携帯電話で世界最大のマーケットシェアを誇るNokia。昨年の年間販売台数は4億4000万台と、日本の人口を上回る数の携帯電話を世界中に販売している。ここ最近はスマートフォン市場でAppleやRIMなどの新興勢力から激しい追い上げを受けてはいるものの、世界のどこへ行ってもNokiaの携帯電話が見られる光景に変わりはない。日本市場からは2008年の販売撤退、2009年の研究開発部門の閉鎖といった残念なニュースが続いてしまっているが、Nokiaの製品に魅せられた利用者もまだ多いことだろう。

競争が激しさを増す中で市場の3割以上のシェアをキープしているNokiaだが、その強さはいったいどこにあるのだろうか?

雪のヘルシンキに到着

フィンランドは北欧の国。北欧といえば寒さの厳しい冬が長く、暖かい夏はほんのわずかである。だから北欧で観光を楽しむのならば夏に訪問するのが一般的。だがNokiaがどのような考えで携帯電話を開発しているのか、それを知るには厳しいフィンランドの自然環境を体感する必要があるのではないだろうか? ということで、1年で最も寒い2月にフィンランドを訪れてみることにした。

フィンランドの首都であるヘルシンキは、日本からも直行便が就航している。フィンランドは、「日本に一番近いヨーロッパ」というキャッチコピーも見られるほどで、実はそんなに遠い国ではない。今回筆者はスペインのバルセロナからドイツのフランクフルトを経由しヘルシンキへと向かった。フランクフルトからのフライトは夜の便で、ヘルシンキ到着は夜の23時すぎ。フライト中に機長から「ヘルシンキの気温はマイナス15度」とのアナウンスがあったものの、空港内は暖房が効いており厳冬の北欧に来たという感覚はない。

フィンランド航空の機内誌にはムーミンの携帯ストラップ&ペンセットも

ヘルシンキ国際空港の広告。古いNokia端末なのはなぜだろうか

空港では預け入れ荷物が出てくるターンテーブルエリアに企業広告が掲示されているが、その1つの広告に出ている携帯電話はやはりNokiaだった。でもよく見ると最新機種ではなくかなり古い機種の「Nokia 3210」だ。アンテナレスでPOPな着せ替えカバーを採用し、1999年の発売当時は大きな話題になった端末だが、なぜにこんな古い端末を今でも広告に使っているのだろうか。何となくこんな広告からもNokiaの秘密が読み取れそうな気がする。

凍える寒さのヘルシンキ

さてヘルシンキ・バンター空港から市内までの交通はバスとなる。利用したフィンランド航空が直通バスを走らせており、これを使うのが最も簡単だ。バス停はターミナルを出てすぐ。ドアを開けて外に出てみると……。

「寒い!い、いや、凍える!!」

ドアを開けてわずか数秒で、身体が芯から冷え切るほどの寒さに見舞われたのだ。目の前15メートルくらいのところにあるバス停にちょうどバスが止まっていたが、もしもバスが見えなかったら思わずターミナルビル内に引き返してしまっただろう。とにかく寒い。いや、寒いなんてものじゃない!! 用意していた手袋をはめて指先の震えは止まったものの、今度は耳が痛い!! とにかく外気に肌が触れると寒さを通り越して痛いのだ。2月の深夜のヘルシンキの気候をなめてはいけなかった。

寒すぎてバスに乗り込む前の写真はなし。一番前の座席に座る

バスはかなり飛ばす。路面は凍結しているようだ

フィンランドの公用語は、フィンランド語とスウェーデン語だが英語も通じる。バスの運転手さんもこちらが東洋人とわかると英語で話しかけてくれた。運賃はクレジットカードもOKだ。寒さでかじかんだ手を使い、財布から小銭を出さなくてもいいのはありがたかった。バスはターミナル2を出発後、ターミナル1を経由してヘルシンキ市内へと向かう。暗くて景色は見えなかったが、せっかくなので一番前の席に座り前方を眺めてみることにした。雪が降っているというのにバスのスピードは結構速く、ちょっとハラハラしてしまう。また前方の道路をながめていると、路面を粉雪が砂のように流れていくではないか。道路は完全に凍結してり、気温が低いため雪も完全に凍っているのだ。

バスは40分ほどで鉄道のヘルシンキ中央駅に到着。週末の土曜日ということもあってか、深夜0時を過ぎたにもかかわらず結構人が歩いていた。これには少し驚かされた。寒い冬でも若者たちは遅くまで活動しているということなのだろうか? せっかくなので駅付近を探索しようと思ったが、この寒さと荷物ではどうにも動けない。駅横のホテルまで徒歩で移動することにしたが、歩道には雪が降り積もっておりスーツケースのキャスターが回ってくれない。結局滑らすように荷物を引きずっていったのだが、雪の無い生活になれていないので、この程度のことでも一苦労。フィンランドの人々はこんな苦労をものとせず毎日生活しているわけなのだ。

真夜中のヘルシンキ中央駅に到着。バスも凍っている

夜中にもかかわらず若者が外出していることに驚く

さてホテルで一夜を明かした翌日は、Nokiaのふるさとを訪ねてみることにした。だが翌日は雪が多く、気温も前日より下がっているようだ。Nokia発祥の地でもある「タンペレ」までは高速列車が走っており、所要時間は約90分。さっそくヘルシンキ中央駅で切符を買ったのだが、駅構内の雰囲気がちょっとおかしい……。

朝のヘルシンキ中央駅。大雪が降り続いていた

タンペレまでの高速列車の切符を購入

発着案内が消えた駅コンコース

駅のホームに地元携帯事業者の広告発見。Nokiaのモデムだ

発着の電光掲示板はすべての表示が消えており、駅コンコース内には人があふれかえっている。どうやら大雪のため列車の運転が止まっているようなのだ。明日はすでに予定があり、タンペレ訪問は今日しか時間がない。果たして無事たどり着くことができるのだろうか? (次回へ続く)