では、新築住宅の住宅ローンの借入額(返済期間35年・金利1%全期間固定・元利均等)を、2000万円と2050万円(丸太価格を倍にした場合)で比較してみよう。
計算すると、2000万円の住宅のローンは56,457円/月となる一方、2050万円では57,868円/月で、月あたりの差額は1,411円である。月々1,411円のメリットを訴求できれば、丸太価格を2倍近くにすることだって論理的には可能で、林業を補助金頼みから脱却させるのも夢ではないのではなかろうか。
日本林業の持続可能なモデルが若干理解できはじめたかもしれないが、現実はそんなに甘くない。おそらくだが、住宅が50万円も高くなるというのに、キッチンの仕様やトイレもグレードアップしないということに不満を漏らす声が聞かれそうだ。さらに、日本の建築業界におけるトレンドが真壁から大壁に移り変わったことによって、余計に目に見えない木材のことを考えなくなった。鉄骨造・RC造・木造の中から木を選択したにも関わらず、だ。
しかし、問題はそこだけではない。業界の構造にもある。
多くの事業者が絡む木材流通特有の課題とは
多くのステークホルダーが存在する木材流通では、値上げ分のお金が施主から森林所有者まで辿り着くまでに多くの中間業者が介入し、マージンが引かれていくのだ。これは業界構造の問題でもあり、お金の流れがブラックボックス化しているため、正しく読み取れない。
これらを考えると、日本の林業を憂いて森林所有者のために払ったお金であっても、それが木材の源流にいる森林所有者に届くことはほとんどないと思われる。
では、日本林業の経済的な自立のためには、どのようなモデルを構築すべきなのだろうか。次回は、筆者が考える林業の理想モデルについて述べたいと思う。