家事・子育てを完璧にこなそうとする男性、父親という役割に対する認識が薄い男性、それぞれが生きやすくなるにはどうしたらよいのでしょうか。
完璧にやろうと思うからハードルが高くなる
先日、フランスの女性ジャーナリストと対談する機会があったのですが、フランスでは夫婦にとって最も大事なことが「愛」なのだそうです。「日本の女性が結婚に求めるものとして、経済力をあげるのが信じられない。愛しているから結婚するのであって、お金は自分で稼げばいい」との主張でした。
そういう現実もあるのか、フランスには結婚より解消しやすいPACS(性別に関係なく,成年に達した2人の個人の間で、安定した持続的共同生活を営むために交わされる契約)という制度があるのかもしれません。このほうが「ペアになろう」と思うカップルが増えるような気がします。
一方で日本は、家庭を「経済の単位」と考える人が多いように思います。父親が失業して夫婦が離婚するという話を聞くことがありますが、父親の経済的責任が重くなってしまいがちです。さらに離婚をするとなると、離婚届に2人の証人が必要など、心理的な負担も大きいです。結果的に、結婚しにくい社会を作っているのではないでしょうか。
結婚にしても家事や子育てにしても、完璧にやろうと思うとハードルが上がります。今の状況は非常に矛盾をうんでいて、子どもや家庭を大切にしたいと思えば思うほど結婚ができなくなり、「イクメンになれない」となり、少子化が進んでいるのかもしれません。
"視野を広げるチャンス"と捉える
家庭に完璧に向かい合おうという男性がいる一方で、子どもができても「父親」が自分の役割だという認識が薄い男性もいると思います。男性は子育てや家庭の話題よりも、仕事や政治・経済、世界情勢に関する話題を自分の関心事だと認識している人が多いのではないかと僕は考えています。しかし、それでいいのでしょうか。
子育てにコミットするということは「政治・経済だけが俺の関心事だ」というところから抜け出せる絶好の機会です。子どもといると、例えば保育園の送り迎えなどでさまざまな立場の人と出会います。また、地域というものがどのように動いているのかに目が向くので、「生活」というものにコミットできるのです。これまで見続けてきたであろう世界から視野を広げるチャンスと捉えて、父親であることに関心を持ってみてはいかがでしょうか。
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著者プロフィール
田中俊之
武蔵大学社会学部助教。社会学・男性学を主な研究分野とし、男性がゆえの生きづらさについてメディア等で発信している。自身も0歳児の子どもを持つ育児中のパパ。単著に『男性学の新展』『男がつらいよ』『男が働かない、いいじゃないか! 』、共著に「不自由な男たち その生きづらさは、どこから来るのか」などがある。