「好き」な気持ちが大事

『<勝負脳>の鍛え方』の著書でも有名な脳神経外科医の林成之氏があるラジオ番組で、「人間の才能がなんで決まるかは、いかに興味を持って好きになるかということだ」とおっしゃっていた。なんとその「好き」で才能の8割がた決まるというから驚きだ。だから、会社で自分の才能を発揮しようと思ったら、どんな嫌な上司でも好きにならないといけなくて、上司の悪口言ってお酒飲んでいるようじゃ駄目なんだそう。上司もまた同様。何かを上達させよう思ったら、まず好きになること。好きになると物を考える仕組みが鍛えられる。

ではそのロジック、つまり「好きこそものの上手なれ方式」はFXにも適用する。好きになる⇒上達する⇒得意(儲けられる)通貨ができる、といった具合だ。私オージー(豪ドル)が好きで得意だと思っている。ドル円にたびたび裏切られることは有っても、オージー(対円でも対ドルでも)にはあまり裏切られていない。だから余計好きになり勉強し自信が付く。オージーがあったから、私は為替を続けてこられたのではないかと思っている、オーバーだな、いやオージーです。

オージーとの出会いは、10数年前、シティバンクで初めて外貨預金をした時は私の中では外貨預金と言えば、"ドル"しかなかった。ところが、それは、2001年に米同時多発テロが起こり、段階的に利下げが行われたことで、自分の中でのドル至上主義は崩れた。そして高金利に焦点をあてスクリーニングしていたところ、オージーが浮上した。オーストラリアは経済が安定していることや通貨の取引量(流動性)の点からも買い安心感があった。幸運にも着眼点と着眼タイミングがよくその後オージーは右肩上がりで上昇していった。オージーでなくとも、愚直に一つの通貨に専念するのも儲ける方法だと思う。石の上にも3年とやらという言葉もあるのだ。

様々な顔を持つオージー

オージー(豪ドル)と言えば、高金利通貨の代名詞で、高金利通貨という特徴は円キャリートレード(低金利国で資金を調達し高金利国で運用し金利差を狙う取引)に利用されやすい。為替相場は様々な材料や思惑で動くため、為替レートは金利だけで決まるわけではないが、金利と為替の関係から言うと、一般的に低金利通貨は、低金利が嫌気されその国から資本が流出し通貨が売られることで下落する。一方高金利通貨は、高金利が好感されその国へ資本が流入し通貨が買われることで上昇する。(下図参照)

オージーは2001年2月以降下落から反転し上昇を開始する。2006年から政策金利も上昇し続けたため、円キャリーに拍車が掛かり為替レートの上昇にも拍車が掛かった。しかし、昨年8月サブプライム問題を発端に金融不安が起こり、各国が景気浮揚策として利下げを行ったため、円キャリーは解消され、その結果急速な円高が進行し、オージー/円はかつてないスピード(105円台→55円台)で急落した。

オージーはまた「資源国通貨」でもある。オーストラリアは石炭、金、原油、鉄鉱石などの鉱物資源が輸出全体の6割程度を占めているほど鉱産物の比重が高い。例えば、海外の商品市況の上昇はオーストラリア経済にプラスになり、オージーにとっても買い要因となる。商品市場との相関が高いことに留意しておこう。元々地理的に近い日本がオーストラリアの主な貿易相手国で、牛肉や農産物などの輸出も多くスーパーでもよくオーストラリア産の食品を良く目にする。しかし、最近では発展目覚しい中国がオーストラリアとの貿易シェアを伸ばしている。中国経済の発展はオーストラリア経済にとってもプラスに働くはずだ。

長期的にポートフォリオに組み入れたい

オージーを取引するうえで、欠かせないのは経済指標の動向だが、オーストラリアは米国ルや欧州と比較して経済指標の発表が少ないので、少ないニュースで大きく動く可能性がある。また、中央銀行総裁などの要人発言にもご用心。オーストラリアの景気は減速傾向ではあるにしても、他の先進国ほど大きく後退しているわけではない。

主な経済指標は以下の通り :

新規雇用者数 / 貿易収支 / RBA(中央銀行)政策金利 / 住宅建設許可件数 / 消費者物価 / 生産者物価 / 経常収支 / GDP / RBA議事録 / RBA四半期金融政策

オージーは最近では金融市場の落ち着きと共に、下落トレンドからアップトレンドへと変わってきているような動きになっている。ただオージー/円も既に底値から20円以上上昇しており、ここから一段の上昇を考えるには米国の金融市場の動向がカギとなる。少し落ち着きを見せてきた米金融市場がより安定してくれば、少しその兆候が出てきたリスクマネーの動きはもっと鮮明になると、オージーはもっと上昇する能性がある。

オーストラリアは今後利下げの可能性(現在政策金利は3%)があるにしても、日本の(0.10%)と比べるとまだまだ金利は高い。従って長期で考えた場合、FXでは低レバレッジを基本にして今後の投資先として注目して行ってよいかもしれない。

執筆者紹介 : 香澄ケイト氏

主な略歴 : 為替ジャーナリスト
米国カリフォルニア州の大学に留学後、バヌアツ、バーレーン、ロンドンでの仕事を経て、帰国。外資系証券会社で日本株 / アジア株の金融法人向け営業、英国系投資顧問会社でオルタナティブ投資の金融法人向けマーケティングに従事する。退職後、株の世界から一転してFXに関する活動を開始し、為替情報サイト、マネー雑誌などの執筆、ラジオ番組への出演およびセミナー等の講師を努める。著書に『あなたのお金を10倍にする外貨投資術』(フォレスト出版)、『今すぐ始めるFX5人の投資家が明かす勝利のルール』(すばる舎)がある。