ランニングは健康にいいとわかってはいながら、「疲れる」などの理由で走ることに二の足を踏んでしまう人のために、ランニングに関する著書を出版している整体師ランナー・鮎川良さんが、「楽」に「楽しく」走れる方法を紹介する本コラム。今回は筋肉消費を抑えるために、「蹴らないで小股で進む」という方法を伝授してくれます。

短距離走の走り方で長距離が走れるか?

突然ですが、あなたは50m走を全力疾走で何本連続で走れますか? 体力や年齢にもよるでしょうが、そんなに続きませんよね。私だったら4本くらいでおそらくダウンします。時間にすると1分もかかりません。しかし長距離なら、1時間走っていても平気です。それは筋肉と呼吸の使い方がまったく違うからです(呼吸に関しては、また先々でお話しします)。

「短距離走のような走り方で、長距離を走る人なんていないよ! 」と思われた方はいらっしゃいませんか? では、数字で表してみましょう。男子フルマラソンの世界トップ選手のタイムが約2時間3分です。このスピードを50m走に換算すると、8・5秒です。日本でトップ選手の仲間入りができるとされている2時間30分では、10・6秒です。50m走だと思うと大したタイムではないように思えますが、フルマラソンですからね。

蹴って走るとどうしても歩幅が広くなります

後ろになった足はずいぶん上がります

私たちは、力を抜いてがんばらないくらいがちょうど良い

ただ当然、市民ランナーレベルではもっともっと遅いのです。一人前の市民ランナーの目安とされるのが、フルマラソンを4時間で完走することです。これは50m走に換算すると、17秒。5時間だと21・3秒となります。

想像してみてください。50mを20秒くらいで走ろうとしたら、「少し力を抜いて頑張らない」くらいで行かないと、速過ぎてしまいますよね? 楽に長く走れなくてお困りの方は、ズバリ「がんばり過ぎ」なんです。私が提案したいのはここなのです。第1回に書きましたが、トップ選手は「マラソン」をしていますが、私たちは「ランニング」「ジョギング」という「別なスポーツ」をしているのだと解釈することが大切なのです。

小股で進むとさらに楽になる

楽に長く走ることができない人は、短距離走のフォームのままで走っている可能性が高いです。長距離走のフォームを知ることができれば、ずいぶん変わります。そのために改善してほしいのは「蹴らないこと」なのです。

蹴って走ると速く走れますが、脚の筋肉をたくさん必要とします。だから早く疲れます。少しずつ筋肉を使うようにするために、まずは蹴らないことを心掛けてください。そのためには「小股」にすることがポイントです。小股にすれば、蹴る必要が無くなります。すると、「蹴る」という行為を忘れてもよいわけですから、「着地」に意識を集中させることができるようになります。「蹴るの連続」ではなく「着地の連続」という考え方は、第3回でも書きましたので参考にしてくださいね。

蹴らずに小股になると楽になる

後ろになった足もあまり上がりません

腕は振らない方がさらに楽になる

もうひとつ大事なのは「腕振り」です。短距離は腕をよく振るように言われますが、がんばらないためには腕を振らないことです。腕を振ると速くなり過ぎますからね。「さぁ、大変なことになってきた」。そう思っていませんか? 「蹴るな」「腕振るな」「小股で」「がんばるな」「走るな」となれば、もうあなたが知っているランニングフォームとはまったく違ってきましたよね。そう、これが楽に長く走るための「エンジョイラン走法」なのです。次回もご期待ください。

著者プロフィール

鮎川 良
奈良県の学園前にて「RYO整体院」を営む整体師ランナー。整体師だからこそ分かる身体のメカニズムを基に、ストレッチの重要性を説き、クリニックも開催する。ストイックにタイムを追求するよりも、健康で楽しいマラソンライフを提案。筋肉痛になりにくい身体作りや疲労回復のケア方法、自身が提唱する疲れにくいランニングフォーム「エンジョイラン走法」で、フルマラソン走破を目指す人のサポートをしている。著書に『がんばらないで楽に長く走る』(学研パブリッシング)がある。また、累計190万アクセス超の人気ブログ「整体師に学ぶ~マラソンによる筋肉痛改善方法と、フル完走ノウハウ」も執筆している。