今年、いよいよ金融庁によるレバレッジ規制が現実に行われ、日本のFX会社は最大50倍までのレバレッジしか認められなくなる(翌年は25倍まで)。こうした、逆風とも思える状況下、FXプライムの三浦俊一社長は、FXの将来はまだまだ明るいと断言する。三浦社長に、FXと出会った生い立ちから、FXの今後について5回にわたってお話を伺った。
PROFILE : FXプライム株式会社 代表取締役社長 三浦 : 俊一(みうら・しゅんいち)
伊藤忠商事入社後、23年もの間、為替ディーラーとして活躍。いったんは外為の世界から離れるも、2007年3月にFXプライム代表取締役社長に就任。当初は"プロでも負けるリスキーな外為取引。個人が手を出すなんて信じられない。FXビジネスは大丈夫なのか"と不安視していたが、FXプライムの"くそまじめ"な業務姿勢を見て、これならいけると自信を持った。安心と信頼を商売の基礎と考え、ハイリスクな金融商品をアマチュアに提供する企業責任を重視し、安心で安全な取引環境の整備を徹底。規制強化を好機と捉え、FX業界の地位向上、FXの一般化を目指す。
聞き手 : 2月1日から信託保全が義務付けられました。その動きと前後して、FXのビジネスから撤退するFX会社も増えてきています。今後、FXのマーケットはどうなるのでしょうか。
三浦 : 個人的にはFX会社が意外と残っているなという気持ちがあります。信託保全の完全義務化がスタートしたことによって、多くのFX会社は資金力の面で相当に厳しい状況に追い込まれますから、恐らくかなりの数のFX会社が撤退するのではないかと、以前から考えていました。
でも、実際に信託保全が完全に義務化された後も、80社近いFX会社が残っています。ですから、意外とマーケットは縮小しないのではないか、というのが今の見方です。
前にもお話しましたが、FXの取引人口はどんどん増えています。若い人たちにとっては、株式投資よりもFXの方を身近に感じている人も多いようです。そう考えると、ネット証券会社の口座数を上回るということも起こりうるのではないでしょうか。
聞き手 : FX会社のサービス内容にも変化が現れてくるのでしょうか。
三浦 : 今まではコスト競争が盛んに行われてきました。手数料を無料化し、スプレッドも大幅に縮小するというように、極めて少ないコストで取引できる環境が作られてきたわけです。
もちろん、今後もコスト競争は行われるでしょう。ただ、これからは全体的なサービスに軸足が移っていくはずです。
たとえば情報提供、安定したシステムなどは、これからのFX会社が生き残っていくうえでは、とても重要な要素になってくると思います。外国為替のトレードは情報戦の世界ですから、いかに素早く、リアルな投資情報をお客様に提供していくかということが、常に問われています。ですから、この部分でのサービスの充実はさらに大事になってくるでしょう。
それと安定したシステムですね。特に短期トレードを行っているお客様からすれば、常にトレードのためのシステムが安定しているかどうかは、とても重要です。もし、何らかの理由によって、トレードの最中にシステムがダウンしてしまったら、それこそ致命的です。そのような事態を引き起こしたFX会社からは、お客様も逃げてしまうでしょう。
ですから、これからのFX会社にとっては、充実した情報提供が出来るかどうか、そして安定したシステムが提供できるかどうかということなどが、今まで以上に問われてくるのではないかと思うのです。
聞き手 : 最近は、モバイルでトレードする投資家も増えていますね。
三浦 : そうですね。これまでは自宅のパソコンの前に座ってトレードをしているという人が多かったと思うのですが、ここ最近は徐々に携帯電話などから注文を出すという人が増えてきています。そういう、新たなトレードスタイルの投資家からのニーズにも対応していく必要があると思います。
ただ、モバイルの場合、パソコンでのトレードとまったく同じ環境にしようと思っても、やはり限界があります。ですから、どういうサービスを提供していくのかという取捨選択も必要になってきます。現在、弊社では「PRIMEアプリ」というモバイル用のトレードシステムも用意してありますが、この部分でのサービス提供については、今後、いろいろと検討していく必要がありそうです。
聞き手 : 顧客がFX会社を選ぶ際の選択基準も変わってきそうですね。
三浦 : 手数料やスプレッド、レバレッジだけでFX会社を選ぶ時代は終わったということです。むしろ、これからは目に見えない部分を重視してFX会社を選ぶという傾向も高まってくるのではないでしょうか。
たとえば財務基盤などが、それに該当します。恐らく今までは、財務基盤に注目してFX会社を選ぶというお客様は、むしろ少なかったと思います。でも、信託保全の完全義務化が行われたことによって、資金力・信用力を持ったFX会社でなければ、生き残りが難しくなってきました。資金力を高めるためには、きちっとした財務基盤を持つ必要があります。
何しろ、自分の取引先であるFX会社が撤退したら、お客様が持っているポジションについては、一定日をもって強制的に清算されてしまうことも無いとはいえませんから、含み損が実現損になってしまう虞があります。やはり、お客さまから信頼されるFX会社になるためには、強固な財務基盤が必要です。
したがい、情報サービスの充実、安定システムの提供、そして強固な財務基盤の確立というのが、これからのFX会社にとっては、極めて重要になってくると思います。
お客様の立場になって考えると、FX会社を選ぶ際には、その会社の総合力を判断することがより重要になるということだろうと思います。これから残っていくFX会社は、総合力に優れたところということになるでしょう。そういう時代をいかに生き残っていくか。それを念頭において、これからも日々、経営努力を続けていく所存です。
(撮影 : 中村浩二)