駅そばのスタイルも多様化する中、昔ながらのホームにある立ち食いそばを見かけると「ああ、懐かしいな」と思う人も多いだろう。駅の改修などにより、次第にその姿を消しつつあるが、JR宇都宮駅の東北本線(宇都宮線)7・8番線ホームにある「野州そば」は、昔ながらの雰囲気を色濃く残す立ち食いそば店だ。ちなみに「野州」は下野国の別称で、栃木県の旧国名を意味している。
「野州そば」の店舗は階段の裏側にあり、これぞ駅そば店といった佇まいである。薄暗いホームの中、出汁(だし)のにおいにつられ、煌々と光る看板についつい引き寄せられる。
営業時間は11~20時で、メニューは券売機で購入する方式。温かいそば・うどんのみ販売され、今回は「かき揚げそば」(400円)を注文してみた。濃いめの出汁に、やわらかいそば。出汁の染みたかき揚げに、トッピングのねご。これぞ「関東の駅そばスタンダード」といえる定番メニューだろう。
行き来する列車の音や風を背中に感じながら、そそくさとそばをかき込む。これぞ正しい駅そばスタイルであろうか。列車を身近に感じながら食べるそばは、また格別だ。
店の正式な名称は「野州そば 宇都宮4号店」という。名前の通り、別のホームにも店舗はあったのだが、いまはここ4号店を残すのみとなってしまった。時代とともに姿を変えつつある駅そば店だが、ここでは昔と変わらぬ立ち食いそばそのものが味わえる。