イワシ。私たち日本人にとって最もポピュラーな魚の1つである。しかし、それ故に"イワシの偉大さ"を見落としがちではないだろうか。イワシにはコレステロールを低くしたり、脳を活性化する働きがあるといわれているEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)、さらにはカルシウムも豊富に含まれいる。そうなのだ、イワシはヘルシーなのだ。「せっかくのヘルシー食材だから、とことん健康志向で」ということで、今回は和食メニューにこだわった。
釣りライターが行っていたのは千葉・木更津の沖堤防。釣れたのはイワシのなかでもトウゴロウイワシと呼ばれる種類だ。イワシだけで約20匹と数はあるのだが、全長10cm強と小ぶりなものが多い。どう料理しようかと悩んだが、とにかく新鮮でキラキラと輝いているイワシをみて、まずは生でいただく「なめろう」をつくることにした。
なめろうは、千葉の海岸地方の郷土料理。イワシの他、新鮮なアジやサンマなどを使い、味噌や薬味と一緒に包丁で叩いて合わせたものだ。この企画は毎回、後輩編集者のYちゃんがアシスタントをしてくれていて、今回もイワシのウロコを取って3枚おろしにして……と2人でするのだが、小ぶりなイワシばかりなのでいくらさばけどなかなか目標量に達しない。
「魚をさばくのって楽しいですよね~」とルンルンで作業をしていたYちゃんも次第に無口になって行き、最後のほうは2人共に魚おろしマシーンと化して、ただ黙々と作業を続けていた。しかし、頑張った甲斐あってなめろうは絶品! 小骨が残っている危険があったのでやや細かめに仕上げているが、新鮮な魚ならではのプリッとした食感は残っていて、かなりの傑作だった。
なめろう
材料
イワシ / 長ネギ / 生姜 / 合わせ味噌 / 大葉
つくり方
1.イワシはうろこを取り除き、3枚におろす。今回は手開きで。2.包丁でイワシをたたく。小骨を気にせず安心して食べられるよう、やや細かく仕上げる。
3.細かく刻んでおいた長ネギと生姜、合わせ味噌を3のイワシと一緒に包丁で軽くたたきながら合わせていく。大葉を敷いた器に盛り付けたら完成。
なめろうの味付けには、醤油や日本酒などを使うことが多いが、今回合わせ味噌を加えた時点で味をみると、このままで十分! シンプルな味付けなので、イワシの味わいが引き立っていた。次につくるのはつみれ汁。これまたさばくのが大変ではあるが、「薄味のだし汁と合わせるにはやはり新鮮な魚のつみれがよい」ということで、再び黙々と2人してイワシの手開きに取り掛かった。
イワシのつみれ汁
材料
イワシ / 塩 / 長芋 / 長ネギ / 生姜 / だし汁 / 三つ葉 / 白髪ネギ
つくり方
1.イワシのうろこを取り除き、3枚におろす。2.すり鉢にイワシを入れ、すりこぎですり身状になるまですりつぶしていく。
3.長芋のすりおろしを2に加える。
4.さらに、細かく刻んでおいた長ネギと生姜を加えて、軽くすりこぎで合わせる。
5.鍋にだし汁を入れて熱し、4のすり身をスプーンで落とし入れる。つみれが浮いてきたら火が通ったサイン。椀にだし汁と共に入れ、三つ葉と白髪ネギをあしらう。
つみれには長芋のすりおろしを入れているので、口に入れた瞬間ふわっととろけるようにやわらか。ひたすら手開きを続けていくのは非常に辛かったが、これら2品のおいしさでその苦労も報われた。ヘルシー食材であり、美味しさも兼ね備えているイワシ。うん、やっぱりイワシは偉大なのだ。