FXの大相場の数々を目撃してきたマネックス証券、マネックス・ユニバーシティ FX学長の吉田恒氏がお届けする「そうだったのか! FX大相場の真実」。今回は「オージー・バブルの状況」を解説します。

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2008年9月以降、細かく言えば10月以降ですが、世界の金融市場は大混乱となり、1930年代の世界恐慌以来の「100年に一度の危機」と呼ばれるようになりました。そこで、FX、そして為替相場において最大の衝撃となったのが、これまで述べてきた「オージー(豪ドル)・ショック」だったでしょう。

そんな「オージー・ショック」が色濃く残る中で、私は、金融機関のある知人から一つの相談を受けました。「今回のリーマン・ショックで円高が大きく起こったことで、金融機関の外貨商品の販売員たちも強いショックを受けました。そこで彼らに向け、元気が出て、勇気がわくようなセミナーを何とかやってもらえないでしょうか。とくに豪ドルについてお話しいただけないでしょうか」

豪ドル/円の5年MAからのかい離率

私は、この「勇気がわくようなセミナーを」って言われたときに、やや不謹慎ではありますが、「これは面白いことになりそうだ」と思って、俄然やる気になったのです。

「元気が出て勇気がわくようなセミナーを。そのようなリクエストをもらいました。だから、セミナーはこの資料から始めます」

忘れもしない、まだリーマン・ショックの痛手が生々しく残る2008年11月、そう言って、ある地銀の50数名のFA(ファイナンシャル・アドバイザー)の方々の前で、私がスクリーンに表示したのは、豪ドル/円の5年MA(移動平均線)からのかい離率でした。

  • 【図表】豪ドル/円の5年MAからのかい離率 (1990~2020年)(出所:リフィニティブ・データよりマネックス証券が作成)

    【図表】豪ドル/円の5年MAからのかい離率 (1990~2020年)(出所:リフィニティブ・データよりマネックス証券が作成)

「よくご覧ください。グラフが上に伸びると上がり過ぎ、下に伸びると下がり過ぎです。これを見ると、リーマン・ショック前の豪ドル/円は、記録的な上がり過ぎ、割高圏にあったことがわかります。ところが、その後の暴落を受けて、足元は一転して10年以上ぶりの下がり過ぎ、割安圏に達したようです

「無自覚としても、記録的な割高圏で豪ドル建て商品をお客様に薦めたことを考えると、一転して記録的な割安圏で豪ドル建て商品を薦められるなら、誰かから頼まれなくても、元気も勇気も出てくるでしょう」(これ、ほぼ実話です)

この当時の豪ドル、「オージー」は、もちろんFXだけの人気通貨ではなかったのです。これまでも説明してきたように、そこそこの高金利通貨であり、豪州と言えば先進国でもあり、そのような国の通貨が7年も上昇トレンドが続いてきたのですから。

豪ドル建ての債券、投資信託、外貨建て保険などの運用商品は、FAや販売員の方々も自信をもってセールスしてきたのでしょう。ところが、リーマン・ショック、そしてオージー・ショックが起こったわけです。

「販売員の多くが、お客様にご迷惑をかけてしまったとして、自信を失っています。だから自信を回復できる、元気が出て、勇気がわくセミナーをお願いします」

改めて豪ドル/円の5年MAからのかい離率を見たら、あなたも思わず、「おやおや」と思うのではないでしょうか。私が言いたいことは、このような客観的データを見ればたとえ相次ぐ「ショック相場」でもすぐに反発する「不死身のオージー」であっても、それが一転してオージー・ショック拡大となる前に、一抹の不安を感じられたかもしれないということです。