厳しい環境で使いやすい製品
フィンランドでは携帯電話はどのようにして販売されているのだろうか? 実際にヘルシンキの繁華街を回ってみることにした。市内は地下鉄、バスが多数走っており移動は楽だが、ゆっくりと外を見ながら移動できるトラムがお勧めだ。
さて街中には独立系の携帯電話ショップはあまりなく、通信事業者の直営店が多いようだ。いくつかの店舗に入ってみると置いてある端末はやはりNokiaが目立つ。固定契約を結ぶことで端末が大幅に割引されるため、単体購入よりも契約とセットで端末を買うスタイルが主流のようだ。
街中を歩いてみたところ、他のヨーロッパ諸国とは違いiPhoneを使っている人を見かけることがほとんど無かった。多くの人々がNokia携帯電話を使っている。これはお膝元だからなのだろうか?
だが、マイナス10度以下の環境で市内を歩き回ってみるとわかるのだが、両手に手袋をした状態で携帯電話を操作するには、フルタッチ端末よりクラシカルな10キー・ストレート型端末のほうが使いやすい。このため、10キーを搭載した一般的な携帯電話に人気が集まるのではないだろうか。たまに折り畳み型の携帯電話を使っている人もいるが、ここフィンランドではNokiaのものが多い。Nokiaは折り畳みスタイルの端末はあまり出しておらず、これは他国では見かけない状況だ。Nokiaもフィンランド向けには他国よりも多い製品ラインナップを揃えており、折り畳み型を好む人も他メーカーではなくNokiaを選ぶ傾向にあるのだろう。
またフィンランドでは建物の中に入っても日本のように暖房がよく効いていることは少ないようだ。街中を縦横無尽に走っているトラムに乗っても、車内は暖かいというより「寒くない」というレベルである。これは室内外で気温差が大きいとメガネだけではなく携帯電話などのIT機器が結露してしまうからだろう。極寒の環境では寒さとの戦いだけではなく、湿度にも気を使わなくてはならないとはなかなか気が付きにくいものである。
このトラム内ではiPhoneを使っている人を見かけたが、雪の中で道を歩きながらiPhoneを使っている人は皆無だった。Nokia製品にタッチパネル端末が少ないのは、Nokiaの方針以前にフィンランドの国の人々が「雪があたりまえの生活の中で使いやすい端末」を求めているからなのかもしれない。
Nokiaストアを訪問
Nokiaは各国で販売店舗「Nokiaストア」を展開している。もちろんここヘルシンキにも店舗がある。ヘルシンキのNokiaストアは、古くからある建物に入っており、コーポレートカラーの青い旗が誇らしげに掲げられている。品揃えは豊富で、同社がフィンランドで発売中の全製品はもちろん、アクセサリ類も豊富に展示されている。最新製品も早めに販売開始されており、今回の訪問中はフラッグシップ端末ともいえるNokia N900が大々的に販売されていた。店内は撮影禁止のため写真でそれを紹介できないのが残念である。ヘルシンキを訪れる機会があればこのNokiaストアはぜひ寄って頂きたい場所だ。
さて今回冬のフィンランドを訪問して感じたのは、とにかく「寒い」こと。氷点下以下の環境は、常温の世界とは大きく異なるものであることを体感させられた。たとえば手袋をはめずに歩いていると、1分も経たぬうちに指先が動かなくなってしまうのである。毛細血管が収縮して指先の血流が極端に少なくなるからだろう。おのずと携帯電話の操作も手袋の上から、となることが多くなってしまうのだ。
また今回はNokiaのスマートフォンからUstreamを使って街中からストリーミング放送を行ってみた。ところが20分程度放送を行ったところ液晶の反応が鈍くなり、プレビュー画面の動きがぱらぱら漫画のようになってしまった。これは液晶画面内の液晶が冷やされ、動きが鈍くなったためである。端末の電池の持ちも普段より短いようで、金属ボディーの端末を胸ポケットに入れておいたところ本体が冷たくなったのはもちろん、半日で電池残量が急減してしまった。携帯電話にとって寒さは天敵なのである。
子供がソリを持っている姿も多い。三輪車代わりのようなものであろうか。ソリが日用品である生活、というのも他の国ではなかなか考えにくいことだろう |
帰りもフィンランド航空のバスで空港へ。次回はぜひ夏に訪れてみたい |
気温が低く、雪に覆われてしまう冬の期間が長いフィンランド。日本や他の国では考えられないような環境を実際に経験したことで、Nokiaの製品作りの考えを感じることができた。Nokiaは厳しい気候の中で生活している人々が選んでいる製品だからこそ、世界中で支持されるのではないだろうか。Nokiaのマーケットシェアの高さは、フィンランドのこの厳しい環境が生んだ結果と言えるのかもしれない。