デジタルカメラのいいところのひとつに、データの使い回しというものがある、と前回書いた。ならば、フィルムカメラの場合も撮影したフィルムをデジタルデータにしてしまえばいい。ということで、フィルムのデジタル化について紹介しよう。

フィルムをデジタルで残すには

いちばん簡単なのは、お店にお願いしてしまうこと。私がいつも利用しているのは量販店で扱っているサービスだが、ネガ、ポジを1300万画素でスキャンしてくれる。35mmシートだと、1シートが980円で2シート以降が600円。ブローニーだと基本料金が200円で、1コマ60円。

エプソンのフラットベッドスキャナー「GT-X970」

ただ、35mmフィルムを10本スキャンすると、6,380円になる。フィルム代、現像代、紙焼き代、スキャナー代とお金がかかると、いつまでたっても、昼食代は390円のままだ。そこで、自宅でフィルムをスキャンできないか、とあれこれ考えた。

一番身近なのは、フラットベッドスキャナーだろう。たとえば、エプソンの「GT-X970」は、35mmのストリップ、マウント、ブローニー、大判の4×5、8×10フィルムまでさまざまなフィルムに対応している。これより価格が安いフラットベッドスキャナーでも、ブローニーまでのフィルムスキャンができる機種もある。

フィルムスキャナーをテストする

しかし、もっと手軽にできないだろうか。

たとえば、パソコンを使わないフィルムスキャナーもある。ひらたくいうと、デジカメの撮像素子がスキャナー内にあって、フィルムを複写していくようなものだと考えてほしい。データはSDカード内に記録される。この手のタイプは複数のメーカーから出されているが、ブローニーに対応しているのは、エー・パワーの「TCS-566」だけのようだ。この機種は、オプションのマルチフォーマットキットを使えば、パーフォレーション(フィルム送りの穴)も含んだ35mmのスキャンやコマごとに切らないブローニーフィルムのスキャンも可能になる。

エー・パワーの「TCS-566」。上部を閉じた状態

TCS-566を試してみた。電源はUSBケーブルにコンセント用のアダプタを付けて、コンセントに差すだけ。ふたを閉めれば電源は切れる。ボタンは矢印ボタンが2つと取り込み用のCOPYボタンが1つ。2つの矢印ボタンで操作を行い、メニューはまずまずわかりやすい。35mm、120というフィルムのサイズ、ネガ、ポジ、モノクロというフィルムの種類、解像度設定などを行う。

「TCS-566」の上部を開いた状態。フィルムはフィルムキャリアに挟み込んで手で動かしていく

付属のフィルムホルダーは3種類。35mmスライド用、35mmスリーブ用、ブローニーの6×6の1コマ用

フィルムキャリア(フィルムホルダー)にフィルムを入れて、キャリアをスキャナの穴に差し込む。液晶モニターにはリアルタイムでフィルムが表示されるので、ホルダを動かしながら、フィルムを適当な位置に合わせる。スキャンはまるでデジカメで写すように、ボタンを押せばOKだ。

スライドをフィルムキャリアに入れてみた

オプションのフィルムキャリア「マルチフォーマットキャリヤー」(MFC-1)。これで、パーフォレーション付きの35mmフィルムスキャンや、スリーブのブローニー(6×6サイズ)がスキャン可能

パーフォレーション付きの35mmフィルムスキャンの準備

スリーブのブローニー(6×6サイズ)スキャンの準備

フィルムキャリアを本体に差し込んだら、上部を開け電源を入れる。ボタンが3つしかないので操作もわかりやすい。「COPY」が取り込みボタン

上部の液晶モニターと2つのボタンで、ネガ、ポジ、モノクロの指定、サイズ(35mm(135)と120)の指定、露出補正(+-0.5)の指定などを行う

スキャンする画像はリアルタイムで液晶モニターに表示され、「COPY」ボタンを押して、取り込む

パーフォレーション付きの35mmの例

スキャンした画像は、フラットベットスキャナーのフィルムスキャンにはかなわないが、画像はまずまずといった感じか。SDカード内に記録されたデータをパソコンに移し、ウェブ用に使ってもいいし、プリントしてもいいだろう。フラットベットスキャナーでのフィルムスキャンとちがって、時間がかからないので、お手軽にとにかくフィルムをスキャンしたい人向けかもしれない。また、ブローニー対応なのに、大きくないので、置き場所には困らないだろう。

ブローニーの6×6。データは、取り込み後「Photoshop Elements」で開いて、角度調整と切り抜きをしている。写真は、フェリーから見た女木島(フレクサレットVI/FUJICOLOR PRO400H)。小雨が降っていたため、透明感がもともとないが、彩色写真のような淡い感じのデータになった

こちらは、快晴時の例。瀬戸内海の犬島。手軽にスキャンできるので、楽しい

『フィルムカメラの撮り方 きほんBOOK』

フィルムで撮る楽しみをクローズアップした本。特に、著者のふんわりやさしく撮るテクニックは真似したいものばかり。「コダック プロフェッショナル ポートラ NC」の作例が満載なので、フィルムカメラ女子必携の本ともいえる。フィルム写真にこだわりをもつ男性にもぜひ読んでほしい。
山本まりこ著、毎日コミュニケーションズ・デジカル編集