整体師として活躍しながらランニングに関する著書を出版している「りょう」こと鮎川良さんが楽しいランニング方法を紹介する本コラム。今回は、膝の故障をしないためにも、重心の真下に着地する大切さを紹介します。
太い骨と細い骨がある
人間の骨格や筋肉のことが分かると、少しでも楽に走れるようになります。今日は少しだけ骨のお話をしましょう。
マラソンやジョギングをすると、必ず片足で着地をします。「着地するとき、太い骨に乗る方が良いか、細い骨に乗る方が良いか? 」なんて聞かれたら、「太い方」と回答される方が大半かと思います。
右上のイラストをご覧ください。膝元から足首にかけて、骨が2本連なっているのがわかるかと思います。太い方が脛骨(けいこつ)、細い方が腓骨(ひこつ)という名称です。ご自身の足を触って確認してほしいのですが、太い方の脛骨(けいこつ)の前にはほとんど筋肉が付いていません。
一方、細い方の腓骨(ひこつ)には筋肉が付いていますよね。この筋肉を、前脛骨筋(ぜんけいこつきん)と言います。人によっては、ふくらはぎの筋肉が大きく横まで張り出している場合もありますので、よく確認してください。
疲れ方に大きな差が出る
ランニングをされている方で、前脛骨筋(ぜんけいこつきん)が痛くなるという人も多いことでしょう。なぜなら、走るときにはその筋肉を使うからです。ただ、筋肉をたくさん使う場合と、少ししか使わない場合とでは、疲れ方に差があるのは想像できますよね。
私が提唱する「エンジョイラン走法」は、できるだけ筋肉を使わずに走りましょうという、いわばエコラン走法です。そのためにもマスターしてほしいのが、太い骨に体重を乗せる練習をしてほしいということです。着地の衝撃を太い骨の腓骨(ひこつ)で受けると、着地時の安定が増すだけではなく、前脛骨筋(ぜんけいこつきん)にかかる負担を少なくすることができます。
筋肉で走らず骨で走れ!
言葉で言うと簡単そうに思えるのですが、実践するとなるとこれがなかなか難しいです。なぜなら、太い骨の前には筋肉がないんですから。大げさな言い方をすると、「筋肉で走らず骨で走れ! 」ということになります。
そのために絶対必要となってくるのが、足をまっすぐ出すということです。つま先、ひざ、太もも、すべてがまっすぐ出れば、太い骨に体重を乗せることができます。前脛骨筋(ぜんけいこつきん)の場所をもう一度ご自身で触ってみてください。足のまっすぐ先ではなく、少し外側に付いていますよね? 前脛骨筋(ぜんけいこつきん)を使って走ると、どうしても体重が外側にかかる傾向になります。そうなると細い骨に体重が乗るので、身体が早く悲鳴を上げる可能性が高くなってしまいます。
マラソン、ジョギングで一番傷めやすいのが「膝」です。すでに膝を傷めているという人は、太い骨に乗るように意識づけをしてください。痛みを我慢して走るのは間違っています。少しでも早く改善しましょう。次回は、つま先から膝をまっすぐ出すという大切さを、もっと詳しく紹介します。
著者プロフィール
鮎川 良
奈良県の学園前にて「RYO整体院」を営む整体師ランナー。整体師だからこそ分かる身体のメカニズムを基に、ストレッチの重要性を説き、クリニックも開催する。ストイックにタイムを追求するよりも、健康で楽しいマラソンライフを提案。筋肉痛になりにくい身体作りや疲労回復のケア方法、自身が提唱する疲れにくいランニングフォーム「エンジョイラン走法」で、フルマラソン走破を目指す人のサポートをしている。著書に『がんばらないで楽に長く走る』(学研パブリッシング)がある。また、累計200万アクセス超の人気ブログ「整体師に学ぶ~マラソンによる筋肉痛改善方法と、フル完走ノウハウ」も執筆している。