FXの大相場の数々を目撃してきたマネックス証券、マネックス・ユニバーシティ FX学長の吉田恒氏がお届けする「そうだったのか! FX大相場の真実」。連載最終回となる今回は「FX為替相場史」を解説します。
いわゆる「コロナ後」の新生活様式、在宅時間が長くなったことで「巣ごもりトレーダー」が増えているとされます。そんな「巣ごもりトレーダー」でも、20年以上あるFX時代の為替相場の歴史を「早わかり」できるように、これまで連載で書いてきたことを整理してみました。今回はその後編です。
リーマン・ショックを前後して、豪ドル/円は3カ月で約5割暴落した
2008年に起こった「リーマン・ショック」。それを前後して、当時FX投資家から大人気となっていた豪ドル(通称オージー)/円は、約3カ月で1豪ドル=100円台から50円台へ大暴落となりました。「リーマン・ショック」におけるFX界の「大事件」といえる出来事だったでしょう。
リーマン・ショックの株暴落が終了した後も米ドルの下落は止まらず、1米ドル=75円まで続落した
「リーマン・ショック」の株安は、NYダウの場合は2009年3月で終わりました。ところが、反発に向かう株価を尻目に、米ドル/円は下落が続き、ついにはそれまでの戦後円最高値、1米ドル=80円を更新する展開に向かったのです。「リーマン・ショック」を受けた「100年に一度の危機」から脱出するための米国の積極的な金融緩和が、米ドルを下落させる要因になったと見られました。
欧州債務危機解決を主導したドラギECB総裁の評価は当初は極めて低かった
欧州債務危機とは、おもに2010~2012年に展開しました。その収拾に指導力を発揮したのは、2011年にECB総裁に就任したマリオ・ドラギ氏でした。しかし、時の危機の主役であるイタリア出身者だったことから、一般的な期待値はとても低いものだったのです。結果的には、そんな下馬評をひっくり返す大活躍となったのでした。
アベノミクスの主役になる黒田日銀総裁の2回の金融緩和では、1日3円、1カ月で10円もの大幅な円安が起こった
アベノミクスの株高・円安を大きく進めたのは、2013年4月と2014年10月に2度にわたって行われた黒田日銀総裁の下での金融緩和、いわゆる「黒田緩和」でした。海千山千の世界の投資家の意表をついたことで、1日で3円、1カ月で10円もの円安大相場が展開するきっかけとなったのです。2019年の米ドル/円は、1年で10円も動かなかったことを考えると、いかに大きなインパクトだったかがわかるでしょう。そのことに敬意を表して、「黒田バズーカ」との異名もついたのです。
アベノミクス円安を主導した黒田日銀総裁だったが、円安を止めたのも黒田総裁だった
上述のように、アベノミクス円安を主導した黒田日銀総裁でしたが、その円安も2015年6月、1米ドル=125円で終わりました。そして円安終了のきっかけになったのも「黒田発言」だったのです。その意味では、アベノミクス円安は、全く「クロダに始まりクロダで終わる」といえるものでした。
米大統領選挙でトランプ勝利となったら株の大暴落は不可避と思われていた
これは、それほど意外ではないかもしれませんね。今ですら、あまりに不規則なトランプ大統領の言動、いつ株暴落のきっかけになってもおかしくない感じがします。だからこそ、2016年11月の米大統領選挙では、万一「トランプ大統領誕生」なんてことが起こったら、この世の終わりかもしれないと思われていたんです。
その意味では、トランプ大統領は予想通りか、むしろ予想以上に自分本位でハチャメチャで、とても世界のリーダーたる米大統領らしくありません。それでも意外とこの世の終わりとはならずにここまできました。
このような状況のなかで、FXも新たな歴史を追加する必要がやがて出てくるのでしょう。しかしながら、一区切りつけるということで、連載は今回で筆を置くこととします。ここまでご愛読いただき、ありがとうございました。