「大きなつづらと小さなつづら」
「大きなつづらと小さなつづら」どちらが欲しいですか?
おとぎ話の『舌切り雀』では、小さなつづらの中には小判がびっしり詰まっているが、大きい方にはお化けや虫が入っていて欲深なお婆さんは腰を抜かし気絶してしまう。
FXに当てはめてみると、答えは人それぞれだが、個人的にレバレッジは「儲け」前提でなく自分の「損失の許容範囲内」で決めるべきと考えている。だから私は、5倍程度のレバレッジだし、取引単位も1万通貨である。つまり私の場合は「小さなつづら」で満足している。その中には数枚の小判しか入っていなくても、お化けに出てこられるよりはまだマシだと思っているからである。
自分は「小さなつづら」だったからこそ、なんとか6年間続けて来ることができたと思っている。その理由は、最近よく聞くことが多い、経済や社会など人間活動全般に用いられる言葉で文明の利器を用いた人間活動が将来に渡って持続できるかどうかを表す概念である「sustainability(サステナビリティ=継続可能性)」がFXでもキーワードではないかと思っている。つまり「継続は力なり」。「sustainable」であるためには、利益の最大化を図るよりも損失を最小化するようにすることが大事だ。
今の相場は「ランチ代」だって十分
最初はほとんどの方がデモトレードを試されると思うが、どうせデモだからと、いい加減な取引をしたら全く意味がない。そんなことをしたら本番でもそのクセが出てしまう可能性が高い。デモではシステムの使い方や注文方法をといった習得することをメインにすればよいと思う。そして小さい単位からリアルトレードをスタートし、損失を最小化するコツ(基本はストップロス)を身につける。
デモで儲けたからといって本番で儲けられるかどうか分からないが、逆にデモで大きく損を出したら、自分はFXをするべきかどうかよく考えて見た方がよい。デモはそういう意味でも役に立つ。世の中にはFXが向かない人だって存在する。
リアルトレードを行う場合、少なくとも最初は小さな金額からスタートすることをぜひぜひお勧めしたい。ぼちぼち感覚で数千円程度の利益をこまめに着実にとっていくのがよいと思う。取引単位は1万単位と言わず千単位でもよい。例えば、ドル円を90円で1,000ドル買って、仮に89円になったとしても1,000円の損失で済む。もちろん90円が91円になっても、1,000円の儲けでランチ分くらいにしかならないが、今のマーケットにおいては、何千万とか何億円とかの利益よりも断然リアルな数字に思える。上手くいけば同僚や友達にもランチをご馳走できるかも。
最初は慎重にやり、自信がついたら資金を追加して、ポジションを大きくしレバレッジを高くする。いきなり一戸建てに住んだら家賃が払えなくなるかもしれないから、最初はワンルームで暮らそう的な考え方。小さなワンルームに住んでいる間に自分なりのトレードスタイルや売買ルールを習得すればよいのである。
レバレッジやポジションを小さくすることのメリットは、トレードが逆方向に行った時の精神的な負担が軽くなり気持ちに余裕を持つことができるし、冷静な判断力を維持することができる。小さな取引金額で小さな利益であっても、気がついたらいつの間にか小さな山になっていたらいいな、くらいの気持ちのゆとりが理想的だと思っている。
必然の失敗を必然の成功に導く
相場でもよく"ツキ"という言葉が使われる。しかし、ツキとか運とかで偶然成功することはあっても偶然失敗することは余りないような気がする。失敗のトレードにはなぜそうなってしまったのかという原因が必ず存在するはずだ。だから敗因を分析すれば次のトレードを成功させるためのステップストーンになるだろう。同時に成功パターンも分析すること、こうやったら上手く行ったという勝ちパターンはそのまま踏襲すればよい。
場当たり的で計画性がないと何事においても失敗する確率が高いことは世の習いで、トレードにおいても該当する。従って、最初に「トレードプラン」を作成して臨戦態勢を整えたい。トレードプランは少なくとも以下の項目を明確にする必要がある:
- 通貨ペアを決定
- ファンダメンタルズの確認(経済指標も)
- チャートでトレンドを確認
- 取引金額の決定
- 買いか売りか様子見か決定
- エントリー、ストップロス、利食いを設定
- トレード終了と結果/分析
トレードプランに置いて最も重要なのは、プラン(シナリオ)通りに実行できたかどうかだ。できなかったらプランの意味はないし、うまく行ったとしても偶然の産物かもしれない。必然の成功はトレードプランを立てその通りに実行すること(失敗のトレードも含め)の上に成り立っている。
負けパターンや勝ちパターンを確認するためにトレードの記録をトレードノートにつけておくこともお勧めしたい。ただし、余り構えて書こうとせず、また、自分なりの書き方をすればよくて誰かを真似して書く必要はない。しかし、なんで買おうとしたのかまたは売ろうとしたのか、判断の根拠を明確に示すことだけは忘れてならない。トレードノートもまた「sustainable」(継続)でなくては、意味がなくなってしまうのである。
執筆者紹介 : 香澄ケイト氏
主な略歴 : 為替ジャーナリスト
米国カリフォルニア州の大学に留学後、バヌアツ、バーレーン、ロンドンでの仕事を経て、帰国。外資系証券会社で日本株 / アジア株の金融法人向け営業、英国系投資顧問会社でオルタナティブ投資の金融法人向けマーケティングに従事する。退職後、株の世界から一転してFXに関する活動を開始し、為替情報サイト、マネー雑誌などの執筆、ラジオ番組への出演およびセミナー等の講師を努める。著書に『あなたのお金を10倍にする外貨投資術』(フォレスト出版)、『今すぐ始めるFX5人の投資家が明かす勝利のルール』(すばる舎)がある。