個別指導塾の活用する際の注意点は?

前回に引き続き今回も、個別指導塾の具体的な活用方法についてお伝えします。

マンツーマン指導は個人の課題に向き合える

私は以前、集団塾の講師をしていました。しかし現在、個別指導塾の講師になったのは「マンツーマンの指導こそ小学生は伸びる」と思ったからです。小学生の場合、集団授業の中でたとえ大切な部分を聞き逃したとしても、自らそれを意識して、自主学習をして補うということは難しいかもしれません。また集団授業は、個々の理解の進度とは、別の尺度で進行することが多いでしょう。

集団授業であっても一人ひとりの課題は把握できるのですが、私の場合、その課題に対して向き合えないというジレンマを抱えていました。良心的な集団塾の講師であれば、おそらくこの悩みを常に持っているのではないでしょうか。

その点を踏まえると、マンツーマン指導が可能な「家庭教師」と「個別指導塾」という形態は、塾講師からしても成績を上げるために理想的な指導形態であると思います。

家庭教師と異なる点は?

家庭教師をつけるか、個別指導塾に通わせるかについては、子どもの性格や生活状況に合わせて選びましょう。例えば家庭教師の場合、指導場所は家の中なので塾に通う必要がなく、体力的に心配な子どもにとっては向いています。一方で個別指導塾の場合、オフィシャルな空間である教室に通うことで、子どもにある程度の緊張感を持たせることができるというメリットがあります。

また個別指導塾は「塾」の形態をとっていますから、例えば学習スケジュールを立ててくれるなど、指導に関するシステムが整っている点も魅力です。しかし、それらのシステムが一人ひとりに合わせた指導法としてきちんと運用されているかは確かめる必要があります。例えば、学習スケジュールや学習資料が配布されたときは、その内容を入念にチェックしましょう。テンプレートを使った画一的な内容が記載されていたり、実際には役立たない内容だったりすることがあるかもしれません。

個別指導塾に通わせる最大の目的は「志望校合格」です。目先の成績に一喜一憂せず、志望校に合格するための費用対効果があるのか。担当講師の話を聞きながら冷静に見極めましょう。一方で、たとえ成績が横ばいでも、担当講師やスタッフが、共働き家庭のゆとりのない受験生活を支えてくれる頼れる存在になっているというのであれば、人によっては利用価値があります。塾に通わせることに意味を見いだせるか否かが個別指導塾を選択し続けるかどうかの判断基準です。

子どもの授業ノートをチェックしよう

最後に、個別指導塾で熱心に指導が行われているか見極めるためのポイントを伝授します。最も大切なチェックポイントは、子どもの授業ノートに講師の書き込みがされているかどうかです。指導の様子がわかるメモ書きのような別紙でもかまいません。それらが全くないとなると、個別指導のよさが生かされていない授業である可能性があると思います。

個別指導のよさはなんといっても、講師が子どもの隣で回答を解く様子を観察し、どこでつまずいているのか、子どもの思考の道筋をなぞることができる点にあります。その過程において、講師の手は子どもに「見せる」ために常に動いているのです。ですから、算数ならば図や公式、国語ならば赤ペン添削、社会・理科ならば地図や記号、図やグラフが書き込んであるはずです。子どもに理解させようと、講師がどれだけ手を動かしたかが、熱心な指導の痕跡と言えるでしょう。

さらに可能な場合は、塾の見学をすることもお薦めします。参加できない場合でも、授業ノートの確認や、面談もしくは電話で担当講師と話すことが大切です。「子どもから授業の様子を聞く」「授業ノートで授業の痕跡を見る」「担当講師に問題点や具体的要求を伝える」、この3つを意識してみてくださいね。

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著者プロフィール

中学受験ドクター講師 春野陽子
日能研で約10年間にわたって中学受験の国語指導を担当したのち、中学受験ドクターの講師として活躍。元中学受験ママでもあり、2人の息子をそれぞれ巣鴨中学校と海城中学校に合格させた実績を持つ。講師としての立場、先輩ママとしての立場の双方から、親たちに向けた受験のアドバイスを行っている。
中学受験ドクター