前々回の記事で、ヒラリー・クリントン米元国務長官(以下、ヒラリー)の講演料についての話をしたが、あの話の参照元であるNYTimesの記事のなかからもう1エピソード紹介したい。
現在は講演や執筆活動などに忙しいヒラリーの事務所で、「国務長官時代からの部下であるフマ・アベディン(Huma Abedin)という女性がスタッフとして働いている」という一文が終わりのほうに出てくるのだが、このアベディンさんが先週あたりから米メディアでにわかに大きな注目を浴びる存在になっている。
アベディンさんには、3年前に結婚したアンソニー・ウィーナー(Anthony Weiner)という元連邦下院議員の夫がいるのだが、このウィーナー元議員は2年ほど前に議員を辞職している。そのきっかけは、TwitterやFacebook、電子メールなどで性的な情報(人前で見せてはいけない部分を含む自分の裸体画像など)を含んだメッセージを女性に送りつけていたという事実が発覚したことだった。
これは「ウィーナーのセクスティング・スキャンダル」とも呼ばれている(註:米では携帯電話でショートメッセージをやりとりすることをテクスティング(texting)と呼ぶことも多いが、そのtexting とsexを掛け合わせたもの)。
ウィーナーはブルックリンの出身。今年1月の大統領就任式で司会進行役を務めたチャールズ・シューマー上院議員(Chuck Schumer)のもとでの見習いを経て、ニューヨーク州から選出され議員となった。
このため、地元に拠点をおく大手メディアでネタにされることも少なくない。たとえばジミー・ファロンのトークでも、頻繁に登場する名前の一つになっている。
Anthony Weiner and Huma Abedin’s Post-Scandal Playbook - NYTimes
(4月にNYTimes Magazineに掲載されていた、議員辞職後のミソギに励むウィーナー&アベディン夫婦を採り上げた記事。夫妻にはまだ幼い子供もいるらしい)
そんなウィーナー、議員辞職から1年以上かけていわゆる“ミソギ“に精を出し、今年の春あたりからは11月に投票があるニューヨーク市長選の出馬に向けた準備を進めていた。だがここにきて、実はミソギの期間中に性懲りもなくセクスティングを続けていたのが発覚してしまった。しかも「カルロス・デンジャー」(Carlos Danger)というバカげた偽名を使ってメッセージを送っていたことがバレて、さらなる大騒動に発展しているのだ。
以下の動画はジミー・ファロンのLate Nightから:
さて。妻のアベディンさんはスキャンダル発覚後にさっそく記者会見を行い、「それでも(2011年の時と同様に)夫のことを支持する」と述べたが、この「内助の功」に対しても、「ろくでもない亭主にいつまで肩入れするつもり?」といった感じの厳しい声が上がっているらしい。
ANTHONY WEINER, HIS SEX MESSAGES, AND HIS WIFE - The New Yorker
このNew Yorkerのコラムには、そのむかし「モニカ・ルインスキー事件」で「女性にだらしのない亭主」という烙印を押されたビル・クリントン元大統領にさんざん手を焼かされたヒラリーからの助言を受けて、アベディンさんが「ダメ亭主擁護」を決めたのではないか、といったことも書かれている。
さらに、ここに来て、そのヒラリーにまで「カルロス・デンジャー」スキャンダルのとばっちりが及び始めているようだ。ビル&ヒラリー夫婦としてはせっかくみんなに忘れ去られつつあったルインスキーの話を蒸し返されるだけでも不愉快だが、それに加えて2016年の大統領選出馬を視野に入れているヒラリーとしては、こんなことで足下をすくわれたくはないと、ウィーナーに対して「出馬辞退」の圧力をそれとなくかけている、といった話も伝えられている。
Sources: Clintons’ Patience Growing Thin with Anthony Weiner - ABC News
Hillary Clinton trying to shake Anthony Weiner - Washington Post
Bill and Hillary Clinton are 'livid' at comparisons to Weiner’s sexcapades and Huma’s forgiveness - NYPost
なお、The Vergeの記事によると、ネットの普及によってお手軽にアダルトコンテンツが閲覧できたり、チャットやセクスティングが可能になった影響で、そうしたことへの中毒になる人の数も増えているという。
Danger, Carlos: internet-fueled sex addiction is growing - The Verge
最近では日本でも「ネット選挙」が解禁になり、先の参院選ではTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアをつかった選挙運動にも注目が集まっていた。公職を志す方々としては新しいコミュニケーション・ツールの使い方を知っておくこともますます不可欠になっていくのかもしれない。いろいろな目的に手軽に使えるだけに、ついつい横道に脱線……などといったことにならぬよう、くれぐれもご注意いただければと思う(また「まさか、ウィーナー事件のようなことが日本で起こる、そんな人物が立候補するなんて……)」などと思われた方はこちらなどをご覧いただきたい。
追記1:キャロライン・ケネディが駐日大使に
4月はじめの記事で触れていたキャロライン・ケネディさんの駐日大使就任が確定した。
華麗なる「王朝」の嫡流=キャロライン・ケネディ次期駐日米大使 - 時事ドットコム
大使任命というのはわりとのんびりしたペースで決まるものだな、と改めて思った次第。
追記2:ジェイ・Zが改名?
ジェイ・Zの名前が「Jay-Z」から「Jay Z」に変わったらしい。どういう理由があってそうしたかなど気になっているが、残念ながらまだ見ていない。
ジェイ・Z、Jay-ZからハイフンをとってJay Zに - MSN