新しい年を迎え、「今年こそは!」と様々な決意をしている人も多いと思います。昨年、2019年を振り返りますと、「老後2000万円問題」が大きく取り上げられ、老後資金準備をどのようにすべきか? ということが大きなテーマとなりました。
その結果、投資の必要性などを伝えるマネーセミナーは各地で大盛況となり、銀行などで投資用の口座(証券口座)を開設する人も多かったようです。
それに伴い、投資商品を作る運用会社や投資商品を販売する証券会社や銀行なども投資家が長期に投資する上での後押しとなるべく環境整備を行っています。それが手数料の改定です。また手数料のみならず、様々なサービスも充実してきています。
こういった流れを踏まえると、「どこで投資をすべきなのか?」とそれぞれに適した金融機関を選ぶ上では、やはり一定の金融リテラシーを有していることが大切です。
株式や投資信託の売買にかかる手数料
取引先を選ぶ前にまずは手数料について確認しましょう。
株式(個別銘柄)に投資をする場合
自動車関連のA社、流通業のB社など、個別企業が発行する株式を売買する際は通常、買い付け時と売却する時に2回、証券会社が定めた手数料を払うことになります。例えば、売買金額に応じて手数料が定めてある場合もありますし、1日あたり○円といった場合もあります。
投資信託の場合
株式や債券など複数の銘柄を1つのパッケージにしたのが投資信託です。ファンドともいわれます。1つのファンドを小口で購入でき、さらに複数の銘柄に投資をしていることでリスクの分散にもなります。個別株の場合、当該企業が破綻ともなると、価値がゼロになることもありますが、分散されていることでそういったリスクは軽減されます。よって現在は投資信託が資産運用の中心となりつつあります。
この投資信託は原則、購入時に手数料がかかります。購入額の3%程度かかるのが一般的です。原則、投資信託の場合は売却(解約)時には手数料がかかりません。
このように株式や投資信託を購入(または売却)する際のコストがインターネットの証券会社を中心に引き下げる、または無料にする動きが加速しているのです。
特に投資信託で買い付け手数料がかからないファンドのことを「ノーロードファンド」と言いますので、この表現は覚えておいてください。
投資信託は維持費がかかっている
投資信託の場合、運用会社でファンドマネージャーと呼ばれる人が、複数の銘柄を選び運用しています。言うなれば投資家に代わり銘柄の選別、入れ替えなどを行ってくれているため、それに対するコストも生じます。
それが維持管理費用(信託報酬)と呼ばれるものです。年率1%程度の費用を日々、運用財産から差し引かれているのです。つまり、この維持管理費用は運用成績にも大きな影響を与えます。
そしてこの維持管理費用も新しく販売されるファンドを中心に引き下げられる傾向にあります。今までであれば1%程度だったものが0.5%になるなど、長期で運用する私たちからすると大歓迎の流れです。
安さ・無料を優先すべき?
こういった流れは主にインターネットを通した株や投資信託の売買が中心となっています。主要各社の動向を見ていますと、今後数年でさらに加速していくようです。
ただし、営業社員やアドバイザーがいる場合は必ずしもそうではありません。一定のコストが今後も発生すると思われます。では、このコストとどう向き合うべきでしょうか?
例えば「うどん」を食べる場合、「セルフうどん」のお店に行くと安くうどんを食べることができますよね。一方、老舗の手打ちうどん屋さんではそれなりの値段設定をされている場合があります。ここで見極めていただきたいのが「うどんの味」です。
セルフうどんの場合、水を自分で入れたり、食器を下げたり、全て自分で行わなければなりませんが、うどんの麺やスープは老舗店に負けない美味しさというところもあれば、「とにかく安く早く食べられるが、味はそれほど……」というお店もあると思います。もし、どちらのセルフ店も300円であれば、当然皆さんは前者の「味の良い」セルフ店を選ぶと思います。
うどんであれば、おいしかった、そうじゃなかったと感想を言いながら、「次に行く時はこっち」という選択をするのもまた楽しいですが、投資の場合はそうは言っていられません。大事な老後の資金を運用するのです。よって、個別株と投資信託それぞれの特徴、投資スタイルに応じて安さを優先するかどうか考えてみてください。
個別株の場合
特定の会社の株式に投資をするわけなので、業績次第では株価が短期間で数倍になることもあれば、その逆もあります。将来の株価は誰も分かりませんが、少なくとも日々向き合っている証券営業、アドバイザーの人は一定の情報を有しています。財務分析などもできるため、破綻リスクの低い株式を選ぶ上でもそういったプロと付き合うメリットはあります。
よって、このような銘柄選定プロセスを優先する場合は一定の手数料を払い、信頼できる会社、担当者と付き合うのも1つの選択肢です。いわば老舗の手打ちうどん屋です。
一方、個別株投資は「お小遣い程度」の少額で、短期で売り買いしながら少しだけでも稼ぐことができればというスタンスの人もいるでしょう。そういう場合はネット証券を活用し、安さ重視でもいいと思います。
投資信託
投資信託も株と同様ですが、特に投資信託の場合、長期的な資産形成として活用する場合も想定されます。「リバランス」という、国内外の株や債券の比率をチェックし、定期的に見直しを行った方が良い場合もありますし、時に資金が必要となり、「今の状況を踏まえて、どのファンドから解約しようか?」と悩むこともあるでしょう。
解約の仕方によっては利益に対して課税される税額が変わるということもあります。よって、こういったサポートがあることも大きなメリットになりますので、「安さ」ばかりを追求しない方がいいかもしれません。
投資信託の場合はプロと付き合うことで通常、購入時の手数料は生じることになりますが、「維持費のできるだけ低いファンドで、私にあったファンドを選んでほしい」といった要望も可能です。
投資に対するリテラシーを高め、良いとこ取りを
「安さを追求したばかりに味がイマイチ」というケースを、投資においてはできるだけ避けたいところです。
よって、「株はネットでやるけど、投資信託は担当者と一緒に長期的に運用していこう」という具合にみなさんにあったスタイルを確立してほしいところです。
当然、経済動向、財務分析、ファンドの専門用語など投資に関するリテラシーを高めることで、「セルフで安く、しかもおいしい」と良いとこ取りもできそうです。
なおサービスを提供する金融機関側も「老舗の手打ちうどん屋なのに、味がイマイチ」と言われないようにコンサルティング力を高めるために様々な取り組みを行っています。つい、「何に投資をするのが良いのか?」ということに目が向きがちですが、「どこで取り引きをするのが良いのか?」ということも意識してみてください。