日本は島国のため、海外に渡航する際は飛行機を利用することがほとんど。初めて訪れる国の場合、空港から都市への交通アクセスの充実度により、その国の印象が決まる場合も多いのではないだろうか。今回はロシアの首都、モスクワの空港鉄道「アエロエクスプレス」の魅力に迫ってみたい。
■空港と都心を1時間以内で結ぶ「アエロエクスプレス」
モスクワには3つの国際空港(シェレメチェヴォ国際空港、ドモジェドヴォ国際空港、ヴヌコヴォ国際空港)が存在する。各空港において、空港鉄道「アエロエクスプレス」が乗り入れ、1時間以内で都心にアクセスできる。
モスクワの「アエロエクスプレス」の開業は2002年。意外と新しい。同鉄道が開業するまで、空港から都心へはバスやタクシーを使い、大渋滞に巻き込まれたものだが、それも過去の話となっている。なお、「アエロエクスプレス」はロシア国鉄ではなく、独立会社「アエロエクスプレス」が運営している。
筆者は都心に位置するベラルースキー駅からシェレメチェヴォ国際空港まで、「アエロエクスプレス」を利用した。ベラルースキー駅には地下鉄2号線・5号線が乗り入れ、モスクワ各所からアクセスしやすい。
「アエロエクスプレス」のホームはロシア国鉄から独立している。時刻表を見ると、ベラルースキー駅からシェレメチェヴォ国際空港駅までの区間は30分間隔で運行され、発車時刻は毎時0・30分となっているため、外国人利用者にもわかりやすい。所要時間は35分となっており、中間駅は1駅(アクルジュナヤ駅)しかない。
ベラルースキー駅の「アエロエクスプレス」のりばには専用の待合室が設けられている。「アエロエクスプレス」以外の利用者が専用待合室に踏み入れることはなく、スペースも広いので、じつに快適だ。
切符は英語表示の券売機から購入できる。クラスはスタンダードクラス・ビジネスクラスの2クラス制となっており、スタンダードクラスだと1人500ルーブル(約850円)となる。地下鉄の1回券が55ルーブル(約100円)であることを考慮すると、ロシアの人々にとっては割高に感じられるかもしれない。
なお、往復や複数人での利用には割引価格が適用される。割引価格も標準価格と並んで1つの画面に表示されるのでわかりやすい。券売機から出たチケットはヨーロッパではよく見られるレシート式。レシートにあるQRコードを改札機にかざすだけでよい。
ホームに出ると、すでに「アエロエクスプレス」が停車していた。灰色をベースにしたロシア国鉄の車両を多く見たせいか、赤色の「アエロエクスプレス」が新鮮に映る。
車両は10両編成になっており、うち1両がビジネスクラス。車内は軌間1,520mmのロシアらしく、広く感じられる。スタンダードクラスは2列+3列のクロスシート仕様。車端と中間にスーツケース対応の荷物置場が設置されている。一方、ビジネスクラスの座席は革張りで、ゴージャスな雰囲気が漂う。
スタンダードクラス・ビジネスクラスともに通路は広く、大型のスーツケースでも楽に通れる。デッキもゆとりのあるレイアウトで、軌間1,067mmが多くを占める我が国から見ると、なんともうらやましい。車内はすべての座席が埋まっていた。ロシア人はもとより、外国人の利用も多いようだ。
列車は定刻の9時にベラルースキー駅を発車。しばらくは徐行運転を続けていたが、9時10分頃から速度が上がる。
すると、車内ではワゴン式の車内販売が入ってきた。品目を見ると、各種飲料やサンドイッチ、クッキーなどが並ぶ。わずか35分の乗車時間にもかかわらず、車内販売があることに驚く。ターミナル駅周辺にはキオスクと呼ばれるミニショップが多いだけに、サービス精神が旺盛だと言ってもいいだろう。早速、外国人観光客がチョコレートを購入した。
9時13分、唯一の中間駅にあたるアクルジュナヤ駅に停車したが、乗降客は少なかった。9時35分、右手に滑走路が見えると、シェレメチェヴォ国際空港駅に到着する。同駅はEターミナルに直結しており、各ターミナルには「アエロエクスプレス」のりばへの行き方が案内されているので、初めての利用でも安心だろう。
■地方空港の「アエロエクスプレス」には注意が必要
「アエロエクスプレス」は一部の地方空港にも乗り入れているものの、本数が少ないので注意が必要。たとえば、近年人気を集める極東のウラジオストクの「アエロエクスプレス」は1日5往復しかない。地方空港の「アエロエクスプレス」を利用する場合は、事前にホームページなどで時刻表を確認することをおすすめする。