手長エビを釣ってくる」。そう釣りライターから言われ、「スカンピが食べられるの!?」と心が躍った。スカンピはイタリアでは欠かせないもので、日本では手長エビや赤座エビの名前で知られる高級食材だ。「パスタにしてもグリルしてもおいしんだよな~」ととろける私に向かってライターは、「どこの川がいいかな」という。えっ、スカンピは海で獲れるのでは……。

ライターのいう手長エビは、川エビのことだった。その名の通り、川に生息するエビのことだ。スカンピとはまったくの別物である。ぬー。"スカンピでパスタ! "という野望は潰えてしまった。

こちらが川に生息する手長エビ。その名の通り、手が長い

思い描いていたイタリア食材ではなかったが、居酒屋で食べた川エビの唐揚げは香ばしくておいしかった。「落胆することでもないじゃないか」と自らを慰めた。手長エビ……。殻ごといただくには、やはり揚げなければいけない。サクサクとした食感を楽しむにはやはり、唐揚げがおすすめだ。しかし調理に入る前に、下処理の必要がある。最初にこの方法を解説しよう。

手長えびの下処理法

材料
手長エビ / 水 / 日本酒(紹興酒でも可) / 塩
1.まず泥抜きを。水道水やミネラルウォーターに生きたまま手長エビを入れ、しばらくの間放置しておく。そうすると、驚くほど水が汚れてくる。次に手長エビをフタのできる容器に移す。
2.臭みを取るために、酒を加える。ここでは日本酒を使用しているが、あれば紹興酒もオススメ。ゆっくりと注いでいるとエビが大暴れして酒が飛び散るので、素早く注ぎ入れ、蓋をしてエビが静かになるまで待つ。
3.エビが動かなくなったら酒を捨て、次に塩を入れる。容器を揺すってエビ全体に塩がいきわたるようにする。こうすることで、ヨゴレや臭みを取ることができるのだ。水洗いをしたあと再度塩を加えて……とこの作業を2、3回繰り返す。
4.水洗いしたエビは、キッチンペーパー等でしっかりと水気を取っておこう。

これで川エビ特有のにおいも消えているはず。いよいよ本格的な調理に入っていくとしよう。1品目は定番料理、唐揚げだ。2品目には同じ揚げ物ではあるが、おかずになるようかき揚げをつくってみた。唐揚げには大きめのものを、かき揚げには小さめのものを使うとよいだろう。

手長エビの唐揚げ

材料
手長エビ / 片栗粉 / 油 / レモン / 塩

つくり方

1.下処理をした手長エビ(水気をしっかりととったもの)に片栗粉をまぶす。
2.油を中温にまで熱し、余分な粉を落とした手長エビを入れて揚げる。カラッと揚げるためには二度揚げがオススメ。レモンや塩でどうぞ。

手長エビのかき揚げ

材料
玉ネギ / ニンジン / 大葉 / 天ぷら粉 / 水 / 手長エビ / 油 / レモン / 塩

つくり方

1.玉ネギは薄くスライス、ニンジンは千切り、大葉は細切りにしておく。
2.ボウルに天ぷら粉と水を入れて軽くかき混ぜ、1の野菜と下処理をして水気をきった手長エビを入れ、ザックリと混ぜ合わせる。
3.中温に熱した油にスプーンを使って2を入れ、揚げる。キツネ色に揚がったら完成。手長エビの香ばしさを楽しむなら天つゆではなく、塩やレモンでいただきたい。

朱色に揚がった手長エビは、見た目にもおいしそう。この連載、1回目から揚げ物が続いているが、手長エビは殻のままいただきたいので、今回も揚げ物2品を紹介した。すると先輩編集者から、「揚げ物ばっかりじゃん」との突っ込みが入った。痛いところをついてくる。「次こそは、脱・揚げ物!! 」と宣言しつつ、ビールと共に今回の2品をおいしくいただきました。ごちそうさま。