今年の自作PCにおける大きなトレンドはグラフィックスカードの高性能化だろう。昔はPCで最新FPSゲームなどをしようとすれば高価なカードが必要だったのだが、NVIDIAのGeForce 9800 GTXやATIのRadeon HD 4850など、手頃な価格のハイエンドクラスGPUが登場。さらメモリやHDD、CPUなどの値段もぐっと下がっており、高性能を狙った自作PCにはちょうど良い時期が来ていると言える。
本連載は、これから数回にわたり、そういった手頃になったPCパーツからよりバランスの良い製品を厳選し、高コストパフォーマンスを実現する構成の自作パソコンを組み上げてしまおう……というものだ。それでは早速、今回チョイスしたPCパーツを紹介しよう。
まずはPC全体の方向性を決めるマザーボードから。選んだのはGIGABYTEのIntel P45 Express搭載マザーボード「GA-EP45-UD3R」。LGA775ソケットのIntel製CPUに対応しており、メモリはコストパフォーマンスに優れるDDR2メモリに対応。PCI Express x16スロットは1基だが、PCI Express x1×3基、PCI×3基と、様々な拡張カードを搭載可能である。
メモリは低コストで大容量の搭載が可能なDDR2メモリを採用。4スロットで最大16GBまで搭載可能だ |
キーボードとマウスのPS/2端子、計8ポートのUSB2.0、ギガビットイーサネットポート、HDオーディオ、6ピンと4ピン両方備わったIEEE1394など、豊富なインタフェースを備えている |
GA-EP45-UD3RはGIGABYTEのP45マザーボードでは最新の製品でもあり、省電力と低発熱を従来製品から一歩進めたモデルでもある。同製品に採用されているUltra Durable 3は同社独自の品質基準で、高効率なフェライトコア、耐久性個体コンデンサ、低発熱な低RDS(on)MOSFETによって、様々に品質を高めている。
このUltra Durable 3で注目したいのが2オンス銅箔層。表面からは見えないためインパクトが伝わりにくいが、ボード基板の内部の電源層を従来のマザーボードと比べ2倍厚くしたものである。電源層が厚いことにより、電子がよく流れるようになり、ボード全体が放熱版となって熱がこもりにくくなる効果がある。
CPU電源部をアップ。同製品に採用されているコンデンサ、フェライトコア、MOSFETはどれも高効率、高耐久性、低発熱なもの。CPU電源回路は6フェーズで、省エネ機能「Dynamic Energy Saver Advanced」によって使用数を切り替えることでさらに省エネも |
マザーボードにGA-EP45-UD3Rを選択したことで、静音・省電力重視か、あるいはパフォーマンス重視か、というどちらの方向性にも構成することも可能となった。どちらか一方でも良いのだが、これの両立にチャレンジするというのも面白い線だ。
そこでグラフィックスカードにはハイエンドクラスの性能ながら電力効率も高いATI Radeon HD 4850を採用するGIGABYTE「GV-R485MC-1GH」を選択。このGV-R485MC-1GHは、同社独自搭載の高効率なフェライトコアや耐久性個体コンデンサ、低発熱な低RDS(on)MOSFETによって発熱を抑え、加えて同社マルチコアクーリング技術の恩恵もあって、ファンレス冷却を実現したというカード。ケース内冷却に配慮は必要であるものの、ハイエンドクラスのGPUながら静音化が可能という注目の製品だ。
GIGABYTEのグラフィックスカード「GV-R485MC-1GH」。ATI Radeon HD 4850というハイエンドGPUを搭載しながらファンレス冷却を実現 |
2つの大型フィンをヒートパイプで結んだ冷却機構を採用。拡張カードのブラケットから飛び出したフィンが外気に触れ、さらにスリットから外気を内部に取り込むことでも冷却する |
ファンレス冷却のグラフィックスカードを扱う際には、ケース内冷却に気を配る必要がある。そこで、それを納めるケースには容積が大きくエアフローに優れた製品を選びたい。そういった条件には、いわゆるハイエンドケースが適しており、今回はAntec製のミドルタワーケース「NINE HUNDRED AB」を選択した。フロントやサイドにメッシュ構造を、フロントとリアにファンを搭載しているとともに、トップにも20cm大型ファンを搭載する冷却性能が高い評価を得ており、ショップブランドPCの上位モデルにも採用例が多い。
