クレジットカードの年会費は、無料のものから10万円を超えるものまで、非常に大きな差がある。基本的に年会費の高いカードは、それ相応のサービスが付帯しており、わかりやすいところではゴールドカードの空港ラウンジサービス、プラチナカードのコンシェルジュサービスなどが挙げられる。ほかにもカードに付帯したサービス内容を見れば、何が年会費を高くしている原因か、だいたいは想像がつくだろう。
付帯サービスは細かいものまで含めると無数にあるため、ここでは見落としがちなものを中心に、年会費が無料と有料の場合で差がつく要素を紹介したい。以下のサービスは年会費が無料だからといって、すべてが非対応というわけでもなく、逆に有料でも非対応な場合もあるが、全体的な傾向として捉えてほしい。
紙の明細書
クレジットカードは毎月利用明細が発行されるが、年会費無料のカードでは紙の明細が発行されず、WEBで確認するタイプが多い。年会費有料のカードでも、WEB明細を申し込んで紙の明細発行を停止すると、年会費が無料になったり、割引を受けられたりすることもある。
つまり、紙の明細送付が不要な人は、年会費を安く抑えられる可能性があるということ。明細をPDFやCSVでダウンロードできるカード会社もあるので、紙でほしいが自分で印刷すれば問題ないという人は、データ形式も確認するといいだろう。
旅行傷害保険・ショッピング保険
旅行傷害保険やショッピング保険は、年会費が高いカードほど補償内容が充実するが、年会費無料のカードでは保険自体が付帯していないことも多い。ただし、年会費無料でも付帯しているカードはあるので、必要な場合は保険目的のカードを別に作って保有することを検討してもいいだろう。
なお、旅行傷害保険には、カードを持っているだけで適用される「自動付帯」と、所定の旅行代金をカードで支払わなければ適用されない「利用付帯」がある。年会費無料カードの旅行傷害保険は「利用付帯」の場合が多いので、適用される条件をしっかり確認しておくことが大切だ。
ポイント還元率
基本的に同じ会社が発行しているものであれば、年会費が高いカードほどポイント還元率は高くなる。利用額によっては、年会費の差額分以上にポイントが貯まる場合もあるので、しっかり計算してから申し込むカードを選ぼう。
ただし、A社の年会費無料カードは還元率0.5%、年会費5,000円のカードは還元率1%だったとしても、B社の年会費無料カードは還元率1.2%というようなこともある。もちろん付帯サービスなどの違いはあるが、還元率だけで考えるなら、年会費よりもカード会社の違いのほうが大きい。
ここからは年会費無料と有料の違いというよりは、一般カード(主に年会費無料〜1,000円前後)とゴールドカード(主に年会費2,000〜1万円前後)の違いを紹介する。こちらも例外となるケースは多々あるので、あくまで参考として読んでほしい。
利用限度額
クレジットカードの利用限度額は審査によって決まるが、一般カードは審査に問題がなくても50〜100万円程度が上限となる場合が多い。一方でゴールドカードは200〜300万円程度が平均的な上限となる。ただし、一般カードであっても、事前に申請して審査に通れば、一時的に限度額をアップさせることは可能。日常的に高額な支払いをする人以外は、限度額のためだけにゴールドカードを持つ必要はないだろう。
なお、アメリカン・エキスプレスとダイナースクラブが発行するカードは、限度額に一律の制限がなく、審査や利用実績を基に会員1人ごとに限度額が設定されている。年会費は前者が最低でも7,560円、後者は最低でも2万3,760円となる。
リボ払い・キャッシング手数料
一部のゴールドカードは、一般カードと比べてリボ払いやキャッシングの際に発生する手数料率が低く設定されている。リボやキャッシングの手数料は返済期間によって大きく変わるため、年会費を払ってでも手数料率が低いカードを選んだほうがいいのか、しっかり検討する必要があるだろう。
また、前述したポイント還元率と同じように、A社の一般カードは手数料率が15%、ゴールドカードは12%だったとしても、B社は一般カードで10%というような例もあるし、初月手数料無料の一般カードもある。手数料率だけでなく、サービス全体を比較して、自分に合った1枚を見つけることが大切だ。
カードデスク
カード利用に関する問い合わせ窓口となるデスク(コールセンター)は、一般カードでは自動音声案内となることが多い。オペレーターとの通話を希望する際は、混雑時だと10分近く待たされる場合もあり、特に0570で始まる有料のナビダイヤルしか用意していないデスクだと、通話料もバカにならない。
しかしゴールドカードでは、一般会員とは別にフリーダイヤルの専用デスクが設けられ、最初からオペレーターにつながるものが多い。普通にカード利用をしている分には、デスクに問い合わせる機会はない人がほとんどだと思うが、少しでも時間を節約したい人には役立つサービスだ。
再発行手数料
カードを紛失したり、盗難の被害に遭ったりした場合、一般カードは再発行に手数料(500~1,000円が一般的)が必要だが、ゴールドカードでは無料になることが多い。また、海外での紛失・盗難で緊急再発行をすると、カードによっては1万円程度の手数料が必要になる場合もあるが、これもゴールドカードなら無料となる。
こちらも滅多に利用する機会はないと思うが、いざというときに安心できるサービスと言えるだろう。なお、磁気テープやICチップの不良でカードが使えなくなった場合は、基本的に無料で再発行してもらえる。
追加カード
年会費無料のカードなら家族カードも無料だが、年会費1,000円前後のカードでは家族カードの年会費は数百円となることが多い。ゴールドカードでは、家族カードは1枚まで無料、2枚目以降も格安の場合が多いので、複数人で使うなら1枚あたりの単価で計算したほうがいい。
また、ETCカードの追加発行は、一般カードの場合は年会費が有料だったり、発行時に手数料が必要だったりするものもあるが、ゴールドカードは多くが無料。ただし、ゴールドカード自体の年会費は必要だ。
どちらにせよゴールドカードのほうが維持費はかかるうえ、家族カードもETCカードも無料で持てる一般カードもあるが、追加カードを発行するならゴールドカードと一般カードの年会費差は小さくなるので、比較材料のひとつとして覚えておくといいだろう。
以上、年会費無料カードと有料カードの違い、一般カードとゴールドカードの違いを紹介したが、最近は一定額以上利用すると、年会費が無料となる条件が設けられたカードも増えている。また、ゴールドカードのなかにも、年間利用額の条件を満たすと年会費が無料になるカードもある。必要なサービスを見極め、自分の利用状況と照らし合わせて、最適なカードをチョイスしよう。
■ 筆者プロフィール: タナカヒロシ(ライター・編集者)
普段は音楽やエンタメ関係の仕事が多いが、過去に勤めていた会社の都合でクレジットカード本を作ったことをきっかけに、クレジットカード、電子マネー、ポイントなどに詳しくなる。以降、定期的にクレジットカードのムック本を編集・執筆。3月8日発売の『最強クレジットカードガイド2017 本当にトクするカードの選び方・使い方=写真=』(角川SSCムック)では、編集統括および記事の大部分を執筆している。