父親のつらさに共感し、どうしたらつらさをやわらげることができるか考えてきた本コラムも最終回を迎えました。最後は、田中さんが子育てをしながら感じたことを通して、世のお父さんたちにエールをおくります。
寝ることが大好きな僕も変われた
これまで僕は1日10時間くらい寝ないとダメなくらい、寝ることが大好きな人間でした。しかし子どもができてからは、23時に寝て、子どものために朝5時半に起きるということも苦痛ではなくなりました。
さらに今までは1時間なら1時間、まとまった時間に集中して仕事をするということが多かったのですが、細切れの時間でも仕事ができるようになりました。実際、子どもがうまれてから本も記事も書いているし、生産性はそんなに落ちていません。仕事柄、家にいる時間が多いということもあるのですが、子ども中心に生活が回っていくことに不満がないのです。子どものことが好きなので「やるしかない」と思えましたし、「やればできるんだ」という実感も持てました。
どうしてそう思えたのかというと、子どもがうまれた後の2カ月ほど、大学が春休みだったために、実質的な育休を取れたことが大きな要因としてあると思います。うまれた直後は正直、わが子が赤い塊にしか見えませんでした。しかし、毎日お風呂に入れて「大きくなったなぁ」とか「笑うようになったなぁ」と成長を追っているうちに、すごく大切な存在だと思えるようになり、子育てに深く関わりたいと思うようになりました。
家庭における"朝活"から始めてみよう
家事・子育てに非協力的な男性などに対し、女性たちから「お父さんは死んだものと思っている」「夫に死んでほしい」という言葉を聞くことがあります。世の父親が妻たちに「この人の世話もして、働いて、子育てもして、うんざりだ」と思われているとしたら、こんなにつらいことはないのではないでしょうか。
しかしその現実をシビアに見つめる必要もあるかもしれません。そこで僕は家庭における"朝活"をオススメします。自分の英語力を高めるのではなく、朝の時間を家族のために使うのです。1時間でも30分でも早く起きて、ゴミの分別や洗濯、朝食づくりをしてみましょう。「面倒だからやりたくない」となりがちですが、やらないほうが妻とけんかになってよほどめんどくさいことになると思いませんか。
自分のつらさを妻のせいにするのではなく、自分が改善して解消できるほうが気が楽です。「家族のことを思っている」という気持ちは伝わりにくいかもしれませんが、行為として表れればよりわかりやすいですよね。朝起きて部屋がきれいになっていたり、朝食ができていたりしたら、相手のリアクションもきっと変わってくると思います。
僕自身は"結婚して子どもを作る"という形にとらわれる必要はないと思っていますし、独身、カップル、子なし夫婦など全ての形態のつながりが許容される社会であってほしいと願っています。しかし結婚して子どもを持った以上は、いい関係にしたいという思いを多くの人が持っているのではないでしょうか。いい関係にするために、まずは"朝活"から、やれることから始めてみてはいかがでしょうか。
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著者プロフィール
田中俊之
武蔵大学社会学部助教。社会学・男性学を主な研究分野とし、男性がゆえの生きづらさについてメディア等で発信している。自身も0歳児の子どもを持つ育児中のパパ。単著に『男性学の新展』『男がつらいよ』『男が働かない、いいじゃないか! 』、共著に「不自由な男たち その生きづらさは、どこから来るのか」などがある。