まいど、"相場の福の神"こと藤本誠之です。この連載では、上場企業の経営者との面談から気づいた、藤本がすごいと思った、ユニークなビジネスモデルの企業をご紹介します。第12回は、『特売価格38円の激安豆腐で全国制覇』です。
今回ご紹介するやまみ(2820 東証ジャスダック)は、広島県三原市に本社がある豆腐の製造・販売会社です。食品卸会社からスタートしていますが、現在は豆腐関連製品の専業会社となっています。
圧倒的な設備投資でコスト競争力
同社は地盤である中国地方で新規事業として豆腐関連製品の製造・販売を始めたため、既に同業他社が、大手スーパーなどの販路を確保していました。そこでやまみは最先端の豆腐の製造ラインを製造機器メーカーと協業して、新たに開発します。結果、他社が1時間に2,000丁から3,000丁の豆腐を製造しているのに対し、1時間に1万丁から1万5,000丁を製造できるようになりました。
物流に関する投資も行い、同業他社より圧倒的に少ない人員での稼働を可能にしています。このことにより、同業他社に比較して、非常の強いコスト競争力を持つことができたといいます。このコスト競争力を武器に、後発メーカーながら戦略的な低価格での販売により、同業他社のシェアを奪っていったのです。
元々、豆腐業界は原油高などによるコスト高と、スーパーからの価格低下圧力から利益率が低い企業が多いのですが、圧倒的なコスト競争力を武器にやまみが参入したことにより、新たな設備投資ができずシェアを奪われた企業が多くあったそうです。
現在、中国地方では圧倒的なトップシェアを持つ企業となっています。低価格で販売しても、製造コストが低いので、2017年6月期実績で、売上高経常利益率は9.6%と食品製造業では非常の高い利益率を誇っています。
環境への配慮とコストダウン
豆腐を製造するときにできるおから。従来は産業廃棄物として処理していましたが、やまみでは、乾燥機でおからを乾燥させることにより、食のリサイクルを実施。乾燥おからを用いてペットトイレ用の「豆腐屋さんのネコ砂」や家畜用飼料などを製造しています。環境にやさしいエコロジー商品として注目されています。
おから乾燥機自体も、油揚げ・厚揚げを製造するときにでた「廃油」を燃料とすることにより、CO2を削減しています。
また、自社内で発生する廃棄物をメタン発酵のガス化により減量化するとともに、メタンガスを回収・脱硫しバイオマス燃料として消化汚泥乾燥の熱源に利用。最終余剰は製造工程のボイラー熱源にもすることで、CO2排出削減とゼロエミッション化を図る、自己完結型のバイオマス燃料製造設備も導入されています。
このように、環境への配慮も行うとともに、コストダウンも図り、他社との差別化も行っています。
関西進出から全国制覇
中国地方でトップシェアを確立できたことから、滋賀県甲賀市に関西工場を作って、関西市場にも参入しています。当初は苦戦したそうですが、徐々にシェアを高めて、工場の稼働率を高め、今年10月には、中国地方に近い売上高経常利益率となっています。
豆腐業界は、約6,000億円市場と言われ、非常に大きな市場規模があります。しかし、100億円~200億円程度の売上高の規模の会社はありますが、全国規模の会社はありません。
やまみは、日本最大の市場である関東地方への進出も検討しています。その後も、様々な地方への進出も検討しており、全国制覇の野望を持っています。山名清社長曰く、「豆腐業界の山崎製パンになりたい」そうです。パン業界では、圧倒的な全国規模の企業は山崎製パン1社で、その他の企業と比べて圧倒的な売上高・利益を誇っています。今後、やまみは、圧倒的な設備投資によるコスト競争力を武器に、一歩づつ全国制覇を目指すとのことです。
業務向けビジネスもスタート
また、もう一つの戦略として、外食企業、コンビニなどの中食向けの業務向けビジネスも2016年からスタートし、徐々に成果を出しつつあります。大手コンビニで販売されるおでんの厚揚げや、牛丼のすき家の牛すき鍋の豆腐などを提供しており、今後もコスト競争力、提案力を武器に大きく伸びそうです。
福の神の「ここがすごい」
企業間には様々な競争があるが、非常に苦しいのは価格競争だ。低利益率に甘んじる同業他社にとって、圧倒的な設備投資でコスト競争力を武器にシェアを奪うやまみの戦略は非常に対応が難しい。同様に価格を下げれば、元々低利益率なので赤字になり、既存の製造設備・人員を抱えているため、新たな設備投資に踏み切るのも難しい。やまみのシンプルな低価格戦略によって、全国制覇されるのも近い将来と考えられそうだ。
やまみ (2820)東証ジャスダック
■株式データ
株価 2,012円
単元株数 100株
予想PER(連)20.04倍
実績PBR(連) 3.13倍
予想配当利回り 0.99%
時価総額 約128億円
* 株価データは2017年12月15日終値ベース
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藤本誠之
「相場の福の神」と呼ばれる財産ネット株式会社の企業調査部長。 年間200社を超える上場企業経営者とのミーティングを行い、個人投資家に真の成長企業を紹介している。「まいど!」のあいさつ、独特の明るい語り口で人気。日興證券、マネックス証券、カブドットコム証券、SBI証券などを経て、現在は、財産ネット株式会社の企業調査部長。ラジオNIKKEIで4本の看板番組を持ち、その他テレビ出演、新聞・雑誌への寄稿も多数。 日本証券アナリスト協会検定会員、ITストラテジストAll About株式ガイド。 著書:『難しいことは嫌いでズボラでも 株で儲け続けるたった1つの方法』(SBクリエイティブ)など合計15冊