被災すると肉体的・精神的な疲労やダメージが大きく、さらに経済的な困難が重なるとより困窮してしまいます。そこで国は被災者向けに支援制度を用意しており、税金や保険料などの軽減・免除を受けられます。

今回は住民税や健康保険料などの軽減・減免制度について、分かりやすくご紹介します。 万が一の際はうまく活用して、少しでも経済的なダメージを減らしましょう。

地方税の軽減・免除

被災した場合、地方住民税の支払いの軽減または免除を受けられます。具体的には住民税・固定資産税・自動車税などです。

また支払いを猶予してもらったり、期限を2カ月延長してもらったりすることもできます。

たとえば令和2年7月豪雨に関して熊本県八代市では、所得金額と損害の程度に応じて、以下のように個人の市県民税が減免されました。

  • ※被保険者が死亡した場合は全額免除、障害を負った場合は9/10免除

減免される割合や適用となる条件は、地方自治体によって異なります。お住まいの市区町村で、住民税や固定資産税などを担当する部署に問い合わせましょう。

たとえば大阪市の場合は梅田市税事務所やなんば市税事務所などです。

軽減や減免の適用を判断するには、自治体が実地調査を実施したうえで認定を受けることになります。

国税の軽減・猶予

地方税に加え、国税についても軽減の制度があります。具体的には所得税や源泉所得税などについての軽減、徴収猶予、申告期間の延長などです。

たとえば所得税の場合、災害で住宅や家財が損害を受けると、所得税が軽減されます。具体的な要件は下記のとおりです。

・被災した年の所得が1,000万円以下
・災害によって受けた損害額が住宅または家財の価額の2分の1以上
・雑損控除の適用を受けない

所得額に応じて、以下のように所得税が減免されます。

・500万円以下:全額免除
・500万円超750万円以下:1/2免除
・750万円超1,000万円以下:1/4免除

国民健康保険料、介護保険料などの減免・猶予

国民健康保険料や介護保険料などについても、被災による減免や支払い猶予の制度があります。

たとえば平成28年の熊本地震では、世帯主が地震により死亡や行方不明等の場合、全額減免となりました。また住宅が全壊の場合も全額免除、半壊または大規模半壊の場合は50%免除です。

先ほどの地方税と同じく、適用を受けるための条件や減免の割合については、自治体・保険組合などによって大きく異なります。お住まいの地域の市役所・区役所・健康保険組合などに問い合わせましょう。

公共料金・使用料の軽減・免除

電気・ガス・水道といった公共料金についても、被災すると軽減や免除の制度の対象になります。

平成30年に北海道で発生した胆振東部地震について、北海道電力では下記のように支払いの猶予・免除を実施しました。

・電気料金の支払い期限を1カ月延長
・被災した月の翌月から6カ月間について、電気を全く使用しなかった月の料金を免除
・新たに電気使用を申し込む場合の工事費負担金を免除
・再建などのために臨時の電気使用を申し込む場合、臨時工事費を免除
・復旧まで使用不能となった電気設備について、被災日から2019年3月までの間、基本料金を免除
・引込線、計量器などの取付位置の変更の際、それに伴う諸工料を免除

軽減や減免の内容は、供給会社によって異なります。

その他の経済的な支援

税金、保険料、公共料金の免除に加え、以下のような制度もあるので簡単にご紹介します。

・住宅が全壊等した世帯に対して、生活に必要な物品の購入費や引越費用等を支給
・災害により被害を受けた住宅の所有者が、住宅を建設する場合に融資を実施
・被害を受けた住宅の補修、保全、増築、改築等に必要な経費を貸付
・低所得の被災者の方は、都道府県又は市町村が整備する公営住宅に入居が可能
・被災した住宅の居室、キッチン、トイレなど日常生活に必要な最小限度の部分を応急的に修理

災害時に支援をスムーズに受けるには情報の入手が重要

災害時の支援策は意外とたくさんあると感じた方もいるのではないでしょうか。被災による損害を全て埋めることはできませんが、使える制度はできる限り利用することで、精神的な安定にもつながります。

支援は災害が発生して少し経ってから始まりますが、情報が入らないと利用できません。ご近所の方とコミュニケーションを取る、自治体の情報をチェックする、ラジオを付けるなどして、情報を積極的に入手しましょう。