これまで僕自身のExcel活用術を紹介してきたが、他の人がそのまま導入してもしっくりこないのは経験則で分かっている。ベストなスケジュール管理は十人十色。やっぱり、自分だけのスケジュール管理表を作るのが一番だ。最終回は、自分流Excelスケジュール管理が長続きするコツを紹介したい。
極意はメインページに自由スペースを設けること
編集プロダクションで働いていた頃、いくつもの仕事を任されてパンク状態になっている後輩をたくさん見てきた。その都度、自分のTODO表を見せて「僕はこうやっているよ」と第1回から6回までのようなことを説明し、特製のTODO表テンプレートを渡してきた。その後、後輩から「超便利っすね! おかげで仕事がはかどります!」という喜びの声を聞いたことはない。
つまるところ、僕のTODO表は僕という個人に最適化しているので、他の人にフィットしないのは当たり前なのだ。そこに気付かなかったのは若気の至り。しかし逆に、特定個人というニッチなニーズにぴったりと合わせられる柔軟性が、Excelによるスケジュール管理の最大の利点ともいえる。
僕がこの連載で一番伝えたいのは、スケジュール管理ツールを自作するメリットだ。その道具としてExcelをオススメしてきた。Excelで自作する過程で、これまでに紹介してきた機能のうち、必要と思えるものだけを試して頂ければ幸いだ。そのうえで、長く付き合えるTODO&スケジュール帳を作るコツを列挙したい。
完成度は80%が上限。増改築を繰り返して、その時期のニーズに合わせるべし
自作した際に100%の完成形を作ったとしても、利用していくうちに必ず不便は発生する。その際、手軽に要素の削除や追加ができることが重要だ。細部の詰めをあえて甘くして、その後の自分の意見を採り入れつつ、自身とともに成長させたほうが断然効率的といえる。不満がたまったとき、新築の家へ引っ越すよりも、住み慣れた家を増改築したほうが手間が少ないはずだ。
その日に必要な情報をまとめたメインページを作り、常駐の習慣をつけるべし
複数のタブを作るにせよ、僕の「週間」シートのような、その日の仕事がすべて把握できるようなワークシートは必須。TODO&スケジュール帳を常に起動して、基本的にそのページを表示するように心がければ、毎日のTODOを脳の中の記憶に頼ることはなくなる。また、1枚のシートであっても、スクロールする手間は省けるようにデザインしたい。
メインページには、改良が簡単にできる自由スペースを残しておくべし
僕のメインページとなっている「週間」シート。自由スペース部分には、今週中に納品するべき原稿の一覧や、自由に使えるお金を算出するルール、毎日の気合い度などを入れている。他のセルへのリンクなどは貼っていないので、不要になったらいつでも別の内容に書き換えられる |
TODO&スケジュール帳を常に開く習慣が付いたら、自然とメインページを目にする機会は増える。そこに「経費申請忘れがち!」「ケアレスミス多発中!」などと自由に書き込めるスペースがあれば、その日の予定と一緒に毎回チェックできる。卓上カレンダーや壁に付箋紙を貼るよりも高頻度で目につくため、注意事項を忘れる危険が低くなるのだ。視覚的にも情報の一元化が図れ、目を疲れにくくする効果もあるかもしれない。
Excel大好き。だけどここだけは気にくわない
最後に、僕がExcelの唯一の弱点と思える要素を紹介して筆を置きたい。
それは行を表す部分の横幅が、「999」行から「1000」行になったところでわずかに伸びることだ。1画面に最大限の情報を載せるため、僕はフルウィンドウ時の横幅をギリギリまで使ってTODO表の「週間」シートを表示する設定にしている。しかし、月日が経って1000行を超える部分の情報を表示すると、シートの右脇が画面からはみ出してしまうのだ。すると右脇のセルをクリックするたびに表示が調整されるため、非常に使いづらくなる。この状態を回避するために、週間シートは960行程度(約4ヶ月分)に収まる日数のみを作っており、1000行に近づく頃に過去のデータを消してTODO表を刷新している。
Excel 2007は最大行数が大幅に増え、旧バージョンの6万5536行から104万8576行となっている(最大列数も、256列から1万6384列に増えた)。それだけ膨大な情報を扱うことを想定しながら、わずか1000行でベースの部分が動くのは納得できない。是が非でも、次期バージョンでは修正してもらいたいものだ。