まだ7月だというのに、厳しい暑さの日が各地で続出している。「8月に入ったらさらに暑くなるのか……」と早くも戦々恐々している人もいるはず。うだるような気温のもとでは、毎年一定数の死亡者が出る熱中症に対して十分に注意しないといけないが、QOLに悪影響を及ぼす夏バテに対しても、きちんと対策を練っておかねばならない。
本稿では、内分泌代謝専門医の山本咲医師の解説をもとに、夏バテの予防策や夏の暑さに負けない体づくりのために必要な食事などを紹介する。
自律神経の乱れを少なくさせよう
夏バテの主たる原因は、日中の高い気温や屋内外の寒暖差などに伴う自律神経の乱れとされている。すなわち、「夏バテを予防する=自律神経を乱れさせないようにする」と考えても差し支えないと言えるだろう。
そのためのポイントを3点、山本医師にあげてもらった。
(1)室内の温度調整をこまめにする
「急激な温度差を避けるため、クーラーの設定温度は外気との差が大きくならないように、適温で過ごすことを心がけましょう。また、涼しい室内で過ごす場合は体を冷やさないよう、送風機の近くは避けるようにしたり、ひざ掛けやレッグウォーマーなどで冷えを予防したりすることも大切です」
エアコンで涼しい屋内と真夏日、猛暑日を記録しているような屋外。この間を行き来することは、自律神経にとってかなりの負担となる。
例えば外回りをしている営業職の場合、「炎天下の中、アポイント先を訪問」⇒「エアコンが効いた部屋で差し出された冷たい物を飲む」⇒「汗がかわききったところで、また次の訪問先へと向かうため屋外に出る」といった行動を毎日繰り返していることだろう。このスパイラルは心身へかなりの負荷をかけるので、自分なりの対策や工夫をする必要がある。
(2)冷たい飲食物を食べすぎないようにする
「冷たいジュースやアイスクリームなどの体を冷やす食べ物の過剰な摂取を控え、常温や温かい物の摂取や、炭水化物ばかりでなく、脂質やたんぱく質、ビタミンなどバランスのよい食生活を心がけることも重要です。辛い物や刺激の強い食べ物も控えるようにしましょう」
7月や8月になると、涼を求めてどうしても冷たい物を食べがちになる。ただ、冷たい飲食物ばかりの摂取は胃腸に負担を与え、下痢などの症状を招く恐れもある。冷たい物を食べる際は、常温や温かい物と一緒に食べるなどのルールを設けるのもいいだろう。
(3)定期的な運動をして汗をかく
「運動も大切ですが、日中の炎天下で無理な運動をすると熱中症の危険があります。朝方や夕方などの涼しい時間帯を選び、水分をしっかり補給しながら無理のない程度に行うようにしましょう。水分補給の際は水ではなく、塩分や糖分の含まれたスポーツドリンクがよいと思います」
例えば、夕方の帰宅時に1駅分歩いて帰るだけでも、毎日続ければ違ってくるし、体を動かせば床に着く際も熟睡しやすい。睡眠不足も夏バテにつながってくるため、そういった点からも運動は夏バテ予防によい。
ただし、どれだけ体調管理に気をつけていたとしても風邪をひいてしまうように、夏バテを100%予防するのは不可能だ。万一、夏バテの自覚症状がなかなか改善しない、あるいは悪化してくる場合は、その背景に何らかの病気が隠れている可能性もある。通常の休息で改善がみられない場合は、医療機関を受診するようにしよう。
夏バテを防ぐために食べたい食材
私たちが毎日を健康に過ごすうえで、日々の食事が重要なのは誰しもが認めるところだろう。
ただ、夏は簡単なざるそばやそうめん、冷や麦などの冷たい麺類のみで食事を済ませてしまう人も多いはず。冷やし中華のように複数の食材を一緒に摂取できる料理ならまだいいが、本当に麺のみだけの食事では栄養素も不足するし、炭水化物ばかりの摂取は体重増にもつながりかねない。そして何より、このような食事が続けば自ずと夏バテになる可能性も高まってしまう。
では、どのような食べ物を意識的に摂取すれば、夏バテになりにくくなるのだろうか。山本医師は「バランス」がキーワードだとしたうえで、ビタミンBを豊富に摂取すべきだと指摘する。
「炭水化物や脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などをバランスよく摂取することが大切です。ビタミンの中でも、特にビタミンB群の摂取が重要です。ビタミンBが多く含まれる食べ物としては、穀類の胚芽や豚肉、レバー、豆類などがあります」
仕事の付き合いなどで、やむなく冷たい麺類をはじめとする炭水化物の摂取が増えてしまうような場合は、サラダやフルーツを追加したり、酢を用いてたんぱく質や脂質などをさっぱりと食べやすくしたりするのもいいだろう。
※写真と本文は関係ありません
取材協力: 山本咲(ヤマモト・サキ)
都内の大学病院で初期臨床研修後、同病院の糖尿病代謝内分泌内科医局に入局。糖尿病専門医、内分泌代謝専門医を取得。現在は神奈川県内の大学病院にて糖尿病代謝内分泌分野を中心とした内科診療に携わっている。En女医会所属。
En女医会とは
150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。En女医会HPはこちら。