FXの大相場の数々を目撃してきたマネックス証券、マネックス・ユニバーシティ FX学長の吉田恒氏がお届けする「そうだったのか! FX大相場の真実」。今回は「FXの始まり」を解説します。
前回までに私は、「リーマン・ショック」が世界的に展開する中で、2008年10月24日を中心に、為替相場でも記録的な大変動が起こったことを紹介しました。そして、それこそが、その後のFX(為替証拠金取引)規制強化のきっかけになったようです。
FXレバレッジ上限設定の背景
「FXは1998年の外為法改正を受けて始まった」というのは、一般的に説明されているものですが、より細かく言えば、じつは実質的スタート、つまりFXのビジネスとしての本格的スタートは1998年10月でした(金融機関が本格的にFXの販売をスタートした時)。ただし、その1998年10月こそ、なんと「FX史上最悪の相場」が起こったタイミングだったのです。
FXが実質的にスタートした1998年10月、米ドル/円は、前半のたった3日間で1米ドル=135円程度から110円割れ寸前まで、25円程度もの暴落となったのです(なぜそうなったかは、もっと後で説明します)。
こういった中で、「FX誕生月」の1998年10月、米ドル/円の変動率(<高値-安値>/終値)は21%にも達しました。ところが、このように米ドル/円の月間変動率が2ケタとなったのは、その後ずーっとなかったのです。
そして、1998年10月以来の、米ドル/円の月間変動率2ケタとなったのが、ちょうど10年後、リーマン・ショック「最悪の日」である2008年10月。この時の米ドル/円変動率は、上述の1998年10月のそれには及ばなかったものの、それでも15%となり、まさに「FX誕生月」以来の大変動となったのでした。
これは、FXにとっては、とても重要なことでした。これまで説明してきたように、FXは、スタート直後を除くと、その後は小幅な変動が続いていました。基本的には大きな値動きにならないと、大きな利益の獲得も難しかったことになります。
例えば、1ドル=100円で買った米ドルが200円まで上がったら、どこで売る(利益確定する)かはともかく、大きな利益を稼げる機会があります。その一方、1ドル=100円で買った米ドルが、110円までしか上がらなかったら、どこで売る(利益確定する)としても、利益は限られたものにしかなりません。
以上のように、利益(リターン)の大前提は、値幅(ボラティリティー)でしょう。具体的には、1ドル=100円の米ドルが200円まで上がるのか、それとも110円までしか上がらないのか。その上で、後者の場合でも利益を大きくするためには、基本的には投資金額を大きくする必要があります。
FXの最大の特徴とされるのが、レバレッジ(テコの原理)、つまり投資金額(証拠金)の何倍かの取引ができることとされます。この本質的な意味は、為替相場は、他の相場と比べても基本的には値動きが小さく、その意味では大きな利益(ハイ・リターン)を追求しにくいので、大きな利益を狙うなら、レバレッジを活用し、投資金額を拡大する方法を選択できる、ということです。
よく「FXはハイリスク」といったことを聞きますが、とても良い機会なのではっきり否定したいと思います。これまで述べてきたように、為替相場は基本的には小動きなので、そのまま投資(レバレッジ1倍)しても、利益(リターン)は限られるのが基本です。つまり、利益拡大(ハイリターン)を目指すなら、レバレッジの活用で投資金額拡大の必要が出てくるということです。
再確認しますが、FXがハイリスクなのではなく、FXでハイリターンを目指すなら、レバレッジを高くすることなどで、ハイリスク・スタイルにする必要があるということが、正しい理解だと思います。
「FX誕生月」を除くと、為替相場は小動きがずーっと続きましたが、それが変わったのがリーマン・ショックだったのです。為替相場も想像以上に動くことがあるとすれば、小動きを前提としてきたレバレッジの考え方はそのままというわけにもいかないでしょう。そのためFXのレバレッジ上限設定といった規制強化が必要になったのです。