付き合いはじめて十数年経つのに、いまだ痛みと倦怠感で憂うつな気分になる「生理」。「女の子の日」とかわいく言い換えたところで、かわいさの欠片も感じないのは筆者だけでしょうか。そんな生理をはじめ、女性特有の問題を技術で解決する「フェムテック」。本特集では、今注目を集める「フェムテック」をさまざまな切り口からひも解いていきます。

第5回目は2022年1月12日にサービスを開始した、mederiが運営するオンラインピル診療サービス「mederi Pill(メデリピル)」をご紹介。サービス内容はもちろん、誕生背景などをmederi代表取締役である坂梨亜里咲さんに聞いてきました。

  • mederi代表取締役 坂梨亜里咲さん

■「mederi Pill」とは?

そもそもピルとは避妊薬のイメージがありますが、実は月経前症候群(PMS)や生理痛、肌荒れの改善に加え、卵巣がんなどのリスク低下といった複数の効果が期待できる薬といわれています。

もちろん、人によっては血栓症のリスクが高まるなど、副作用についても理解しておく必要がありますが、さまざまな副次的効果によって女性の人生をサポートするものとして支持されています。

ですが、日本においてピルの内服率は3~5%程度。諸外国では内服率10%以上という国も多数ある中で、まだまだ日本におけるピルの普及率は低いと坂梨さんは話します。その要因として「ピルを飲むと不妊になる」「性に奔放な人が飲むもの」など誤った認識や、市販薬ではないため医師の処方が必要な点などがあげられます。

  • 2022年1月12日にサービスを開始した、mederiが運営するオンラインピル診療サービス「mederi Pill(メデリピル)」

そんなピルのオンライン診療を通じて、心身のケアを目的にすると同時に、女性たちの知識向上を図っていきたいと、2022年1月に開始したサービスが「mederi Pill」です。

ピルを希望する女性とオンライン診療を行う産婦人科医をつなぐプラットフォームで、オンライン上で予約・診療・配送手続きができ、自宅のポストにピルが届くという簡便なサービス。

物理的な制限がなくなったのはもちろん、初月無料のお試しプランがあるので初心者でもピルをはじめやすいのがポイントです。(初月無料プランの対象は低用量ピルのみで別途送料が必要、2カ月目以降は月々2,970円~+送料がかかってくる)。

■誕生のきっかけは辛い実体験

では「mederi Pill」誕生の背景には、どのようなストーリーがあったのか、坂梨さんに尋ねてみました。

「私は26歳から不妊治療をはじめ、現在は不妊治療と同時に更年期障害を薬で抑えることをしています。ネガティブにみると、私は女性が抱える悩みを早い段階で人よりも多く経験していると思います。ただ、だからこそmederiのプロダクトやサービスがはじまったんです」(坂梨さん)

そう語る坂梨さんは、卵巣が卵子を放出(排卵)しなくなることで、ホルモン分泌能力が衰え、40歳前に月経がなくなるといわれる病気「早発閉経」を抱えています。

不妊だけでなく、更年期症状とも付き合っていく必要がある病気に「もっと早く気づけたら」と、後悔の念を抱いたこともあったそう。ですが、困難や辛い経験を経て「自分と同じような経験をしてほしくない。女性たちの人生をサポートしていきたい」と生み出したサービスが、「mederi Pill」だったそうです。

人によるものですが、ピルはおよそ10〜40代までの期間で、女性たちの人生に複数接点を持つ薬と言われています。坂梨さんはそのピルを通じて「心身のケアをできるのはもちろん、10代という早い段階から女性たちの意識やリテラシーを高めることができるのでは」と考えたそうです。

また、コロナ禍でオンライン診療が本格化した状況も追い風となり、ピルのオンライン診療サービスがスタート。

■「ピル初心者」「忙しい女性」に寄り添うサービス

では、既存の他社サービスとは何が違うのか、気になる質問をぶつけてみました。

「私たちのサービスは、初めてピルを利用する人に徹底的に寄り添っているんです」(坂梨さん)

ピルを身近に感じてもらえるようにと、初診はもちろん何度再診しても診療代は無料。診療ハードルをできるだけ下げ、不安なことがあれば気軽に相談ができる仕組みづくりを意識しているそうです。

さらに「産婦人科医に特化した採用」という点も注目したいポイントです。類似の他社サービスでは内科医をはじめ、産婦人科医以外の医師もいる中で、あえて「mederi Pill」では産婦人科医のみを採用。

「婦人科のことは産婦人科医に聞くのが一番です。そのために、医師も産婦人科医に絞って採用しています。ただ、はっきり言ってコスト的には厳しく、本当のことを言うと経営的には避けたいゾーンですね」(坂梨さん)

複数症状に効果が期待できるピルですが、裏を返せばそれだけ悩みは多岐にわたるもの。ピルの普及率が低い日本において、不安や疑問を持つ女性たちが安心してピルを利用できるよう、さらには婦人科の悩みについても答えられるように、と「診療の質」にこだわったと話します。

また、「LINE」で完結するシステムも特徴の一つ。

「忙しい女性でも簡単に利用ができるようアプリではなく、あえてLINEを使っています」(坂梨さん)

仕事や家事、育児に忙しい女性の負担を減らし、手軽に利用できることを考え、ダウンロードの必要性が少ないLINEをあえて選択。また、今後は生理日予測ができるカレンダー機能なども登場するそうで、より女性たちが使いやすいサービスにバージョンアップさせていくと力強く語ってくれました。

■おしゃれなポストカードでリテラシー向上を

ひとしきりお話を聞き、取材も終わろうかというころ「見せたいものがあるんです!」と小走りで部屋を出ていく坂梨さん。なんだろうと不思議に思っていると、持ってきてくれたのは色鮮やかなポストカードでした。

「ピルと一緒に届けるポストカードにもこだわっているんですよ」(坂梨さん)

  • 毎月1テーマが1枚のポストカードになって届く。選ぶプランによって1度に複数枚届くこともある

そう目を輝かせながら話す坂梨さんですが、不妊治療前は生理不順の治療をするため産婦人科に10年ほど通院。しかしながら、自ら検診を受けるまで、現在抱える病気には気付けなかったそうです。

「定期健診などを通じて自身への理解を深めつつ、知識も身に着けてほしいんです」(坂梨さん)

そんな思いもあって「mederi Pill」では毎月テーマを変えて、ピルの知識だけでなく、不妊治療をはじめとする情報を1枚のポストカードにして届けていると言います。

優しい色を使ったおしゃれなカードデザインは、「服やコスメを買ったけ?」と勘違いしそうになるほどファッショナブル。ピルを届けるだけでなく、女性たちのリテラシー向上にも取り組むその姿勢は、「自分と同じ後悔をしてほしくない」と語る坂梨さんらしいものでした。


悩みや苦しみと向き合い誕生したサービスは、まさに女性の味方。ピルはもらいたいけど病院に抵抗がある、物理的に行くのが難しいといった人は、ぜひ「mederi Pill」をチェックしてみてください。あなたの人生のサポート役に出会えるかもしれません。

※「mederi Pill」での診療やピルの処方等は保険適用外・自由診療であり、医療機関に所属する医師が行います
※ピルには副作用があります。喫煙や肥満など、人によっては、血栓症リスクなどが高くなる場合があります。医師と相談をしながら使用可否、方法を決めてください