付き合いはじめて十数年経つのに、いまだ痛みと倦怠感で憂うつな気分になる「女の子の日(生理)」。かわいく言い換えたところで、かわいさの欠片も感じないのは筆者だけでしょうか。そんな生理をはじめ、女性特有の問題を技術で解決する「フェムテック」を知っていますか? 本特集では、今注目を集める「フェムテック」をさまざまな切り口からひも解いていきます。

フェムテックと言われても、聞きなじみがない人もいるはず。第1回目は「フェムテックとは何だろう」をテーマに、一般社団法人日本フェムテック協会 代表理事の山田奈央子さんに話を聞きました。

  • 一般社団法人日本フェムテック協会 代表理事の山田奈央子さん

女性の声に寄り添ったものづくり、サービス開発に17年携わってきた山田さんですが、日頃からヘルスケアに対する女性たちの知識不足を感じていたそうです。そこで「心と体に対する正しい知識を身に着け、自分らしく輝いてほしい」との思いをきっかけに、医師やジャーナリストらとともに「日本フェムテック協会」を発足しました。 そんな山田さんに早速、フェムテックの意味や具体的な事例について尋ねてみました。

話題の「フェムテック」とは?

フェムテックってよく聞くけど、そもそもどういうものなのでしょうか?

「フェムテックとは「Female(女性)」と「Technology(技術)」を掛け合わせた造語で、ドイツの月経管理アプリを開発した企業が投資家向けに造った言葉です。生理や更年期障害など、女性特有の健康問題を技術で解決する商品・サービスを指し、日本においてはムーブメントも表す広義的な意味の単語でもあります。

今、フェムテックが注目を集めている理由

ではなぜ、今これほどまでにフェムテックが注目を浴びるのでしょうか。

山田さんによると、背景の1つに「女性たちの社会進出」があるそうです。近年、政治をはじめ企業の管理職など重要なポジションに女性が登用され、女性特有の悩みや問題が理解されやすくなったと言います。

ですが、それだけではありません。「コロナ禍で自身の心と体を見つめなおす時間が生まれ、ヘルスケアを気にする女性たちが増えたこと」もきっかけのひとつ。また、2020年10月には野田聖子氏が議連の会長を務める「フェムテック振興議員連盟」が発足、さらには大企業がフェムテック市場に参入しはじめるなど、国・企業が本格的に動き出したことにより大きなムーブメントになったと言います。

そのような背景から2020年は「フェムテック元年」と呼ばれ、注目度が増した年でもありました。

フェムテックと呼ばれる商品・サービスを紹介

  • フェムテックのひとつ「月経カップ」(フリー素材)

では、フェムテックと呼ばれる製品やサービスにはどんなものがあるのでしょう。課題や症状別にみていきます。

・生理、PMS(月経前症候群)
生理にまつわる製品には経血を吸収できる吸水ショーツや、膣内に挿入して経血を溜める月経カップなどがあげられます。また、生理周期をチェックできPMSの予測に役立つアプリサービスなど、定期的に訪れる生理のお悩みを解決してくれます。

・不妊、妊活
排卵日予測アプリ、卵巣年齢・精液の質を調べる簡易検査キットなど、妊娠を望む人に向けたアイテム・サービスがあります。

・産後ケア
仕事と子育ての両立を考える人に向けて、“産後うつ"をはじめとしたトラブルを防ぐオンライン医療相談サービスや、骨盤底筋を鍛えるアイテムなどがあげられます。

・更年期
ホルモンバランスが変化する更年期に合わせたサプリメントや、パートナーと一緒に更年期症状を共有するオンライン相談サービス。そのほか、骨盤底筋の筋力低下を防ぐトレーニンググッズや尿漏れショーツ、デリケートゾーンの保湿アイテムなども当てはまるそうです。

・セクシャルウェルネス
性の健康にまつわるセクシャルウェルネスは、大手百貨店でポップアップストアが開催されるなど注目の市場。セルフプレジャー商品と呼ばれるバイブレーターなどがこのカテゴリーにあてはまり、最近では見た目にもおしゃれなものが多く登場しているようです。

・女性特有疾患
あまり知られていませんが、乳がんを患った人に向けたインナーなどもフェムテックの一種です。女性特有疾患の診察や検診で痛みが少ない医療機器なども開発されてきています。

そのほか、女性の悩みをサポートする“フェムケア"商品として、デリケートゾーン専用ソープなどがあげられます。

未だ理解されづらい女性の健康問題

  • インタビュー風景

「10年前にデリケートゾーングッズを百貨店に提案したときは門前払いでした。そのころに比べたら時代は変わったなと思います。でもまだまだこれからです」と話す山田さん。

少しずつ社会は変化していると実感しながらも、女性の健康問題に対して社会全体はもちろん女性たちのリテラシーにも課題を感じるそう。山田さんは「ビジネスマナーのように、女性特有の悩みと向き合う方法を当たり前に知る社会にしていきたいです。大変ですし、相当時間はかかると思いますが」と少し遠い目をしながら、最後に力強く答えてくれました。

私たちはお互いに知らないがゆえに、不安や不満をもってしまうのかもしれません。そうなる前に、まずは知ることからはじめてみてはどうでしょうか。

フェムテック協会では、女性の心と体に関する知識を得られる「フェムテック検定」をホームページから無料で受験ができます。筆者も受けてみましたが、女性でも悩んでしまう問題がかなりありました。もしかするとわかっているようで、当事者である女性自身も理解できていないことが多いのかもしれません。

フェムテックを通してお互いを認め合える社会に

いかがでしたでしょうか。想像以上に多くの悩みを解決してくれるフェムテックに驚く人もいたのでは?

今後拡大していくであろうフェムテック市場。女性だけでなくぜひ男性にも関心を持ってほしい分野です。企業戦略の一環として、女性の健康課題への理解を深める企業も増えてきているのはもちろん、家族や恋人と共に悩みに向き合える環境はお互いにとって暮らしやすいはず。

ぜひ、記事をきっかけに自身の心と体を見つめ直してみてはいかがでしょうか。