先週(10月はじめ)にWall Street Journal(WSJ)に、ちょっと変わった研究調査についての記事が掲載されていた。「男性の印象(見た目)と髪型の関係」について調べたこの調査で、坊主頭(丸刈りまたはスキンヘッド)のほうががオールバックなどの他の髪型よりも「男性的、支配的で、リーダーの資質も多くあるように見える」という結果が出たそうだ。
Study Shows Baldness Can Be a Business Advantage - WSJ
マイケル・ジョーダンをはじめとするNBA選手や、ジェイ・Z、シーロー・グリーンといったエンタテインメント業界の黒人スターたちを身近に感じている人間にとっては、ごく短く刈り込んだ頭、あるいはそり上げた頭というのはごく当たり前のもの——少なくともことさら意識するようなものではない。けれども、こういう話題がちょっとしたニュースになるということ自体、それだけまだ坊主頭が少数派ということの証かもしれない……この記事を読んでいて、そんなことを感じていた。
この調査を実施したのは、米ペンシルバニア大学のウォートン・ビジネススクール(ハーバードやスタンフォードとならぶトップクラスのMBA大学院)で講師を務めるアルバート・マンネスという人物だそうだが、そもそも調査をしてみようと思ったきっかけが「自分が頭を丸めたところ、以前より心なしか人が接してくる態度が丁寧になった」ように感じたから、というから面白い。どんなところにも何かのヒントは潜んでいるものである。
このマンネス氏、同一人物(男性)の写真(片方は実物、もう片方はデジタル加工して頭を丸坊主にしたもの)を344人の被験者にみせたのだという。また同氏の別の実験では、薄くなった頭髪をカバーしようとしているタイプの男性——いわゆる「スダレ」というか、俳優でいうと温水洋一のようなタイプだと思う——がもっとも魅力がなく、パワフルにも見られない、ということもわかったという。
WSJ記事ではいくつかの実例——丸坊主にした当人の弁などいろんな話が紹介されているが、たとえば丸坊主だと「背が実際より高く」見えたり、「自信がありそう」で「よりエネルギッシュ」にも見えたりするという。いっぽうで、頭のてっぺんが薄くなっているのは「より老けて見え、それだけ魅力に欠ける」ような印象を与えてしまうらしい。
さらに、WSJは実業界で活躍するの丸坊主の例として、マーク・アンドリーセン(もともとネットスケープ・ブラウザを開発した「神童」、現在はシリコンバレーでもっとも勢いのあるベンチャーキャピタル会社の共同創業者/経営者)、アマゾン創業者・CEOのジェフ・ベゾス、そしてドリームワークスSKGのCEOを務めるジェフリー・カッツェンバーグなどの名前を挙げている……そういえば、ベゾスもアンドリーセンも90年代後半にはそれぞれTime誌の「Peroson of The Year」に選ばれていたっけ(もっとも、アンドリーセンはまだ髪の毛もふさふさだったけれど)
ちなみに、「薄毛が気になり出したクライアントには、短髪にすることを進めている」というイメージコンサルタントのコメントもこのWSJ記事にはみられる。たしかに、故スティーブ・ジョブズもはげ上がる額を気にしていた40歳代前半に比べて、禅僧のような坊主頭になった50歳代の時のほうがはるかにオーラが強かったように思える(……単なる気のせいだろうか)
ところで。
丸坊主の大立者の一人として、WSJでも引き合いに出されたジェフリー・カッツェンバーグ。ディズニー・アニメ中興の祖であり『リトル・マーメイド』『美女と野獣』『ライオンキング』あたりを製作——、ドリームワークスSKG立ち上げ以後も『シュレック』などのヒットシリーズを生み出すのに関わってきた……といったくらいの認識はあったが、実は若い頃から「政治好き」で、いまではオバマ大統領の有力支援者の一人に数えられる存在になっているらしい。
Movie Mogul's Starring Role in Raising Funds for Obama - WSJ
こちらの記事によれば、カッツェンバーグは2006年頃にはすでにオバマ上院議員(当時)に「次の大統領(候補)戦に出馬したほうがいい」と働きかけていたそうで、筋金入りのオバマ支持者であることが伺われる。また、今年春にジョージ・クルーニー邸で開かれたオバマ大統領の選挙資金集めのパーティを仕切ったのもこのカッツェンバーグだったという。支持者や資金提供者に愛想を振りまくことがきらいで、ふつうはパーティに顔を見せても、言いたいことだけ言ってさっさと帰ってしまうようなオバマに、カッツェンバーグは「出席者のテーブルをきちんと回って、世間話でもしてくれなくては困る」と諭したらしい。その結果、大統領の出席時間は3時間という異例の長さに及んだという。
オバマ大統領の選挙資金集めのパーティについては、ジェイ・Zとビヨンセが9月にマンハッタンの40/40 Clubで主催した、という話に前回の記事で少し触れていた。この時には、「お一人さま4万ドル、限定100人」で合計400万ドルを調達したというが、それに対してこのジョージ・クルーニー邸でのパーティの上がりは1500万ドルにも上ったとか。
