初めてFXに挑戦する人は、まずバーチャルトレードを使って、トレードテクニックを磨くことをお勧めする。バーチャルトレードとは、一種のFXゲームだ。たとえば、500万円の仮想マネーをもって、自由に為替の売買を行う。その500万円を、一定期間中にいくらまで増やすことができるのかによって、ランキングされていく。もちろん、少しでも多く増やせた人が勝利を収める。
ランキング上位の人には、豪華賞品がもれなく付いてくる。賞品の内容はFX会社によって異なるが、なかには成績トップの人に対して、自動車をプレゼントするところもあるくらいだ。その他、海外旅行や家電製品など、賞品の内容は実に豪華。その争奪戦が繰り広げられる。
運用成績もなかなかのものだ。わずか3カ月間で、500万円を270億円に増やしたつわものもいる。
もちろん、バーチャルとはいっても、現時点におけるリアルタイムレートでのトレードになる。取引に用いられるツールも、実際に現金を使ってトレードをする場合と全く同じだ。したがって、バーチャルトレードで練習を積めば、そしてそれによってお金を増やすことができれば、実際のトレードでも成功するはず……。
と言いたいところだが、バーチャルトレードとリアルトレードとでは、大きく事情が違ってくる。実は、バーチャルトレードで成功をおさめ、1等の賞品を手にすることができたとしても、リアルトレードで同じように成功する保証はない。
一番大きな違いは、リアルトレードの場合、自分の身銭を切って取引に参加するということだ。自分にとって大事なお金を賭けるのだから、無茶なトレードはなかなかできるものではない。この点、バーチャルトレードは、あくまでも仮想マネーでの取引になるので、すべてを失ったとしても、痛くもかゆくもない。つまり、相当程度、無茶なトレードをすることができる。
実際、3カ月間で500万円を270億円に増やすとしたら、これはもう相当に無茶なポジションの張り方をしない限り、実現不可能だろう。レバレッジを数百倍にまで引き上げ、トレードする通貨もできるだけボラティリティの高いものを選ぶ。そして、その通貨に集中投資する。もちろん、売り買いのポジションも、どちらか一方に傾ける。
そこまですれば、短期間のうちに投資資金を大きく増やすことができるだろう。ただし、それをリアルトレードでやろうと思ったら、相当の勇気が必要になってくる。
実際、普通の給与所得者からすれば、500万円はかなりの大金だ。それだけの資金を、あっという間に失うかも知れないというようなトレードに投じることができるだろうか。 恐らく無理だろう。自分の身銭でトレードするということになると、多くの人は判断に逡巡するだろうし、恐怖心とも戦わなければならない。「相場は恐怖と欲望のゲーム」と言われるように、アゲインストになるかも知れない恐怖と、もっと儲けたいという欲望に打ち克たなければ、実際のトレードで成功を収めることはできないのだ。もちろん、リスク管理も必要になってくる。
つまり、バーチャルトレードでどれだけお金を増やすことができたとしても、それはリアルトレードの参考にはならないと断言しても良い。
もし、リアルトレードの練習を目的にしてバーチャルトレードを利用するのであれば、ランキングのトップを狙うというような野望は持たない方が良い。あくまでも、実際にトレードをする時と同じように、きちっとリスクコントロールをしながら、着実に利益を積み上げていけるようなトレードを繰り返していくべきだろう。それが出来れば、リアルトレードの練習になる。
くれぐれも、バーチャルトレードで成功したからといって、その取引手法をそのままリアルトレードにあてはめないことだ。
執筆者紹介 : 鈴木雅光氏(JOYnt代表)
主な略歴 : 1989年4月 大学卒業後、岡三証券株式会社入社。支店営業を担当。 1991年4月 同社を退社し、公社債新聞社入社。投資信託、株式、転換社債、起債関係の取材に従事。 1992年6月 同社を退社し、金融データシステム入社。投資信託のデータベースを活用した雑誌への寄稿、単行本執筆、テレビ解説を中心に活動。2004年9月 同社を退社し、JOYntを設立。雑誌への寄稿や単行本執筆のほか、各種プロデュース業を展開。