父親の子育てに関する問題を解消するために、国ができることはなんでしょうか。また、共働きの子育て家庭が行政に頼らず、自分たちでできることについても考えます。
男女が経済的にフェアになるように
父親の子育てに関する問題は、男女が経済的にフェアになっていけばよくなっていくと思っています。男女がフェアに競争してフェアに給料が得られる状態になれば、夫婦間で女性が我慢する必要はなくなります。
現状、男性の育休取得率が2%程度になってしまうのは、「自分が稼いでこなければ家族が生活していけないので、仕事の評価が下がるようなことはできない」ということが背景にあります。男女の賃金格差がなくなれば、男性は仕事中心の生き方をする理由がなくなるのです。
男女が経済的にフェアになるように、政府が「これからの社会をどうやって男女平等にしていくのか」について明確なビジョンを持っていなければならないし、アピールしていかなければなりません。内閣府や厚生労働省などが個々にやるのではなく、国として一体となってやっていく必要があります。
財源がなくてもできること
一方で、行政の対応を待っている間に子どもは育ってしまうので、自分たちでやれることも考えてみましょう。私が提案したいのは、地域に知り合いを作ることです。今は個人主義が大切にされていて、「他人の家には干渉しない」のが一般的かもしれません。確かに、それはそれで楽ではあるのですが、子育てをしてその地域に住むのであれば、積極的に地域活動に参加してみてはどうでしょうか。地域が居場所になれば、子どもの面倒を見てくれたり、ごはんを食べさせてくれたりするようなネットワークができていきます。労力はかかりますが、お金がかからないことでもあります。
自治体がネットワークをつなぐ事業をやってくれてもいいですよね。地域のボランティアで、子育て経験のある人が子育て世帯を支援してくれるという取り組みも実際にあります。子どもたちの存在がかわいいと思う高齢者は多いはずですし、子どもが巣立っていれば時間に余裕もあります。一方で子どもたちからすれば、年齢を重ねた人たちの価値観を学ぶことができます。財源がないというのであれば、「人をつなぐ」ということを自治体が担ってくれたらと思います。
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著者プロフィール
田中俊之
武蔵大学社会学部助教。社会学・男性学を主な研究分野とし、男性がゆえの生きづらさについてメディア等で発信している。自身も0歳児の子どもを持つ育児中のパパ。単著に『男性学の新展』『男がつらいよ』『男が働かない、いいじゃないか! 』などがある。