為替ディーラーさんの話って訊いたことありますか? 訊きたいけど、なかなかチャンスないって? だから、やってみました座談会。今回から3回に渡って彼らのリアルな為替話をアップします。
出席者
あや(今年の相場のキーワード : 原点回帰)
とも(今年の相場のキーワード : 円は買えない)
ゆう(今年の相場のキーワード : 目に見えないアンワインディングのフローに注意)
ゆう「去年の7月以降はエキサイティングなマーケットだった。銀行でもディーラーの優劣が出たね。でもね、100年未曾有の危機って言うけど、為替で言えば、経験したことがないマーケットではないんだよ。昔だったら一気に20円動いたりしたこともあったり、1日1日で見れば4円とか動くし、前だって動いていたんだけど、ただ前と今とは環境が違う。」
あや「昨年は相場がボラタイルで有ったこともあって、銀行はどこも為替では史上最高益を出している。下がる一方のマーケットだったとしても、リスクマネージメントがちゃんとできなければ乗り切れなかった相場だったというのも事実。そこが上手くマネージできたところが収益を出している。マーケットは幾らでも1-2銭でリクイディティ(市場流動性)がある。そういうビジネスモデルが成り立っていた業界。それが1を100にしてっていうのはおかしい、やり過ぎでしょ、と神の手がデレバレッジ(レバレッジの解消)を起こしたので、久々に皆認識したんだよ。だから将来的には良いことだと思うよ、今回起こったことは。」
とも「リーマンも含めてまさか、そういうことが、と言うのが今のキーワードだと思う。じゃあまさか次ぎ何が起こるのかと言ったら、さっきのポンドのパリティー(等価価値)話の他に、根拠がない話ではあるかもしれないが、中国が米債を売り始めて米国がクラッシュすることもあるかな~、なんて。それは今のフロービジネスがアンワインディング(巻き戻し)に基づいたフロービジネスであって、結局アンワインディングは国が持っている米債のアンワインディングが起こるのではないか。時間軸で考えると為替って非常に離散的でなく集合的で歴史が絡む。断片的でしか取れないので伸びきったところがおしまい。レバレッジ、錬金術じゃなかったよね~というところでどんどん縮んでいる。で日本においては時間軸で縮み具合がどこまで戻るか。究極は江戸時代。よくて19080年代の相場付きに戻っちゃう。1980年にオプションはあったとしてもバニラ(通常のオプション)だったし、レバレッジはなかった。今膨らんだ風船がどこまでしぼんで行くのかな、というのが僕の主眼。相場は大政奉還で本来の姿に戻る。」
ゆう「本来の姿に戻る相場というのは、為替ディーラーを例にすると、為替ディーラーがあんなに貰えるなんておかしいとか。それが普通のレベルに戻って行くみたいな。今までは当たり前だったのが、是正されて来ている。まだ職があるだけでも良いよという論調。前と環境も変わってきているのだから銀行以外のところも選択肢として考えていかなくてはいけない、とかね。マーケットはどこまで悪くなるのかなということを皆が見ている状況だね。」
あや「スクラップ&ビルドだよね、スクラップが本当の短期間で一気に起こった。ビル建てていました、そこから一気に崩れました。じゃ廃墟のままかと言うとそんなことはなくてその中から再生が起こって行く。その再生に向けてありとあらゆる対応が取られる。それでも下落が止まらないのであれば、それはただ単にマインドの問題。これだけ低金利でお金がジャブジャブ余っている。だけど動いていないだけで、いざ動き出してちょっとマインドが好転するとまたバブルが瞬間的に起こっても良い位。皆、今行くと怖いよな~、って見ているだけ。だから良い水準になっていると思う。あの1対100のような異常な水準には戻らないとしてもね。売りは大分終わった感じがするし、いつ再開するのかなという条件は大分整いつつあると思う。後は時間が完結する。それがスタートした瞬間に上がる。早ければ年内ってこともあるんじゃないかな。」
今年のキーワード
とも「どん底、つまり最安値では買えないという意味では、超長期で行くなら今のこの水準は良いと思うよ。今までの話しからの水準で売りから入るのはどうかということだけど、FXの場合で言えば、こんな低金利の世界状況下では売りからも入れるしね。さて、そろそろ後半なので、今年年初を起点にして年末までの上昇率が高いトップ3を予想すると、1位がポンド、2位がオージー(豪ドル)、3位がキウイ(NZドル)ってとこかな。
そしてキーワードは『目に見えないアンワインディングの動きに注意』かな。何日後、何週間後、1年後どうなるかというのは直観。直観というのは、今回の危機で非常に大事だと思った。例えばポンドドルが2より上のときはとても違和感を覚えたし、ポンド円の240円も同様。300円になるかと言えばならなかったしね。一番違和感を覚えているのは今ハイオクが90円台ってことだけど。ま、それはそれとして、118円とかのポンド円は今の段階では違和感だな。年末に向けて消去法で一番は掛け算通貨でポンド円。今年年初は低いところからのスタートになるし。半分落ちたとこの半値戻ったとしても良いとこ行くんじゃないかな。」
あや「俺は『米国の復権』。どこまで復権するか、かな。1位及び2位はオージーかキウイ。化けるとしたらオージーかな。ひょっとしたら一番はドルってこともアリなんて思ったりして、もうかなり上がってはいるけど。」
ゆう「僕は『円は買えない』かな。もうこれ以上円は買えない。なので、円は最下位。短期的には円買いかもしれないけど。すごく長期的に見れば、今からの円投(円資金を外貨資金に換え運用すること(であればなんでも買い。」
あや「じゃあ、最後に総まとめとして(?)、純粋な相場の話とはちょっと違うんだけど、日本は油買えばいいって思うんだよ。円投(円資金を外貨資金に換え運用)で現物で原油買って、北海道かどこかに巨大な備蓄施設を作って。失業対策にもなるし。円高なんだからせっせと今から油蓄えて、将来的なエネルギー危機に備えるって政策どう? これだと直接的な為替介入に当たらないでしょ。米債なんか買って外貨準備増やすよりも、下がったらじわーっとエネルギーを買う。政策的には備蓄なんだし、マーク・トゥー・マーケット(保有資産を実際の市場価格で計算して現在の市場価値に評価し直すこと)しなくていいんだから。後は子供を生む、人口を増やして、国力を付ける、でどうかな。国力衰退すれば、通貨にも影響してくるからね。」
執筆者紹介 : 香澄ケイト氏
主な略歴 : 為替ジャーナリスト
米国カリフォルニア州の大学に留学後、バヌアツ、バーレーン、ロンドンでの仕事を経て、帰国。外資系証券会社で日本株 / アジア株の金融法人向け営業、英国系投資顧問会社でオルタナティブ投資の金融法人向けマーケティングに従事する。退職後、株の世界から一転してFXに関する活動を開始し、為替情報サイト、マネー雑誌などの執筆、ラジオ番組への出演およびセミナー等の講師を努める。著書に『あなたのお金を10倍にする外貨投資術』(フォレスト出版)、『今すぐ始めるFX5人の投資家が明かす勝利のルール』(すばる舎)がある。