「現代の若者は車離れが加速している」といった話も聞きますが、1970年代のスーパーカーブームで育ったミドル世代としては、憧れの車種がひとつやふたつあるものです。そこで本連載では、ミドル世代が「いまコレに乗りたい!」と思うような四輪自動車について、新旧を問わず紹介していきます。
今回紹介するのは、超軽量オープンカーとして名高い英ロータスの「スーパーセブン」です。
軽量化にこだわった"公道を走れるクラブマンレーサー"
英ロータス・カーズは1957年、マルチチューブラーフレームとアルミニウム外板を組み合わせたセミモノコック構造の軽量FRオープンカー「ロータス・セブン」を発表しました。
このロータス・セブンは"公道を走れるクラブマンレーサー"をコンセプトとしており、そこには創始者であるコーリン・チャップマン氏の"軽量化"に対する設計理念が色濃く反映されています。
また、車両としての完成品だけでなく、自宅のガレージなどで組み立てられる「キットカー」として発売されたのもユニークな点です。これは、当時のイギリスでは自動車を購入する際の税金が高額だったため。キット販売にすることで、消費者がより低価格で購入できるよう配慮したのです。
ロータス・セブンにはさまざまなエンジンが搭載されていましたが、その中でも高性能エンジンを採用したモデルは「スーパーセブン」と呼ばれました。500kgに満たない超軽量ボディと70馬力前後のエンジンを組み合わせた走りは、究極ともいえるハンドリングを実現。
これが現在、世に広く知られている「スーパーセブン」という通称の起源です。車名はロータス・セブンですが、生産終了後の変遷なども含めて、本稿のタイトルではあえてこちらの知名度が高い通称を採用しています。
ファンがこだわるポイントのひとつはフロントフェンダー形状
ロータス・セブンは1972年の生産終了まで、さまざまな進化を遂げながら「シリーズ1」~「シリーズ4」が製作されましたが、いずれも軽量ボディを活かした軽快なハンドリングで、世界中の自動車ファンを魅了しました。
外観的に好みが分かれるファンのこだわりポイントのひとつに、フロントフェンダーの形状が挙げられるでしょう。
ロータス・セブンは当初、フロントフェンダーに独立式の「サイクル・フェンダー」を採用していましたが、シリーズ2の後半からはボディ一体型の「クラムシェル・フェンダー」を採用。
前者は軽量かつ見た目がレーシー、後者はクラシックな印象で跳ね石や水しぶきが防ぎやすいなど、デザイン面だけでなく機能上の違いもあります。
「ニア・セブン」として脈々と受け継がれる魂
英ロータス・カーズは、キットカーに対する英国内の優遇税制変更、米国における安全基準の見直しなどを受け、1972年にロータス・セブンの生産を終了しました。
しかし、世界中のファンに愛された"スーパーセブン"の神話はまだ終わりません。数多くの自動車メーカーが、この魂を受け継いだレプリカや派生モデルを製作し始めたのです。こうして本家のロータス以外が製作した車両については、通称「ニア・セブン」とも呼ばれています。
ニア・セブンの中でも特に有名なのは、英ケーターハムと南阿バーキンが製作した車両でしょう。ケータハムは、ロータスの代理店をしていたメーカーで、1973年にロータスからロータス・セブン シリーズ4の製造権や生産設備などを取得し、生産を再開しました。
一方のバーキンは、英貴族のバーキン卿が南アフリカ共和国に設立したレプリカ専門メーカーです。
1982年にコーリン・チャップマン氏が他界した後、妻のヘイゼル・チャップマン氏は南アフリカ共和国にロータスの支社を設立し、バーキン卿の協力を得てシリーズ3の再生産を行う予定でしたが、ロータス側で支社の設立計画が頓挫。ロータスとは無関係の状態で製造・販売が続けられました。
なお、後の裁判でバーキンにシリーズ3の製造権が認められたものの、「セブン」および「スーパーセブン」の名前についてはシリーズ4の正式な販売権を持つケーターハムが使用することになっています。
このようにスーパーセブンは、現在でも軽量オープンカーの象徴的な存在として、世界中のファンたちに愛されています。本家のロータス・セブンこそ入手は難しくなっていますが、直系のケーターハムをはじめ「その系譜」に触れられるチャンスは多いので、ぜひその軽快な走りを味わってみてください。