2009年はCFD取引が注目を集めることになりそうだ。といっても、今の投資環境は最悪。いきなり取引が急増するとは思えない。増えるのは参入業者だ。CMCマーケッツ・ジャパンやひまわり証券、SVC証券が先駆けで、これに12月からはオリックス証券、内藤証券、FXオンライン・ジャパン、そしてSBI証券も参入してきた。新規参入の動きは、2009年も続きそうだ。
CFDとは、Contract For Differenceの略で、差金決済契約などと訳されている。発祥はイギリスで、もともと機関投資家が保有銘柄をヘッジする目的で使われるようになったという。
差金決済取引という言葉から、おそらくFXの取引経験を持っている人なら、何となくピンと来るものがあるかも知れない。そう、商品性はFXとかなり近い。要は、一定額の証拠金をあらかじめ取引業者に預託し、それを担保に投資対象を売買するというものだ。さて、FXとCFD、どちらが投資家にとって有利なのか。
投資対象で比較すると、CFDの方が圧倒的に選択肢は多い。FXはあくまでも為替取引なので、投資対象の種類といえば通貨ペアの違いでしかないが、CFDは株式の個別銘柄、株価指数、債券、コモディティなど、さまざまな資産クラスにわたって、数1,000種類の投資対象がある。資産クラス別の分散投資を行うのであれば、CFDの方が有利だ。
コスト面では、FXの方が有利だろう。FX会社によってコスト体系は異なるが、取引手数料ゼロ、スプレッド1銭という、極めてローコストの業者もある。この手のローコスト業者と比べれば、CFDの方がコストは割高だ。
しかも、CFDは買いから入ると、金利相当分がコストとして上乗せされる。買いで金利相当分が上乗せされるということは、長期保有するほどコストが重くのしかかってくることになる。逆に売りの場合は、金利が入ってくる形になるが、「投資する」ということを前提にした場合、やはり買いから入るのが普通だ。買いで金利負担というコストが重くなる以上、長期投資には向かないということになる。
これに対して、FXなら外貨への長期投資が可能だ。もちろん、米ドルのようにゼロ金利政策の影響によってスワップポイントがゼロに限りなく近づいたり、あるいは米ドルの買いでマイナス・スワップ(つまりスワップポイントが差し引かれてしまう)になってしまったり、という場合は長期投資する意味がないが、ある程度の金利差があれば、買いで金利負担が発生するようなことはない。
あとは業者の信用リスク問題だろう。FXについては今年、場合によっては信託保全が義務化される可能性がある。仮に信託保全が義務化ということになれば、FX会社が破たんすることで、投資家が不利益を被るリスクは、かなりの程度まで低減される。
ただ、CFDの場合、まだこの部分が不透明だ。正直、FXでさえ投資家保護のルールが万全とは言えないのに、CFDになるとなおさらである。もちろん信託保全の義務化といった話も全くない。これは取扱業者にもよるだろうが、仮に取扱業者が破たんした場合、CFDを取引するために預託した証拠金が、戻って来なくなる恐れもある。もしCFDに興味を持ち、これから実際に取引を始めてみようと考えている人は、まず取扱業者の信用力をしっかりとチェックすること。または、最悪の事態に陥った場合、きちっと預託した保証金の返還が保証されるのかどうか、そのためのセーフティネットはきちっと用意されているのかどうかといった点も含めて、調べてからにした方が良いだろう。
今年はCFD元年。冒頭でも触れたように、さまざまな業者がこの分野に参入してくる。ちょうど、FXがブームになり始めた98年前後と同じ状況になるだろう。あの時、好ましくない業者が数多く参入し、さまざまな顧客トラブルが発生した。そのことを思い出して、慎重に対処するようにしたい。
執筆者紹介 : 鈴木雅光氏(JOYnt代表)
主な略歴 : 1989年4月 大学卒業後、岡三証券株式会社入社。支店営業を担当。 1991年4月 同社を退社し、公社債新聞社入社。投資信託、株式、転換社債、起債関係の取材に従事。 1992年6月 同社を退社し、金融データシステム入社。投資信託のデータベースを活用した雑誌への寄稿、単行本執筆、テレビ解説を中心に活動。2004年9月 同社を退社し、JOYntを設立。雑誌への寄稿や単行本執筆のほか、各種プロデュース業を展開。