裁量トレードとシステムトレード

これはFXに限った話ではないのですが、トレードには2つのタイプがあります。ひとつは「裁量トレード」。恐らく皆さんの多くは、無意識かと思うのですが、こちらの方法でトレードしているはずです。そして、もうひとつの方法が本稿のメインテーマになる「システムトレード」です。何が、どう違うのでしょうか。

裁量トレードは、通貨の売買をする際に、自分の裁量で行う方法です。たとえば、「チャートから見て今の位置ならばドルを買うタイミングではないか」とか、「日本の貿易収支が単月で赤字になった。いよいよ円安が本格的に進むからドルを買っておこう」というように、ファンダメンタルズやチャートなどの判断材料をベースにして、自分でどの通貨を買うのか(あるいは売るのか)、いつトレードするのかといったことを、あくまでの自分の判断に基づいて行います。

一方、システムトレードは、あらかじめ決められたルールにしたがって、機械的に売り買いを行います。その判断基準としては、テクニカル分析を用いるケースが多く、たとえば「RSIが70%を超えてきたら売り、30%を割り込んできたら買い」というように、いくつかのテクニカル指標をベースにして売買ルールを決め、それに忠実に従ってトレードしていきます。もちろん、経済成長率やインフレ率、雇用統計など、ファンダメンタルズ指標を用いた場合でも、あらかじめ決められたルールに従ってトレードをするのであれば、それもシステムトレードに含まれます。

要するに、投資家個人の裁量を排除して、一定のルールに基づいて機械的にトレードをするのが、システムトレードの特徴です。

裁量トレードとシステムトレードの違いを把握して、自分に合った方を選ぶようにしよう

裁量トレード・システムトレードのメリットとデメリット

トレードの方法に100パーセント完璧なものはありません。いずれも一長一短で、どこかに必ず欠点があります。その欠点を意識することが、トレードで勝つためのポイントでもあります。

裁量トレードの場合、個人の判断ミスがパフォーマンス低下に大きく影響します。売り買いの判断を自分で下すわけですが、どのような環境においても適格な判断を下せる人は、そう多くありません。その時々の体調によって、判断能力が低下している場合だってありえます。すでに大底圏に入っているのに、「もっと下があるはずだ」などという考えが一瞬よぎってしまったがために、絶好の買い場を逃してしまったり、天井をつけているのに「まだまだ上がる」などと考えてしまったがために、絶好の売り場を逃してしまったりというケースは、枚挙に暇がありません。

もっと言えば、マーケットの動きから受けるストレスが、正常な判断に悪影響を及ぼすケースも考えられます。自分の保有資産に対して過大な損失を被ると、「何とかしてこの損失を取り戻さなければ」という気持ちが働き、冷静な判断を下せなくなってしまう恐れが生じてしまうのです。裁量トレードは、トレードの経験値が高く、過去のパターンを知り尽くしており、相場につきものの「恐怖と欲望」をきちっとコントロールできる人でなければ、なかなか成功するものではありません。

システムトレードは、こうした投資家個人の裁量をベースにした判断ミスを出来るだけ回避するために考えられた手法です。過去のさまざまなデータから、客観的な売り買いのシグナルが発信されるので、あとはそれに従ってトレードするだけ。自分自身の裁量が介在しないため、冷静さを失って的確な判断を下すことができず、それが損失につながってしまうというミスを、最小限に抑えることができます。

もちろん、システムトレードにもマイナス面はあります。それは、これまでに無かったような動きをした場合、システム的確にシグナルを発せられなくなる事態が考えられるのです。たとえば、2008年10月後半にかけて、国内外の株価は大きく下落しましたが、この時の値動きの幅は、もはや過去のデータをベースにして組んだシステムでは、とても対応できないほどのものでした。

また、自分が使っているシステムをどこまで信じられるのかという問題もあります。システムが常に正しい解を出す保証はありません。マーケットにはダマシもありますから、買いのシグナルが出ているにも関わらずさらに下げてしまう、逆に売りのシグナルが出ているのに上昇してしまうというケースが起ることもあります。1回や2回の間違いであれば大丈夫なのでしょうが、それが数回も続くと、多くの投資家は疑心暗鬼になってしまい、システムそのものを信じられなくなってしまいます。

でも、そこで自分の判断を加えてトレードしてしまうと、それはもはやシステムトレードではなく、ただの裁量トレードになります。あらかじめ決められたルールを守ってこそ、システムトレードなのです。

最近は、さまざまなシステムトレードのソフトが登場しています。FXCMジャパンのように、FX会社としてシステムトレードのツールを顧客向けに提供するところも出てきました。これからはシステムトレードが、個人のFXトレーダーの間でも話題になっていきそうです。

提供 : FXCMジャパン

国内の個人資産が、貯蓄から投資へと向かう中で、世界ではインフォメーション・テクノロジーと金融が同時並行的に発展しています。こうした環境変化を背景に、個人投資家がグローバルな外国為替市場へアクセスできるFX(外国為替証拠金取引)が発展してきました。
FXCMジャパンは2001年、市場の黎明期から事業を開始し、徹底した取引コストの低減として、他社に先駆け取引手数料を0円にするなど、先進的な取り組みを通じて、FXの発展を支えてきました。また、2008年6月11日には、拡大する事業規模に見合うよう、それまでの保全信託スキームを刷新し、お客様の資産保全の安全性と、カバー取引における流動性を両立した取引環境を実現しました。更に、2008年12月8日より、取引手数料無料のシステムトレード、らくちんFXの取り扱いを開始し、お客様へ提供する取引環境の拡充を図っております。取引手数料無料のシステムトレード、らくちんFX。詳しい情報はこちらから。

執筆者紹介 : 鈴木雅光氏(JOYnt代表)

主な略歴 : 1989年4月 大学卒業後、岡三証券株式会社入社。支店営業を担当。 1991年4月 同社を退社し、公社債新聞社入社。投資信託、株式、転換社債、起債関係の取材に従事。 1992年6月 同社を退社し、金融データシステム入社。投資信託のデータベースを活用した雑誌への寄稿、単行本執筆、テレビ解説を中心に活動。2004年9月 同社を退社し、JOYntを設立。雑誌への寄稿や単行本執筆のほか、各種プロデュース業を展開。