海外旅行は楽しい。でもどうせ行くなら一ひねり、付加価値を持たせてみませんか?私は中国に人民元預金口座を開設する目的で行ってきた。このように、逆に外貨投資をする目的で海外旅行をしたらもっと楽しいかもしれない。その目的のきっかけから具体的な人民元預金口座の開設方法まで4回に渡り掲載していきたい。

かの大投資家ジム・ロジャーズ氏のモットーは現地を見てものを言うことだという。もう10年以昔、氏の著書『インベストメント・バイカー』を読んだ時の感動と興奮は今でも忘れていない。世界冒険+世界投資。この二つのキーワードだけでもワクワクするではないか。そこまで冒険野郎になれなくてもいいけれど、私だって現地に足を運んで口座開設をしてみたい。自分が仕事やプライベートで海外のあちこちによく行く機会があった割に、そんなことに余り目を向けてなかった。

第一投資金額が違い過ぎる、と最初から諦めていたからなのか、バイクに乗れないからなのか、一緒に行ってくれるパートナーがいないからなのか……。いやそんなことは必須条件でない。それよりも、自分が行動するかしないかだけだ。自分が行動する - そこが非凡な大投資家と平凡な一般投資家とを分けるボーダーラインになっているのかもしれない。

人民元を保有したい - 近年の中国の発展を見るにつけ、私の中で気持ちが日増しに膨らんで来ていた。もう耐えられない、よし調べよう。幸い私にはチャイニーズコネクション(香港の友人達)がある。で、調べてみて、分かった。日本人でも中国の銀行で口座開設することが無理なく可能だということが。人民元に投資するにはFXを含め幾つか方法は有るけれど、やはり冒頭で触れたように、中国に足を運べば現地の状況も自分で見聞きできて一石二鳥である。

だとすれば、人民元投資は中国の銀行で預金口座を開設するのが一番ストレートかつシンプル。もしあなたが中国や人民元の将来性を感じ取って、人民元に投資することに興味が有るのなら恐れないで欲しい。中国、特に上海や深センは物理的にとても近い。日本人の地の利を活かそうではないか。距離を感じるのであればそれは心理的な部分が大きいのではないだろうか。ちょっとした時間と基本的な英語、いやそれ以上にやる気さえあれば、だれでも出来ることである。

香港から深センへの行き方

広東省深セン市は1980年、トウ小平氏により経済特区に指定されると急速に発展した。それまではひなびた漁村だったが、現在で情報通信産業やサービス業が急速に発展している、人口1,200万人の大都市であり、一人当たりの国民所得も中国では最高レベルである。私が始めて足を踏み入れた1993年はまだ非常に中国的なものと近代的なものとの狭間で不安定に揺れ動かされ、混沌としていた時代であったのだが、今では近代化の方が勝っている。しかし、街を歩けばそこここに経済の急成長によるギャップ(ひずみ)が存在していることが発見できる。

香港から深センには九廣鉄路(KCR)が通っており、始発の尖沙咀東駅(Tsim Sha Tsui East)から終点深センの羅湖駅(Lo Wu)(写真1)までわずか40分足らず。日本の地下鉄に乗る気軽さでいとも簡単に中国本土に足を踏み入れることができる。

香港のイミグレーション(香港を出国)を通過し、橋のような渡り廊下を100m程歩いて中国側のイミグレーション(中国に入国)を通過する。帰りはこの逆で中国出国と香港入国を繰り返すことになる。昔はこんな渡り廊下などあるはずもなく、文化大革命の時などは、眼下に流れる深セン河を泳ぎ渡ろうとして命を落としたり逮捕されたりした亡命者の人たちも多いと聞く。だが今では、大量の荷物を持って行き来する香港人や中国人の人たちに取って代わっている。

羅湖駅

中国経済の将来性をどう捉えるか

私が中国に人民元銀行口座を開設しに行ったのは2008年6月半ば、その時と現在とでは経済環境が一変している。世界的な金融危機が、2004年以降10%を超えるGDP成長率を維持して来た中国経済にも影響を及ぼし始めており、経済が回復するまでには時間が掛かると考えられるが、長期的な新興市場としての中国の成長を期待したい。中国経済の先行きを楽観視するか悲観視するかは意見が分かれるところであるが、専門家の意見ばかりだけでなく、たとえアマチュアであっても、自分の目で見て来たことで判断することも重要だ。

従って、人民元投資は長いスパンで考えることが必要になってくるだろう。私はそれを大きな資金でしようとしているわけではなく、ちょっとした余裕資金でこれからの中国の成長性と一段の人民元の自由化を享受できれば楽しいなと考えている。ひょっとしたら投資資金に対して、予想以上のリターンが待っているかもしれない、と夢を描くことだけでも楽しいではないか。

執筆者紹介 : 香澄ケイト氏

主な略歴 : 為替ジャーナリスト
米国カリフォルニア州の大学に留学後、バヌアツ、バーレーン、ロンドンでの仕事を経て、帰国。外資系証券会社で日本株 / アジア株の金融法人向け営業、英国系投資顧問会社でオルタナティブ投資の金融法人向けマーケティングに従事する。退職後、株の世界から一転してFXに関する活動を開始し、為替情報サイト、マネー雑誌などの執筆、ラジオ番組への出演およびセミナー等の講師を努める。著書に『あなたのお金を10倍にする外貨投資術』(フォレスト出版)、『今すぐ始めるFX5人の投資家が明かす勝利のルール』(すばる舎)がある。