さらにこのカッツェンバーグ、オバマ大統領との関係を梃子に、来月中国の次期主席になることが有力視されている習近平(現在は副主席)にも接近。今年2月に習が訪米した際には、一緒にロサンゼルス・レイカーズの試合を観戦してもいた。米中両国のトップに直接アクセスできる人間というのは世界を見渡してもそう多くはないはずだが、カッツェンバーグはそんな人間の一人になっているようだ。
最後に。
我らがジェイ・Z&ビヨンセ夫妻も、オバマ支持では人後に落ちない有力者となっており、2009年の大統領就任式の前夜にはふたりでお祝いのライブを行っていたし、その後もビヨンセがミシェル夫人の主導する「肥満防止キャンペーン」に協力してミュージックビデオに出演するなど、かなり近い関係が続いているようだ(ジェイ・Zのほうは前回選挙の時に直接オバマと話をして、「こいつに勝たせなくてはと思った」云々と自叙伝『Decode』に書いてもいる)。
そういう関係もあってか、今年の選挙でもビヨンセがミシェル夫人を称える形でオバマ支持を表明。
さらにオバマ大統領は、40/40 Clubでのパーティに顔を出した際、「ジェイ・Zと私の共通点は、可愛い娘がいることと、そして自分よりも人気のある(よく知られた)奥さんがいること」云々と冗談を飛ばしていたことなども伝えられている。いっぽう、自分も大のバスケットボール好き(贔屓のNBAチームは、地元のシカゴ・ブルズ)であるオバマが、ブルックリン・ネッツ(ジェイ・Zが少数株主)についてどう言ったかは不明。
Obama Says 'Beyonce Could Not Be A Better Role Model For My Girls' As Event With Jay-Z Nets $4 Million - Huffington Post
PHOTO: A couple supporters in a New York state of mind last night. - @BarackObama (Twitter)
ジェイ・Zのおそらく「今年いちばんの大仕事」であるバークレイズ・センター・ライブ——こけら落としの8夜連続ライブが、米国時間6日に無事終わったが、既報の通り、最終日の晩にはビヨンセがサプライズ・ゲストで登場し、「ディーバ」「クレイジー・イン・ラブ」を披露。YouTubeでのストリーミング中継をご覧になった方ならご承知のとおり、観客はオバマ大統領の冗談がシャレにならないほどの盛り上がりをみせていた。
[Beyonce performing at Barclays Center Concert]
ジェイ・Zが途中「お色直し」——ブルックリン・ネッツのユニフォームを、黒から白に着替えて出てきたのにもちょっと驚いたが、このビヨンセの登場、そしてその圧倒的な存在感(「貫禄」!)には改めて大いに驚かされた。
さらに、この晩の大トリにはふたりで「ヤング・フォーエバー」を披露——おそらく2010年のコーチェラ( Coachella Valley Music and Arts Festival)以来の競演かもしれない。
[Beyoncé Ft. Jay-Z - Forever Young HD]
コーチェラといえば、このイベントの運営も手がけ、またロサンゼルス・レイカーズの一部や本拠地のステイプルズ・センターなど、多数のスポーツチームならびに施設も保有するアンシュッツ・エンターテイメント・グループ(Anschutz Entertainment Group:AEG)が売りに出される、という話も9月半ばに浮上していた。ちなみに2007年に、デビッド・ベッカムをレアル・マドリードから移籍させたロサンゼルス・ギャラクシー(北米プロサッカーリーグ、MLSのチーム)もこのAEG傘下である。
Phil Anschutz to Sell L.A.-Based Live-Event Promoter AEG - Bloomberg
追記1
ジェイ・Zはバークレーズセンター・ライブ最終日の夕方、ニューヨークの地下鉄に乗って「出勤」して、皆を驚かせたとか。
Jay-Z Rides NYC Subway to Final Show at Barclays Center (Video) - The Hollywood Reporter
追記2
カッツェンバーグは米国時間7日に再びオバマ大統領のためのパーティを開催。オバマ大統領はロサンゼルスに着くとビバリーヒルズにあるカッツェンバーグ邸に直行し、そこでいまも絶大な人気を誇るビル・クリントン元大統領と待ち合わせ。また、今回はカッツェンバーグがポケットマネーから200万ドルを寄付したとか。
さらにこの晩、ノキアシアターで開かれたコンサートには、ボン・ジョヴィ、アース・ウィンド・アンド・ファイアー、スティーヴィー・ワンダーといったベテラン勢からケイティ・ペリー、ジェニファー・ハドソン(シカゴ出身)といった若手までが登場。ジョージ・クルーニーも一部でMC役を買って出たという。
Obama, Clinton Powwow with Donors at Jeffrey Katzenberg's House - The Hollywood Reporter