第1回では、適切な作業時間で翌日以降のスケジュールを埋める方法を紹介した。しかし、所詮それは未来の段取りでしかない。もっとも大切なのは"今"なのだ。今日その日を効率的に生きるには、その日の仕事の進捗状況をリアルタイムに把握することが重要になる。今回は、「今日の作業時間は残り●時間です」と常時知らせてくれる、便利な関数を紹介したい。

作業予定時間を消していき、残り作業を把握

前日までに無理のない予定を立てても、当日風邪を引いてしまったり、何となくやる気がなかったりで、作業ペース落ちることは誰にでもある。事実、自分も普段は2時間で完了する作業が1日がかりになることだってあった。「今日は納品する原稿がないから、平和だなあ」なんて思っていると、あっという間に太陽が沈み、その日がノルマ未完遂のまま終了。残りを次の日のスケジュールに組み込むしかなくなり、睡眠が1.5時間などの無茶な進行を自分に強いることになる。

この悪循環を食い止めるのに、その日の残り時間と残り作業をリアルタイムでチェックする仕組みが役に立つ。

残り作業を把握するには、第1回でお伝えした「残仕事」の仕組みを活用すればいい。何かの作業を完了したあとに、その作業の作業予定時間をクリアするだけだ。数値を消せば、「残作業」を示すSUM関数の値がどんどん低くなっていき、最終的に睡眠予定時間と同じ数値となる。そうなればその日のノルマは達成というわけだ。ちなみに、完了した作業の文字の色を変えていくと、1日の進捗状況がTODO表を一望するだけで大まかに見えるようになる。

僕の場合、作業を完了させたら、作業時間の数値をクリアして項目を黒文字から青に変える。青文字が増えていくと、今日もよく頑張っているな~と自己満足に浸れるのだ

残仕事の数値が減った。睡眠時間を含めて残り10時間を切ると、競技場に戻ってきたマラソン選手のような気分になる

朝9時を1日の区切りとして、残り時間を表示させる

では、残り時間はどうか。僕は、「翌朝9時まであと何時間か」を自動で表示する関数式を利用して、「残時間」という項目を作っている。TODO表に何か手を加えるたびに残時間の数値が更新されるので、実質的にはリアルタイムでの表示が可能なのだ。現在が深夜2時なら残時間は「7時間」、午後20時なら「11時間」となる。

区切りを午前9時にしたのは、以前勤めていた会社の始業時間に合わせるという理由がひとつ。また、ライターの仕事は深夜0時を挟むことが多いので、0時を区切りにすると深夜の作業予定が組み立てにくくなるという事情もある。

「残時間」の計算に使う関数式は、IF関数とHOUR関数、NOW関数を組み合わせて作った。少しややこしいが、他のセルの数値に依存せずに動作するため、別のエクセルシートにもコピーして手軽に利用できる。下に関数を載せるが、おおよその意味だけ把握して、コピーを改変して使ってもらえれば幸いだ。

 =IF((9-1)<HOUR(NOW()),24+(9-1)-HOUR(NOW()),(9-1)-HOUR(NOW()))

「残時間」関数式は、毎日の予定書き込みスペースにコピーしている。すべてが"今"の残時間を表示するため、当日以外の数値に意味はない

NOW関数は、PC内の時計が示す時刻をシリアル値で返す。「HOUR(NOW())」と組み合わせると、分や秒は無視して時間だけが得られる。IF関数は条件によって返す値を変更する。「IF(A,B,C)」は、「もしAだったら、Bの値を表示。AではなかったらCの値を表示する」という式だ。

それを踏まえて上の関数式を意訳すると、「もし今、午前9時を過ぎていたら、深夜0時間までの残り時間と、0時から朝までの9時間を足した時間を表示する。今が0時から午前9時の間なら、午前9時までの残り時間を表示する」という意味になる。

なお、関数式の各所に"9-1"がみられるのは、分や秒といった端数を調整するためだ。たとえば、午前8時45分のときの残り時間は「0時間15分」だが、関数式で1を引かないと「残時間」項目には「1時間」と表示されてしまう。そこを「0時間」と表示させるための措置と考えてもらいたい。残り時間が、15分と1時間では大きな違いだ。どうせなら0時間と表示して、急ぐ気持ちを促した方がいい。

上記のようなルールに基づき、リアルタイムで変動する「残時間」と「残仕事」を見比べることで、その日の進行が順調なのか、達成が厳しい状況なのかが把握できるというわけだ。完成させてしまえば、毎日ストップウォッチを持ったコーチが自分の仕事ぶりを見張ってくれるような感じになる。

スクリーンショットをとった時刻はAM0:19。分と秒の単位を切り捨て、「残時間:8時間」と表示されている。睡眠時間は6時間確保しているので、この原稿を完成させれば完遂だ。どうにか逃げ切りに成功しそうだが、「残時間」が「残作業」を下回る状況は精神衛生上よくない。もっと朝早くから作業すれば、こんなことにならないのに……。反省!

参考までに、別の時間を区切りにした場合の「残時間」関数式を掲載する。

昼の12時を区切りにする場合

 =IF((12-1)<HOUR(NOW()),24+(12-1)-HOUR(NOW()),(12-1)-HOUR(NOW()))

夜0時を区切りにする場合

 =24-1-HOUR(NOW())