夏休み中は無理しない

夏休みのご予定はいかがですか? お盆中に行くところもないので、FXやっていたという話をときどき聞いたりするが、休む時はしっかりと休むことも必要。無理して相場を張る"ポジション病"は時には良い結果をもたらしてくれないのでご注意を。

為替は、8月は円高に振れやすいというイメージがある。特に皆が休みを取っているお盆中。昨年はそれほどでもなかったが、2007年の夏に起こった第一次サブプライムショックで、ドル円は約11円、高金利通貨のキウイ円にいたっては約20円程度急激な円高が進んだ。この出来事が今でも強烈に頭に残っていれば、円高に進みやすいということも考えられる。

しかし、過去とのアナロジー(類似性)が通用しない場合だってあるのが為替相場。過去はこうだったな、と参考にするのはよいが、決め付けて相場を張ることは勧められない。もし旅行等で家を離れるのであれば、ポジションは決済しておくのが鉄則。でないと、楽しい旅行も、相場が気になって真底楽しめないことになるかも。リフレッシュして、リセットして相場に向かうのが一番だ。

トラブルは減ったはずだったのに。。。

FXは1998年4月の「改正外為法」の施行と共に誕生した。個人の為替取引(FX)が出来るようになったエポックメイキングな時代が始まったのだ。以降FXを取り扱う会社は徐々に増え、空前の円安ブームのせいもあり個人投資家数も増加していったが、FX取引を装った詐欺事件や利用者とFX業者のトラブルが増加していた。こうした事態を重く受けて、2005年7月に「改正金融先物取引法」が施行され、FX会社は金融庁への登録が義務付けられたため、近年はそういったトラブルを聞くことはほとんどなくなっていた。

円安相場が終了しても、買いだけなく売りもできるFXは昨年のサブプライムショック以降の円高でまさにこの金融商品の真骨頂を発揮し、この経済不況の最中でも順調に個人投資家数を伸ばしてきていた。しかし、お金という人間の欲望に根差した社会的な事件は絶えることはないのだろう。最近の札幌の「オール・イン」や大阪の「アライド」のニュースには驚きを隠さずにはいられない。

登録業者でなくてはFXはできない

両社ともFX運用による高配当をうたって無登録で個人の方から多額の出資金を集めていたという。詳細は未だ判明していないにしても、聞いた限りでは、限りなく詐欺に近い。FXがブラックなイメージ(もしくは温床として)で捉えられることは、純粋にFXのトレーディングをエンジョイしている人間としては本当に悲しいことであるし、真面目にまともにやっているFX会社の方々にとっても悔しいことだろう。

FXは「金融商品取引法」に基づく登録を受けた業者でなければ行うことができないことになっている。無登録な会社であればどう考えても真っ当ではないと考えてしかるべきだ。なぜ、この時点でおかしいと思わないのであろうか、私は不思議に思う。それよりも、高配当ばかりに目が奪われてしまうのか。世の中に上手い話なんてあるわけはないことは誰だって分かっているはずなのに。自分のお金は自分の目の届く範囲で自分で運用すべし!FXをやるのであれば自分でディーリングすべし!人任せばかりにしていたら良いことなんて一つもない。

FX会社のHPには関東財務局長(金商)第○○○号などと、登録の明記がされている。金融庁のHP http://www.fsa.go.jp/ordinary/iwagai/index.htmlにも登録を受けている業者一覧が掲載されているし、各管轄財務局に問い合わせることができる。騙されるということはFX取引以前の問題である。どうかあなたの常識のアンテナをフル稼働させて、こういったFXを装った魔の手に掛からないようにしていただきたいと願う。

FX会社のリスクを経験

最近とても残念なことがあった。私が取引をしていたFX会社の一つから、取引システムを8月末に終了させることになった、とメールで連絡が来た。新システムへのポジション移行は不可能で、8月末までポジションを持っていたら強制的に決済されてしまうとのことだ。同じ会社の中なので、株的な発想かもしれないがクロスを振るとか、ロールオーバーするとかすればよいのではないかと思うが、それほど単純なことではないかもしれない。 私とて、システム開発に莫大な費用が掛かり、新システムを投入するのが大変なのは理解できる。そう決められてしまえば仕方がないと、十万円超の損失覚悟でランド円のポジションを決済した。カバー先銀行を新サービスへ順次移行するので、カバー先の減少に伴って、スプレッドが流動的に広がりやすくなると説明されていたが、ドル円は18銭、ランド円は15銭のスプレッドとなっていてびっくりした。

お客様のご要望を取り入れた新たな取引システムということだが、旧システムに関してはお客様のご要望は反映させないのだろう。残念ながら、この会社がどのように素晴らしい新システムを投入しようが、私としてはもう利用するわけにはいかない。自分のテクニック不足や相場感のハズレで損をするなら諦めもつくが、こういったこと不慮的で一方的な出来事は自分を納得させることができない。今まで自分が想定もしてなかった、FX会社に対する別のリスクを、身を持って学んだ次第だ。

執筆者紹介 : 香澄ケイト氏

主な略歴 : 為替ジャーナリスト
米国カリフォルニア州の大学に留学後、バヌアツ、バーレーン、ロンドンでの仕事を経て、帰国。外資系証券会社で日本株 / アジア株の金融法人向け営業、英国系投資顧問会社でオルタナティブ投資の金融法人向けマーケティングに従事する。退職後、株の世界から一転してFXに関する活動を開始し、為替情報サイト、マネー雑誌などの執筆、ラジオ番組への出演およびセミナー等の講師を努める。著書に『あなたのお金を10倍にする外貨投資術』(フォレスト出版)、『今すぐ始めるFX5人の投資家が明かす勝利のルール』(すばる舎)がある。