日本人の死亡原因の1位が圧倒的にガン
今や男性は2人に1人、女性は3人に1人ががんにかかるといわれています。日本人の1年間の死亡者数は約100万人ですが、そのうち3割がガンによって亡くなっており、2位の心疾患(約15%)、3位の脳血管疾患(約11%)に比べ、圧倒的に多いことがわかります。
また、入院した場合の1日あたりの平均自己負担額は2万100円(※1)ですが、ガンの場合、子宮ガンが約4万1000円、胃ガンが3万8000円、肝・肝内胆管のガン、乳がん3万6,000円(※2)など、一般的な入院に比べて、費用がかかることがわかります(それぞれ高額療養費の給付は考慮せず)。生命保険全体の加入率が下がる中、がん保険の加入率だけは上がっているのもうなずけます。
※1生命保険文化センター「平成19年度生活保障に関する調査」。高額療養費による払い戻し前の金額
※2厚生労働省「平成19年社会医療診療行為別調査」を基に試算
通院や先進医療による治療。旧来の医療保険ではカバーしづらい
ガンの場合、ガンと診断されたからといって、すぐに入院・手術になるとは限りません。最近は、通院による投薬治療法が進み、特に早期発見の場合、入院せずに毎日病院に通うことで、抗ガン剤を打って治療するケースが増えています。そうなると、入院・手術をすることで初めて給付金を受けられるタイプの医療保険では、治療費をカバーできないことになってしまいます。また、入院・手術した場合も、退院後に長期にわたって通院をしながら、家庭で療養を続けることも起きがちで、そういった療養費も医療保険ではカバーしにくいといえます。
また、健康保険の対象外の治療法が多いのもガン治療の特徴。先進医療と呼ばれるものもその一つで、たとえば、「悪性腫瘍に対する陽子線治療」の場合、平均費用は約285万円、「重粒子線治療」は約308万円がかかります。これを自己負担するとなると、誰もが選択できるというわけにはいかなくなります。こうした治療も旧来の医療保険では、カバーしにくくなっています。
「診断一時金」などガン保険独特の保障内容
上記のように、ガンの場合、診断されても即、入院するとは限りません。そのため、ガン保険の場合、がんと診断されると、入院や手術の有無にかかわらず、「診断一時金」が給付されるのが大きな特徴となっています。その金額は一般的には100万円が多いですが、ただ、「上皮内新生物」の場合と「悪性新生物」では、給付金に差がつくといったタイプのガン保険もあります。これについては、フルで給付金が出るタイプのほうがよいですが、両者では治療費が大きく違うのも確か。保険料を見て検討をするといいでしょう。 またがんの場合、再発や転移が心配。2度目以降の診断でも、診断一時金が給付されるかどうかも大事。これについては、1回しか給付がないところもありますが、2年に1度を限度に回数無制限という場合も多いです。できれば、回数無制限の保険を選んだほうが安心でしょう。
入院給付金は日額1万円が標準。手術給付金は、入院給付金1万円の場合、20万円一律、あるいは手術の内容によって、10万円、20万円、40万円など、内容にバラつきがあります。また、退院後に退院療養給付金や通院給付金が出るかどうかもチェックポイント。ガンの場合、先ほども紹介したように退院後の通院治療がメインになることが多いからです。 またガン保険は、1入院の支払限度日数と入院通算支払限度日数が無制限なのが特徴です。
先進医療特約は上限1,000万円の保障が一般的
がん治療につきものの先進医療については、特約としてつけられるのが一般的。特約保険料としては割安ですので、余裕があれば付加するといいでしょう。保障内容としては、上限1,000万円というケースが多いですが、交通費まで含んだり、年5回までと回数制限があったり、よく見るとその中味は保険会社によって違いますので、どうせ加入するならよく調べて納得のいくものを選択しましょう。
最後に、ガン保険は、保険期間が始まってから90日間、不てん補期間という待機期間がほぼ必ずありますので、注意が必要です。これは、契約しても実際に保障が受けられるのは90 日後以降というもの。加入して1カ月後にガンがみつかったとなっても、保障は受けられませんので、その点も加入前にきちんと理解しておく必要があります。
監修 :
家計の見直し相談センター代表取締役。
ファイナンシャルプランナー 藤川太さん
「サラリーマンは2度破産する」(朝日新聞出版)はベストセラーに。貯蓄、投資、保険、家計管理と幅広いアドバイスとその鋭い指摘にファンは多い。
(経済ジャーナリスト 酒井富士子)