イギリスに渡り、最初のうちこそウイスキーを楽しんでいた私だが、そのうちビール行脚へと変わっていった。そして次なる目的地イタリアでは……やはり「まずはビール」である。皆さんお忘れかもしれないが、私はソムリエである。それにも関わらず、ワイン大国イタリアで、ワインより先にビール……。
ワイン生産量世界一にも輝いたイタリアの地ビールって?
「ソムリエがビールを楽しんだっていいじゃない! 」ということで、ここからはイタリアのビールレポートをしていくとしよう。イタリアは皆さんご存知の通り、「キャンティ」やバローロなど名だたるワインを産みだす国である。生産量は世界一、消費量はフランスに次ぐ2位(2005年度)というワイン大国である。では、ビールはどうなのだろうと調べてみると、大手では国内ナンバーワンシェアを誇る「ナストロ・アッズーロ」(ペローニ社)と、髭の紳士がトレードマークの「モレッティ」が人気といった様子だ。現在は前者がハイネケン、後者はサブ・ミラー社傘下で、町のバールでも大抵このどちらかが置いてある。どちらもラガータイプで、色も明るいゴールデン、総じてライトな印象である。
しかし、イタリアのビールがこれだけだと思ってはいけない。ワインだけではなく、ビールだって色々な種類があるのだ。ということで、今回私は、ミラノで開催されたイタリア地ビールのイベント「Salone della Birra"artigianale e di qualita"(サローネ・デッラ・ビッラ"アルティジャナーレ・エ・ディ・クアリタ"、ビールの展示会"地ビールとその品質")」に行ってきた。様々なイタリア地ビールを紹介しており、ビール好きたちが大集結していた。
さて、そのイベントの様子をお伝えしたいと思うのだがその前に、イタリアの地ビールについて少し話しておこう。イタリア語では地ビールのことを「ビッラ・アルティジャナーレ」という。英語のクラフトビールと同義語だが、"職人のビール"とも訳すことができる。文字通り、ビール職人(ビッライオ)が手塩に掛けて造っているのだ。
1996年、最初に6つのブルワリーが誕生し、それ以降は組合"ユニオン・ビッライ"や"アッソチャツィオーネ デグスタトーリ ビッラ"(ビール鑑定士協会とでも訳すべきか)などの団体が次々と結成され、現在はイタリア全体で200近くのブルワリーがあるといわれている。日本でも小規模ブルワリーが解禁になったのが1994年、翌年に最初のブルワリーが誕生し、現在では200くらいのブルワリーを有するあたり、イタリアとほぼ同じ歴史を歩んでいるといっていいだろう。ただイタリアと日本が異なるのは、日本は日本酒を造っている酒蔵から派生しているブルワリーが多いのに対し、イタリアの場合、多くは町の小さなパブやバールといった飲み屋から派生している。すなわち、ほぼ"地産地消"でなかなか市場にでまわらないのである。2007年が第1回目(2006年に前哨戦が行われてはいるが)となるSalone della Birraは、地産地消にしておくにはもったいないビールたちを知る絶好の機会なのである。
夜中まで開催という太っ腹イベント
Salone della Birraは3日間開催され、私が訪れたときには既にビール好きたちでごった返していた。すごい人気ぶり……。場所は「フィエラ・ミラノ」。世界的なデザインの見本市である「ミラノ・サローネ」も開かされているミラノ最大の見本市会場である。開催時間は11時~25時。夜中まで開催されているなんて、お酒好きにはたまらないイベントである(ただし最終日は23時までだった)。「フィエラ」とは基本的には見本市会場のこと。イタリアの各都市毎に1つはあり、国が運営していた。ところが数年前から完全民営化され、開催内容も開催時間も大きく緩和されることとなったため、このように夜中までドンチャン騒ぎOKになったと思われる。さーて、気合十分、いよいよ飲むぞ! ということで、続きは次回!!