クレジットカードを申し込む際は、国際ブランドを選択できる場合も多いが、よく知らないからといって適当に選んでしまうと、あとで困ってしまうこともある。今回は国際ブランドについての基礎知識を紹介したい。
日本のクレジットカードの国際ブランドは6種類
国際ブランドとは、VisaやMastercardなど決済ネットワークのブランドのこと。通常、1枚のカードで利用できる国際ブランドは1種類のみで、Visaであれば世界中のVisa加盟店で、Mastercardであれば世界中のMastercard加盟店で利用できる。
日本で発行されているカードには、前述のVisaとMastercardのほか、日本発のブランドであるJCB、富裕層に利用者が多いアメリカン・エキスプレスとダイナースクラブ、中国を中心に普及している銀聯(ぎんれん)の6種類がある。選択できる国際ブランドはクレジットカードごとに異なり、1種類にしか対応していないカードもあるが、それぞれの特徴は選ぶ前に知っておいたほうがいいだろう。
1枚目はVisaかMastercard
まずは加盟店数、すなわち使える店の数は、二大国際ブランドと呼ばれるVisaとMastercardが突出して多い。JCBは日本国内および日本人の多い海外都市では使える場所も多いが、それ以外では二大ブランドに比べて大きく劣る。アメリカン・エキスプレスとダイナースクラブはJCBと提携しており、国内では基本的にJCB加盟店でも使えるが、世界的に見れば二大ブランドには大きく及ばない。銀聯は中国および中国人観光客が多い地域で利用できる。
そのため、1枚目に持つクレジットカードとしてはVisaかMastercardが無難。国内でしか利用しないのであれば、JCB、アメリカン・エキスプレス、ダイナースクラブでもいいが、一部でVisaかMastercardしか利用できない店もある。
VisaとMastercardの加盟店数は大きくは変わらないが、「世界で最も多くの場所で使える」と宣伝しているのはMastercard。決済件数の世界シェアではVisaがナンバーワンとなる。ちなみに会員制スーパーのコストコはMastercardのみしか利用できない。喫茶店のルノアールはMastercard、JCB、アメリカン・エキスプレス、ダイナースクラブは使えるが、Visaは利用不可。また、Apple Payのオンライン決済もMastercard、JCB、アメリカン・エキスプレスの3ブランドにしか対応していない(店舗での決済はVisaでも可能)。
ブランドごとに優待やキャンペーンがある
クレジットカードにはカード会社が提供するサービスと、国際ブランドが提供するサービスがある。加盟店の数だけ見ると、VisaかMastercardさえあればいいのではないかと思う人もいるかもしれないが、国際ブランドが提供するサービスも考えると、複数の国際ブランドのカードを持っておいたほうがいい。
国際ブランドが提供するサービスとしては、国内外の観光地での優待、海外旅行時の手荷物宅配やWi-Fiレンタルの割引などが主要なもの。随時キャンペーンも行われている。JCB、アメリカン・エキスプレス、ダイナースクラブに関しては“T&Eカード”とも呼ばれており、旅行(トラベル)や娯楽(エンターテインメント)の分野に強いことで知られる。
1枚は持っておきたいJCB
そのなかでも唯一の日本発の国際ブランドであるJCBは、できれば1枚は持っておきたい。世界約60カ所に設置された海外サービス窓口の「JCBプラザ ラウンジ」と「JCBプラザ」が利用可能で、日本語が話せるスタッフによる観光情報の案内、レストランなどの予約手配、カード紛失・盗難時のサポートが受けられ、Wi-Fiも無料で利用できる。世界9都市にある「JCBプラザ ラウンジ」なら、ドリンクサービスや傘のレンタル、荷物の当日中一時預かりサービスなどもある。また、渡航前に「JCBプラザコールセンター(日本)」に電話をすれば、JCB加盟店のレストラン、エステ、オプショナルツアーなどの予約手配も無料で代行してくれる。
国内においても、スポンサーをしている東京ディズニーランド、東京ディズニーシー、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン、キッザニアへの招待企画も毎年実施。抽選のため簡単には当たらないが、JCBのカードを持つなら申し込んでおいて損はない。
ブランドごとに為替レートが異なる
海外でクレジットカードを利用した際は、それぞれの国際ブランドのネットワークを通して決済が行われるが、その際に基準となる為替レートは国際ブランドごとに異なる。そのため、現地通貨では同じ金額の買い物でも、日本円での金額は同じではない。気にするほどの差ではなく、日によって最得な国際ブランドも異なるが、マニアの間ではMastercardのレートがいい傾向にあると言われている。
しかし、それ以上に大切なのは、ポイント還元率や海外事務手数料である。実際の支払いでは、国際ブランドが採用している基準レートに対して、カード会社ごとに定められた海外事務手数料(カード会社ごとに名称は異なる)が発生する。各社2%前後に設定している場合が多く、たとえば基準レートが1ドル=100円の場合、海外事務手数料が2%なら実際の支払いは102円。しかし、同じMastercardであっても、三菱UFJニコスが発行するカードは2.16%で、イオンカードは1.6%と幅はある。ポイント還元率も含めて、総合的に判断することが好ましい。
結論としては、Visa、Mastercard、JCBに関しては、年会費無料のカードも多数発行されているので、各1枚ずつは持っておくことをオススメする。ただし、短期間に続けて申し込むと、不正な目的を疑われて審査に落ちてしまう場合もあるので、ある程度期間を空けて(できれば信用情報機関から申し込み履歴が消える半年以上)から申し込んだほうがいい。旅行前に慌てて申し込むハメにならないように、余裕を持って準備しておこう。
■ 筆者プロフィール: タナカヒロシ(ライター・編集者)
普段は音楽やエンタメ関係の仕事が多いが、過去に勤めていた会社の都合でクレジットカード本を作ったことをきっかけに、クレジットカード、電子マネー、ポイントなどに詳しくなる。以降、定期的にクレジットカードのムック本を編集・執筆。3月8日発売の『最強クレジットカードガイド2017 本当にトクするカードの選び方・使い方=写真=』(角川SSCムック)では、編集統括および記事の大部分を執筆している。