米国時間6日に米大統領選挙の投票が行われ、オバマ大統領の再選が決まった。現職の大統領が大苦戦し、投票・開票当日までどちらが勝つかわからないという大混戦になった今回の選挙。それだけオバマ大統領の、とくに不況対策に対する風当たり、あるいは経済問題に対する手腕への不信感が強かったというところだろう。
そんな苦しい立ち場に立たされていたオバマ陣営が、「藁にもすがる思い」で頼んだのか、それとも選挙の成り行きが心配で居ても立ってもいられず当人たちのほうから助太刀を買って出たのかは定かでないが、投票日前日の5日には、ブルース・スプリングスティーンとジェイ・Zがオバマ大統領の「最後のお願い」となる遊説に同行し、それぞれパフォーマンスを披露した、という話がいくつかニュースサイトで報じられていた。
スプリングスティーン(「ボス」)とジェイ・Zはいずれも、前回選挙の時からのオバマ・サポーターとして知られるが、このうちボスのほうは大統領専用機エア・フォース・ワンに同乗し、ウィスコンシン州マディソン、アイオワ州デモイン、オハイオ州コロンバスと、1日に3カ所で歌を披露するという大車輪の活躍。
いっぽう、オハイオ州での集会に駆けつけたジェイ・Zのほうは、ヒット曲『99 Problems』の歌詞の一部を「ロムニー」に替えて歌うというサービスぶりを見せたという。
Jay-Z Inserts ‘Mitt’ for ‘B****’ in Explicit Song at Ohio Rally - ABCNews
Jay-Z Raps: "I Got 99 problems But Mitt Ain't One" - MTV(UK)
(大統領選の応援の場でも、ブルックリン・ネッツの「B」の頭文字が入ったパーカーを着用して、それとなくグッズを売り込むところなど、「ブランド・レバレッジの達人」「転んでもただでは起きない商売人」としてのジェイ・Zの面目躍如、といったところか)
なお、3日にオハイオ州のクリーブランドやシンシナチで行われた集会には、スティーヴィー・ワンダーも応援に駆けつけて会場を沸かせたというから、オバマ陣営では文字通り「支援者総動員」といった感じだったのかもしれない。
Obama Lines Up Stevie Wonder, Lady Gaga, Billie Jean King, Jay-Z & More In Campaign's Final Days - Huffington Post
ちなみに、スプリングスティーンが選挙戦最終日に回った3つの州は、いずれも今回の大統領選挙で勝敗の鍵を握るとされていた8~9つの州ーーいわゆる「Swing State」(どちらに転ぶかわからない州、日本のニュースでは「激戦州」などと訳されていた)に含まれるところ。なかでもウィスコンシン州は共和党副大統領候補のポール・ライアン上院議員の地元であり、またオハイオ州は「ここで勝たずに大統領となったものはいない」とされるところ。
昔から白人、とくにブルーカラーの(いまでは比較的年輩になっている)ファンが多いとみられるスプリングスティーンが中西部の3カ所をまわったのに対し、ジェイ・Zのほうは有権者のデモグラフィー(年齢や人種別、年収別の比率など)が全米の平均値に近いとされるオハイオだけに顔をみせる、といったところからは、しっかりと「計算ずくの仕業」という匂いもしてくる。
開票の模様を伝える報道を観ていて興味深かったのは「ウィスコンシンで勝利」の報が伝えられたあたりで(それまで代議員獲得数では出遅れ気味だった)オバマ側に流れが傾き、そして「オバマがオハイオを押さえた」との速報が出たのを受けて、メディア各社が一斉に「再選確定」のニュースを流していた点。偶然の一致にしても、ボスとジェイ・Zの助っ人が多少は役に立ったのかもしれない、と思えた次第である。