このケースではコストを平均化することに意味もなく、つまりはナンピンであるとはいえない。長期投資VS短期バイト的な感覚であれば、むしろ相場の流れを把握する上でも好ましいことで、少なくともシコリ玉を抱えてだるま状態になっている人よりは良いともいえる。流れがつかめれば、場合によっては長期投資ポジションの違和感を覚えるかも知れないし、結果的には傷を食い止めることが出来るかもしれない。
ナンピンをしたからといって、損切りをおろそかにしていけないというわけではない。為替市場は常に自分の予想や見込みどおりに動くわけではない。それが反対方向に進んだ程度でなく、相場の流れが全く変わってしまうことだってある。常に最悪のシナリオを考えて損切りのポイントは考えておくこと。やはり、最後のお助けツール(損をそれ以上拡大させないために)は損切りになると思う。最終的に損切りができそうもないのであれば、ナンピンによってさらなるリスクを拡大することだけは避けた方がよい。
最後に本当のスカンピンにならないコツは、生活に支障のない金額で投資することだと言っておきます。
執筆者紹介 : 香澄ケイト氏
主な略歴 : 為替ジャーナリスト
米国カリフォルニア州の大学に留学後、バヌアツ、バーレーン、ロンドンでの仕事を経て、帰国。外資系証券会社で日本株 / アジア株の金融法人向け営業、英国系投資顧問会社でオルタナティブ投資の金融法人向けマーケティングに従事する。退職後、株の世界から一転してFXに関する活動を開始し、為替情報サイト、マネー雑誌などの執筆、ラジオ番組への出演およびセミナー等の講師を努める。著書に『あなたのお金を10倍にする外貨投資術』(フォレスト出版)、『今すぐ始めるFX5人の投資家が明かす勝利のルール』(すばる舎)がある。