前面が背面よりもやや低くなる独特なデザインのNINE HUNDRED AB。フロント全てが5インチベイであり、さらに、通気性の良いメッシュ構造。また、サイドパネルは内部が見えるクリアパネル仕様で、ここに追加ファンも搭載できる |
ハイエンドケースらしく、内部もブラック塗装で高級感が漂う。電源を底面に置くレイアウトは、ケースの振動を抑える効果も |
3つの5インチベイで1つのユニットとなる3.5インチシャドウベイを2基搭載しており、拡張性に優れた自由なベイレイアウトが可能だ。奥を覗くと12cmの大型ファンが搭載されていることも確認できる |
フロントベイユニットの計2基の12cmファンに加え、背面にも12cmファン、トップにはさらに大型な20cmファンを搭載している。どのファンも3段階でスピード調節可能で、高性能かつ静音なPCを組むのに最適 |
マザーボードのGA-EP45-UD3RはDDR2メモリに対応した製品である。そのDDR2メモリ、Intel P45 Express自体は公式にはDDR2-800までのサポートなのだが、GA-EP45-UD3Rでは、GIGABYTEの独自サポートによってDDR2-1366までが利用可能だ。さすがにDDR2-1366はオーバークロックにしても限界に近いということで、現実的な線としてはDDR2-1066あたりを使うことをオススメしたい。
もっとも、DDR2-1066も相当に高速なメモリであるために、安定動作などを考えれば、ここはバルクメモリではなくより高信頼なメーカー製オーバークロックメモリを選ぶべきだ。そこで今回は、CorsairのDOMINATORシリーズから、「TWIN2X2048-8500C5D」を選んでみた。
DOMINATORシリーズは大型ヒートシンクによる放熱効果も高く、オーバークロック動作に適している。TWIN2X2048-8500C5Dは、DDR2-1066 1GBモジュールの2枚セットで、これを2セット使用し4GBという構成にしてみたい。32bit OSの環境下ではちょっともったいないくらいの構成ではあるが、64bit OSを導入する可能性も考えれば、せっかくメモリ価格も下がっていることだし、これくらい用意しておいた方が無難だろう。
最後に電源。今回はハイエンドGPUのRadeon HD 4850を扱うため、ハイエンド構成を受容できる電源容量の製品を選びたい。さらに電源選びでは、将来的な拡張プランもポイントとなる。最近のGPUではメインストリームクラス以上の製品にPCI Express補助電源コネクタが採用されているが、より上位のGPUとなると、1枚のカードで2つの補助電源コネクタを必要としたりすることもある。容量やコネクタ数にはある程度余裕を持っておくべきだろう。こうした点もふまえ、今回はCorsairのゲーミング向け650W電源「CMPSU-650TX」を選択した。CMPSU-650TXは、日本製コンデンサの採用や、80PLUS認証の変換効率の高さも特徴だ。
メモリで有名なCorsairがハイエンドゲーマー向けに製品展開している電源ユニット「CMPSU-650TX」。電源容量は650Wと、今回の構成ではまだ余裕がある |
ファンコントロール対応の120mmダブルボールベアリングファンを搭載。コネクタ類もハイエンドPCに十分に対応できる数・種類を備える。また、日本製105℃ハイグレードコンデンサや各種保護回路など、内部の高信頼性にも注目 |
さて、これらパーツのほか、CPUやHDDなどを用意すれば、自作PCに必要なパーツはほぼすべて揃ったことになる。次回はこれらパーツを実際に組み込んで、自作PCを作りあげてみたい。こうご期待だ。
■今回紹介したパーツの実勢価格(記事掲載時、編集部調べ) | |
GA-EP45-UD3R | 17,000円前後 |
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GV-R485MC-1GH | 24,000円前後 |
NINE HUNDRED AB | 20,000円前後 |
TWIN2X2048-8500C5D | 7,000円前後 |
CMPSU-650TXJP | 15,000円前後 |
(機材協力 : リンクスインターナショナル)